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悪役令嬢だと思ったら伝説の悪役になりました~ラスボスはアイテムに入りますか?~  作者: 繭式織羽


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28話 りゅおってぃツッコミ回よー!

「屋上にモンスター出たって黒葛(つづら)から聞いたけど……って、うおっ、なんじゃこりゃあっ!?」


 らぶちゅるちゅの等身大パネルを両腕に抱えて入ってきたりゅおってぃこと、リアルでは異世界特別営業推進課課長の宇薄(うすずき)竜王(たつき)が、部屋の中心に置かれたものに気付いて驚愕する。


 部屋のど真ん中に、巨大な漆黒のキューブがある。天井すれすれだ。


 鼓動のような魔力の震えで、黒いキューブの面がとてもゆるやかに波打っている。


 それを取り囲んで、七草社長たちと赤髪執事、長老エルフ美少年とその補佐エルフ美人が見上げている。黒キューブとメンバーの圧が強い。


 悪役幹部の会議で圧迫面接受ける下僕みたいやん、俺……。


「……これ何なん、社長?」


「長老殿が捕らえたキュクロプスの時間を巻き戻したら、こうなったそうだよ」


 会議室のテーブルの上に、キュクロプスらしき大きな目玉がどかんと無造作に置かれている。魔法陣らしき光る文様が周囲に浮かんでいるのは、再生を防ぐ念のための結界だろう。


 絵面わるー。何かの儀式始めるヤバイ邪教集団にしか見えんで、これ……。


「どっからツッコんでええんか分からんけど、キュクロプスってこんな生まれ方すんの?」


「これはホムンクルスの肉だな。巻き戻した感じ一年も経ってねえ。能力か錬金術かで成長速度早めたんじゃねえのか」


 会議室の椅子に横柄な座り方をしながらも、赤髪執事が運んできたショコラサンドクッキーを口いっぱいに頬張る長老エルフ美少年。


 食べ方が子リスちゃんやん……! クッキー好きなんか、長老ー! あかーん! 俺の可愛いセンサーに反応しとるー! 誰かこの高速カリカリしてる動画撮ってくれやー!


 内心悶えながらも、長老エルフ美少年の気質をよく知るりゅおってぃはポーカーフェイスで話を進めた。


「そんで、誰がこんな事したか分かったんですか」


「何かヒントがあると思ったんだが、今のところそれが見えてくる気配はないね。隠蔽されているのなら、我々より高位のスキル持ちという事にはなるが……」


「識別できる魔力や術式も複数混ぜられて、製作者が分からないよう工作されていますね」


 補佐エルフ美人が喉を詰まらせた長老エルフ美少年に手慣れた様子で水を渡しながら呟く。


「ほな、とりあえず、これどっかに片づけてほしいんですけど……この会議室、この後打ち合わせて使う予定あるんで」


「そうしたいのは山々なんだがね、りゅおってぃ君」


「会社でその呼び方止めてんか、社長」


「収納しようとすると拒否されてしまうんだよ、りゅおってぃ君」


「二人揃ってツッコまれるのはお約束なんか、副社長」


 試しにりゅおってぃが自身の青いキューブを出現させて黒いキューブを収納しようとすると、どこからともなくエラー音が鳴って、弾かれたような軽い衝撃が響く。


「あかんやん」


「すみません、長老様が液状生物(スライム)並みの考えなしにお部屋をお使いになって」


「ああん? ひとつ目が入るでかい部屋が他になかったんだから仕方ねえだろ!」


 優れたバランス感覚で椅子の上に立ち上がり、補佐エルフ美人に文句を言う長老エルフ美少年。とりあえず、会議で使う椅子に土足で乗るのはやめてほしい。


 仲裁すべきか、ツッコむべきかりゅおってぃが悩んでいると、ドアがノックされて福籠(ふくごもり)(なぎ)が入ってきた。


 ジムの化粧室でシャツのボタンを縫い、破れたパンストも履き替えて、身なりを整えてから戻るように社長たちに提案されたのだ。


「ボス、戻りました。長老様、ボタンありがとうございます。あっ、これこの間のライブの衣装のですね……! きゅーみー決めポーズ可愛い!!」


 黒キューブをガン無視して、りゅおってぃが抱えていた等身大パネルに気付いて盛り上がる梛。


 ええわー。この子なんかスレてなくて和むわー。長老までツンデレ発動してそっぽ向いとる……滋養成分満載やんけー。黒葛は悪いやつちゃうけど、巨乳見るとアホになるからなあ。セクハラで辞めてしまわんよう、気ぃ付けたらんと……。


 上司として気苦労がひとつ増えるりゅおってぃ課長だった。


「そうだ、シロたん! シロたんの鼻でこれが何か分かるかい?」


「社長、リアルシロたんに無茶ぶりすんのやめーや」


「ふんふん! 何かこないだ会ったハルピュイアと似た匂いがします!」


「分かるんかいな!?」


「シロたん、そのハルピュイアというのは?」


「魔王の四天王の一人って言ってました。魔王からもらった魅了の香水を使ってケンタウロスさん達をたくさん捕まえてて……」


「魔王!?」


「……ほう、おもしれえじゃねえか」


 長老エルフ美少年が、クッキーを食べる手を止めて不敵に笑う。


「奴らが懲りずにしゃしゃり出てくるんなら、挨拶しとかねえとなあ……」


 どっちが悪役か分からんぐらい凶悪な顔すんのやめてほしいわー。


 異様なまでの圧のある魔力を感じてりゅおってぃは後じさりする。


「長老様、顔が小鬼(ゴブリン)族みたいになってますよ。あなたは、その魔王の四天王と戦ったのですか?」


「シャイヤールさんがやっつけました。あっ、レン君とかと一緒に」


 鬼人族のレンの戦いぶりを思い出してときめく梛。やっぱりレン君に早く会いたい。お休みの日に異世界ミラーに行こうと決意する。


「弓聖シャイヤール……!?」


「あいつ生きてたのか……!」


 思わず詰め寄った長老エルフ美少年が、目の前に迫った梛の巨乳に瞬間赤面して慌てて背中を向ける。


「楼閣群島って所で会いましたけど、そのハルピュイアの件があってまた旅に出るって言ってました」


「やつが動く……!」


「あのシャイヤールが……!」


 長命のエルフ界ならシャイヤールのクレジットタイトル並みの凄まじい戦歴が未だ伝わっているのだろう。


 エルフにまで戦慄させるって、シャイヤールさんとんでもないケンタウロスだったんだわ……。キエリちゃん、今頃大丈夫かしら……。


 別れ際、涙と共に再会を願っていたキエリのまっすぐな瞳が忘れられない。


「御使い様と先生と神事が出来てよかった……。今度またどこかで会えたら、絶対わたしと一緒に先生の手綱を締めて下さい……!」


「ぜ、善処するわ……。私もキエリちゃんやシャイヤールさんと会えてすっごく楽しかったわ」


 そんなやり取りをした思い出もある。


「お取込み中すんませんけど、結局どうするんですか、これ」


「そのままでいいじゃねえか」


転生者(プレイヤー)ちゃう社員をビビらせんといて下さい」


「片付ければいいんですか?」


「弾かれてちょっと痛いから収納せんほうが……って、入った!?」


 梛の青いキューブが、何の抵抗もなく黒キューブを吸い込んだ。後にはカーペットに黒キューブがのっかっていた四角い跡だけがある。


「シロたん、大丈夫か? しんどくなってへん?」


「はい、別に何ともないですけど……?」 


 きょとんとして首を傾げる梛。


「さすが、シロたん! 収納力も桁違い!」


「すごいね、シロたん! でも変だなと思ったらすぐペッてするんだよ!」


「収納力の問題なんか? でもええなあ、運送費かからんの」


「一人の転生者(プレイヤー)スキルに頼った物流管理をする気はないよ、りゅおってぃ」


「言うただけやって。俺もそんなオーバーワークさせられたら倒れるわ」


 双子社長とりゅおってぃのやり取りの途中で、長老エルフ美少年が補佐エルフ美人とともに部屋から出ていこうとする。


「おや、このあと晩餐はどうするんだい。長老殿」


「それはまた今度だ。魔王の話を聞いちまったからな。一旦還らせてもらうぜ」


転生者(プレイヤー)のお体をずっとお借りするわけにもいきませんし、今日はこれで失礼させて頂きます」


「出来れば次来る時は年内にお願いするよ、長老殿」


「は? 人間は気が短けえな」


「また心を込めて焼き菓子をご用意させて頂きます」


 赤髪執事が深々と頭を垂れる。それを一瞥して長老エルフ美少年と補佐エルフ美人は部屋を出ていった。


「あっ、そう言えば私、長老さん達の名前知らないわ。何て呼べばいいのかしら……」


「長老殿のお名前が気になるなら教えてあげるよ、シロたん!」


 何となく呟いた梛に七草社長たちがにやりとした笑顔を見せて言うと、先ほど出ていったはずの長老エルフ美少年が怒ったような顔をして、ずかずかと会議室に戻ってきた。


「なげーから、セリでいいんだよ!」


「わたしはシロ……あなたも確かシロたんさんでしたね。でしたら、スズとお呼び頂ければ」


 入ってきた時と同じようにずかずか帰っていく長老と優雅に挨拶して去っていく補佐のエルフ二人を見送ったあと、梛はそばにいたりゅおってぃと目を合わせて頷いた。


「ナイス、ツンデレですね」


「ツンデレからしか得られへん栄養分がある」


「まだ聞こえてんぞ、オラあ!?」


 長老エルフ美少年は地獄耳だった。

本日もお越し下さいまして本当にありがとうございます!更新時間が遅れまして申し訳ございません……。

次回は9月20日頃更新を予定しております。

こまめなデータ保存って大事ですねー……。(すみません、色々やらかしてました……)

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