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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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31話 可愛いだけじゃなかったわー!

 憑依したスライムの姿で移動する通風口の内部をピカピカに磨き上げながら、福籠(ふくごもり)(なぎ)は隠し通路まで戻った。


 憑依する時は相手を凝視しないといけないらしいが、リッチの本体に戻る時も自分の姿を凝視しないといけないようだ。


 恐ろしいオーラを放つリッチとにらめっこするのは、転生先とは言えちょっと怖い。完全に白骨化した頭蓋の額には大きな宝石が埋め込まれているので、なるべくその辺を見て恐怖感を和らげる。


「あら、そう言えばモフモフのキマイラちゃんどこ行ったのかしら?」


 意識がリッチの方へ移ると、姿の見えない白いキマイラを探す。


「隠し部屋開いたでしゅ。しゅごいにゃ。お疲れ様でしゅよ」


 隠し通路に開いた扉から、長く伸びたしっぽの先端が手招きするように動いている。


「可愛い! しっぽにぎにぎしてもいい!?」


「骨のかんせちゅに毛が挟まるからやめてくだしゃい」


 白いキマイラは自身を作った主にやたら塩対応である。


「ここ実験室っぽいわね」


 部屋には薬品が入ったガラス瓶を並べた棚や、分厚い専門書の本棚、様々な形をした試験管やビーカー、フラスコ類など梛が知っているような実験器具から、何に使うのかさっぱり分からないような機器類までが整然と揃っている。


「その通りにゃ。ここで色んなけんきゅーやってたでしゅ。結界でげんじゅーに隠してるから当分騎士にもみちゅからないにゃ」


「あら、これ……」


 見覚えのあるものがおしゃれな棚付き実験台の上にあった。


 黒いキューブだ。大きさはサッカーボールほどだが、リアルの会議室で見た色合いそっくりだった。


「これ何に使うの?」


「じんこー生命体用のさいぼーにゃ。けちゅ液とじゅちゅ式でちゅくりたい形にできるでしゅ。魔力いっぱい込めると大きくなるでしゅ。でもおっきいのは魔力いっぱいひちゅよーにゃ」


「じゃあ、会議室でお片付けしたでっかい黒キューブも同じものだったのかしら」


「おっきなの持ってるでしゅか? おっきなモフモフちゅくれるでしゅよ」


 白いキマイラのつぶらな瞳が益々輝いて梛を見上げる。ぱちぱち瞬きする長いまつ毛から、小さな星やハートが溢れるようなエフェクトすら見えるようだった。


「おねだりする時だけ可愛さ限界突破してるわ! ハグしていい!?」


 白キマイラの可愛さに常に冷静さを失っている気がするが、それぐらい目の前のモフモフは可愛かった。


「それは遠慮するにゃ」


「何で私にはそんな岩塩並みにゴリゴリにしょっぱいの!?」


(なれ)はべちゅに悪くないにゃよ。単にその顔で迫られるの抵抗あるだけでしゅ」


「骨以外になりたいっ!」


「だったらこのじんこー生命体ちゅかいましゅか?」


 本棚のそばに、可愛いメイド服を着た少女たちがずらりと十人ほど並んでいる。


 皆、肌や目や髪の色は違うが、同じ顔をしていた。表情はないが、全員白キマイラの動きをずっと目で追っている。


「……この子たちも、あなたが作ったの?」


「モフモフけんきゅーしゅるには予算たくしゃんいるでしゅ。でも魔王軍は軍備極振り編成で薄給にゃ。しゅかも現物しきゅーが基本で、換金しにくいでしゅ。だからこっそり副業してモフモフけんきゅー費稼いでたにゃ。高性能人造メイドは機密保持と護衛任務にしゅぐれてるから貴族や豪商から引っ張りだこでしゅよ。でもこにゃいだ屋敷にどろぼーが入って調整中の一体盗まれたでしゅ。我盗まれないようにしっぽに隠れてたにゃ」


「……けど、なんかすっごい見覚えのある顔してるんだけど……」


「魔竜姫が人化した時の姿にゃ」


「魔竜姫ちゃん、こんな顔してるの!?」


 ややたれ目の潤んだような大きな瞳。ぷっくりとした唇。むっちむちの大きな胸とぴっちぴちの太もも。


「高校生の頃の私とそっくりだわ……!?」


「にゃっ? 汝こんにゃ姿してるのにゃ……?」


「今はもうちょっと年齢上だけど……それにしてもよく似てるわね……本当にこれ魔竜姫ちゃんなの?」


「魔竜姫の情報しゅごいあちゅめた情報保管室が本部の隠し部屋にあったにゃ。映像を記録しゅる魔道具にいっぱいうちゅってたのを見本にしたから間違いにゃいにゃ」


「そ、そうなのね……」


 ずっと骨の姿でしか知らない魔竜姫が、人の姿になれて、しかも自分とそっくりの容姿をしている。


 何か理由があるのだろうか。


「……考えても分からないから、別にそっくりなのに理由とかなくてもいいわ!」


 梛はどうでもいいことにした。


「そこもうちょっと深掘りしないでしゅか?」


「いいのよ! 前世とか運命の何ちゃらとか、もうそういう設定はアニメや漫画や小説で十二分に摂取してるわ。私は自分のやりたい事がしたくて異世界ミラーに来てるのよ。推しのレン君に会う前に、前世の溺愛婚約者とか運命の(つがい)とか断罪ルートシナリオに遭遇するわけにはいかないのっ!」


 初めてレンと会った時に運命を感じていた事はすっかり忘れている梛だった。


「女神の御使いのわりに過激はちゅ言でしゅ」


「だって全然レン君に会えないんだものー! レン君成分が足りないのー! レン君におねえさんって呼んでほしいー! 飛んでいけると思ったのにフワフワしてるだけだしー! どうなってるのあなたの体ー!」


「こーふんしにゃいで。だからしてんのー最弱だって言ったで……」


 そこまで言って、白キマイラははたと口をつぐんだ。ちらりと上目遣いに梛を見る。


「いつから気付いてたでしゅか。我がしてんのー本人だって」


「そりゃ、あれだけ骨よりモフモフがいいとか、思わせ発言色々しといて気づくなっていう方が無理よ。メイドの子たちだって、四天王姿の私がいるのにあなたに対して命令待ちしてるし、さっきもあなたが作ったのって聞いたら素直に答えてるし」


「いちゅのまに誘導尋問しゅてたにゃ!? でもこっちもだまして申し訳にゃいにゃ。我もう骨の自分が嫌になってたにゃ。モフモフけんきゅーの為とは言え近づいたモフモフしゅべてに怖がられるその姿が……! 我モフモフしゅたいだけにゃのに……!」


「確かに無駄に変なオーラ出てて迫力しかないものね……。だからそっちの人造モンスターに憑依したってわけ?」


「きゅー極のモフモフににゃるのも我のにゃが年の夢にゃ! ……夢がかにゃってもにゃが年働いてくれたメイドたちとこのけんきゅー室ともお別れにゃの寂しいでしゅ。けんきゅー成果持ってきたいでしゅ」


「じゃ、連れていけるかちょっと収納してみるわね」


 梛は青いキューブを呼び出すと、展開した次元収納で隠し部屋のものを片っ端から吸い込んだ。


「しゅ……しゅごいにゃ。全部お片付けしたにゃ」


「メイドさんたちも吸い込んじゃったけど大丈夫かしら?」


『次元収納では休眠状態で魔力補給中』


 光文字が次元収納されたホムンクルスたちの状態を教えてくれる。生体を維持するのに問題はなさそうだ。


「これで心おきなく脱出できるわよ」


「かっこいいにゃ! しゅごいにゃ! 嬉しいにゃ!」


 ピンクの肉球で万歳する姿が可愛くてずっと見ていられる。ボスもシロたんを愛でる時はこんな気持ちなのかもしれない。


「ふふん、私より青いキューブさんを褒めてあげて」


 元の大きさに戻った青いキューブをなでなでしながら、白キマイラは可愛く頷いた。


「我決めたにゃ。汝をましゅたーにしゅるにゃ!」


「えっ? あなた魔王の四天王よね……」


「そんにゃのもうとっくに辞めたにゃ! 今はただのしゅごく可愛いモフモフにゃ! モフモフはましゅたーに可愛がってもらうにゃ!」


「ちなみに骨になる前のあなたって?」


「モフモフ好きな魔族のおっさ……にゃふんにゃふん。び、美少女だったにゃ!」


 今、おっさんって言いかけた。


「この件は一旦持ち帰りまして後日改めて検討結果をお知らせするという形で……」


「にゃー! みしゅてないでにゃー! このしゅがたで人間にみちゅかったらちゅかまって強制的に契約従魔にさせられちゃうでしゅー! また朝から晩までお休みもなしで働くの嫌にゃー!」


「うっ……それを言われると……」


 ふわっふわの白キマイラにしがみつかれて長いしっぽを巻きつかれると、元の姿がどうであれ可愛さの方が勝ってしまう。


 何より望まない環境で社畜にされる辛さは梛には痛いほどよく分かる。


「……仕方ないわね。でも私、異世界の人間だからずっとこっちの世界にいられるわけじゃないんだけど、大丈夫なの?」


「ましゅたーになってくれるにゃ? ありがとにゃー! しょれなら我と契約しゅた後に汝の世界で召喚しゅればいいにゃ」


 ピョンピョン飛び跳ねる白キマイラ。とても元魔族のおっさんの所作には見えない。


「私、召喚とか出来ないわよ。出来たとしても呼ぶ度に魔法陣が爆発するのはちょっと……」


 先日の会社での騒動を思い出すと、気安く白キマイラをリアルの日本で呼び出す事は出来ない。なんせガゼボが跡形なく吹っ飛んだのだ。


「我の実験道具の中にモフモフ召喚用のまじゅちゅ札があるからちゅかってにゃ。しょれに魔法陣が爆はちゅしゅるのはおしょらく無理矢理空間にじゅちゅ式をねじ込んで展開しゅるからでしゅよ。契約しゅてたらちゅながってる分だけ魔力の逃げ道ができましゅが固定座標で圧縮されたら魔力は空気より爆はちゅしやしゅいにゃ。魔力消耗も桁違いに大きい禁じ手にゃ。危ないからふつーやらにゃいでしゅよ。聞いてるでしゅか?」


「はっ!? 何か苦手な理科の授業聞いてた夢見たわ!?」


「……とにかく契約しゅてくれたら爆はちゅしにゃいでしゅ。おでこの宝石に指をあてて我に新しいおにゃまえ下しゃい。可愛いにゃまえで新にゃる旅立ちにゃ」


「名前? ええっとそうねえ……キマイラだから……」


「嫌な予感がするにゃ。ひき肉感満載の呼び方はやめてほしいにゃ」


「え、ダメかしらキーマ(ひき肉)ちゃん……」


 断固として首を横に振られるので第一案は没になった。


「じゃあキメラの」


「ダメにゃ」


「魔族のおっさんだから」


「もっとだめにゃ」


 白キマイラの新しい名前が決まるまで激しい攻防戦が繰り広げられ、梛がリアルの地球に戻った時には白々と夜が明けていた。


「……きゃーっ!? 遅刻するー!?」

更新確認(それともこいつ大丈夫かって生存確認してもらってる……? 優しい……)して下さる方も、初めましての方も、ここまでお読み下さいまして本当にありがとうございます!

次回更新は10月20日頃を予定しております。

寒暖差が激しくて体温調節難しいですね……。寒冷順化も頑張るぞー。

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