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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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35話 お着替えするわよー!

 銀髪のホムンクルスメイドの体に憑依した福籠(ふくごもり)(なぎ)は、艶々のエナメル素材のボンテージファッションで鏡の前に立っていた。


 濡れるように光沢を帯びたコルセットが大きな胸をさらに押し上げてプリンのように揺らし、ガーターベルトとTバックショーツはむっちむちのお尻に食い込み気味で、網タイツに包まれた脚はお歳暮のハムみたいに輝いている。


「いいわね。すっごく似合うわよ!」


「……いや、これどう見てもSMの女王様ファッション! お願いしたの潜入用の衣装なのにっ!?」


 どうしてこんな事になったのか、思わず経緯を振り返る梛。


 推しのレンに会いたい一心で魔導学園に乗り込むことにしたが、貴族も通う学園はセキュリティも厳しい。いくらホムンクルスメイドの外見が女子高生時代の梛と同じぐらいでも、何の許可もない状態で潜入したらただの不審者で捕まってしまう。


 そこでキーマに教えてもらった伝手を頼って、ダンジョンを出た後、城下町の表通りにある貴族向けの大きな商館を訪れた。主に貿易品を取り扱う商会らしい。


「貴族はここでメイドちゅくってくれってちゅー文するにゃ。店しゅとは友だちにゃ」


 言葉通り夜分にも関わらず、店主に面会を申し込むと、最初は胡散臭げに対応した従業員が大慌てで戻ってきて、競歩並みのスピードで梛を豪華な応接室に案内した。


「騎士団の摘発があったって聞いたけど、まだ生きてたの? ……って、あなたもうとっくに骨だったわね!」


 ほどなくして応接室に入ってきたのは、三つ揃えのスーツをお洒落に着崩した、オネエ言葉のセクシーマッチョなイケメン店主だった。


「……?」


 どこかで見覚えがあるが、どうにも思い出せない。


「あら、わたしの筋肉がお好き? 今晩、わたしをご主人様にしてみる?」


 ついまじまじと見つめていたせいか、セクシーマッチョな指先で顎をクイッと持ち上げられる。


「……あっ、奴隷のオークション会場でシロたんをお手入れしてくれた従業員のひと!」


 梛がようやく気が付くと、セクシーマッチョな店主も何かに思い至ったのかにやりと笑みを浮かべた。


「あなたボスの言ってたシロたんの御使い様ね」


「ボスって……」


「勿論あんな髭男じゃなくて、わたしの麗しの眼鏡のお嬢様よ。あそこには内部調査で潜入していたの。それで、今日はどうしたの?」


 先ほどの妖しい雰囲気から一転して、にこやかに対応される。仕事とプライベートの切り替え方がはっきりしているようだ。


 梛はキューブの次元収納を開くと、ダンジョンから運んできたミミックを取り出した。


 蓋を開けると、体育座りをしたリッチが現れる。


「どういう登場の仕方してんのよ!?」


 少年少女の冒険者を撃退した後、リッチに戻ってミミックの中から出ようとしたら、シンデレラフィット過ぎて自力では出られなかったのだ。


 ミミックに突っ込んだ当の銀髪メイドも取り出せなくなっていた。獲物を捕らえる構造が関係しているのか、ぴったりし過ぎて出てこない。そんなわけで仕方なくミミックごと運ぶ事にしたのだ。


 セクシーマッチョ店主にツッコまれながらも、リッチの額の宝石経由で、キーマが白キマイラに憑依して梛と契約した経緯を説明する。


「つまりあなたのご主人様は魔導学園に潜入して、いいオトコ見つけたいってわけね」


 ストレート過ぎて申し訳なくなってくるが、梛にとってはその通りの内容なので頷くしかなかった。


「無茶なお願いにゃのは分かってましゅがましゅたーの望みを叶えたいにゃ」


「何言ってんの。最高に可愛いモフモフになる為の材料を揃えてくれって、伝説級の秘宝だのをあれやこれや要求してきた時よりよっぽどマシよ。まあ、潜入だけなら学園には顧客も多いから出来なくはないわよ? ただ……」


 ちらりと梛の格好を見て、セクシーマッチョ店主は言い淀む。


「ただ、何ですか?」


「そのメイド服は上位貴族用に仕立てられたブランド品で目立つから、ちょっとこっちに着替えた方がいいわね」


 セクシーマッチョ店主に促されるまま渡された服を着てみたら、ボンテージファンションだったという、とんでもない格好になって今に至る。


「ふつー着る前に気付くにゃ」


 リアルの地球から、白キマイラのキーマがツッコミを入れる。


「だってコルセットあるから下着だと思ったんだもの……。何なのこのヤバイ衣装」


 ヤバイ衣装と言いながら、セクシーマッチョ店主の前でお尻がほとんど丸出しなのに着ているものに対して抵抗感がなさすぎるのは、憑依しているのがホムンクルスだからだろうか。あまり自分の状態に感情らしい感情がわいてこない。


「今度学園内の貴族に持っていく注文の品よ」


「生徒が着るの!?」


「そこは守秘義務があるから詳しくは言わないけど、倦怠期の夫婦からは結構需要あるわよお?」


「私がこれ着させられたの何で?」


「わたしのシュミよ」


「単に遊ばれてただけっ!?」


「やだわ、そんなに怒らないで。ちょっと着用時のモデルをしてほしかったのよ。あなたのその素敵な体でイメージをお客様にお伝えした方が、何倍も興奮してもらえるでしょ?」


 イケメンなセクシーマッチョ店主の熱を帯びた視線で見つめられると、どうにも居心地が悪い。


「うう、早く潜入用の衣装下さい……」


「せっかちさんね。じゃあこれのサイズ合ってるか着てみてちょうだい」


 無造作に渡されたフリル多めな服を着て、再び鏡の前に立つ梛。


「すっけすけシースルーのメイド服……!!」


 全ての生地がシースルーで、中に着たままのボンテージ衣装がもろに透けて見える。


「いかがわしゅさ大爆はちゅしてるにゃ」


「また遊ばれたっ!!」


「あっはっはーっ! いいわね、いいわね、最高にそそるわーっ!」


「……キーマたん、本当にこの人お友達……?」


「しぇー格はちょっとアレでしゅけどいいやちゅでしゅよ。我がモフモフになる夢をバカにしゅないでてちゅだってくれたにゃ。ましゅたーであしょぶのは気に入ってるしょーこでしゅ」


「やだもう、相変わらず人のことよく見てるわね。さ、充分遊んだし、真面目に準備しましょうか」


 セクシーマッチョ店主は言葉通りすぐさま衣装を用意すると、馬車を手配して梛とともに出立した。


「四頭立て馬車ー! キーマたん、私、馬車乗るの初めてなの!」


 ケンタウロスのシャイヤールに転生した経験があるからか、最近馬を見るとやたらとテンションが上がってしまう。


「はしゃぐと危ないでしゅよ」


「御者さんすごいわねー。細道で外真っ暗なのに壁にこすったりしてないわ」


「ああ、彼は夜目のきく獣人だからってのもあるけど、魔導学園の馬術部出身なのよ。毎年この時期に行われる競技祭典での馬車馬術は見ごたえあるわよお」


「もうしょんな季節でしゅか……」


 キーマの声がややうんざりしたように響く。


「キーマたん、どうしたの?」


「血気しゃかんな若者の闘いに貴族の派ばちゅ争いも絡んで毎年穏便に終わらないにゃ。国じゅーがおまちゅり騒ぎと魔じゅちゅの流れ弾と騒音の坩堝(るつぼ)でしゅ」


「それが楽しいんじゃない。流れ弾も一応結界で被害が抑えられてるし」


「我お家でしじゅかにお昼寝満きちゅしたいにゃ」


「相変わらずのお家大好きリッチね。あ、今はモフモフに体を乗り換えたんだっけ? ところでずっと気になってたんだけど、にゃーとかでしゅーとか、リッチの時はそんなクセのある話し方してなかったわよね」


「キーマたんのその話し方後付けだったの!?」


 確かに魔王の四天王時代に、リッチの姿でこの話し方をしていたらちょっとシュールだ。


「しょの方が我可愛いにゃ」


「シンプルな説得力」


 話している内に、馬車は都市郊外にある店主の別邸にたどり着いた。


「そんなに可愛いなら今度ちゃんと姿見せて頂戴よ。とりあえず学園に行くのは明後日だから、それまではここで隠れておいて。城下町の窓際でホムンクルスだのリッチだのうろついたら、すぐ気付かれて騒ぎになっちゃうからね」


「ありがとうございます。私の我が儘なのにこんなによくして頂いて」


「あなたの我が儘なんて貴族のガキども……あら失礼、ご子息ご息女に比べれば可愛いものよ。それにわたしの友だちを助けてくれた恩人でもあるんだからね?」


 セクシーマッチョ店主は門燈の微かな明かりの中で、穏やかに梛に微笑んでから去っていった。

同じ時間にいつも見て下さる方、初めて読んで下さった方、ずっと読み続けて下さっている方、皆様に見つけて頂けて幸せです! 本当にありがとうございます!

次回更新は11日30日を予定しております。風邪やインフルエンザが流行っているので、どうかお体大切になさってください。

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