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第1夜②

 ――承香殿の女御が消えた。

 左大臣は淡々と、恐ろしい事態を告げた。


「このことは限られた者しか知らない」

「どうしてっ!?」


 紗子が事件に巻き込まれたのなら、早急に大掛かりな捜索をするべきだろう。

 食ってかかる沙那に、左大臣は肩をすくめて答えた。


「我が娘ながら、承香殿の女御様は主上(おかみ)の寵姫だ。女御様がいなくなったと分かれば、今はおとなしくしている者どもも、自分の娘を入内させようと動くだろう。主上もそれを憂いて『承香殿の女御の居場所を失わせたくない』と仰っている。今は、『女御様は病を得て里下がりをしている』とごまかしているが、その言い訳も長くはもたない。そこで、女手を借りたいと思ってね」


 だからこそ、今日、ここに来たのだ、と。

 左大臣は、鋭い目をして『本題』を告げた。


「――小姫、女御様の身代わりを務めてくれないか」


 その言葉は、あまりに突拍子もなくて、沙那は瞼をぱちぱちと瞬かせた。

 帝の寵愛を一身に集める女御は、この国一番の女性と言っても過言ではない。その女性の、身代わり。そんな大役は、誰にも務まらないだろう。ましてや、世間並みの女性らしさすら足りないらしい沙那に果たせるはずがない。


「身代わりって、何を……?」

「簡単だ。女御様のふりをして内裏に戻り、内裏では事情を知る女房たちと力を合わせて、女御様が健在であるように見せかける。空いた時間があれば、女御様の行方を探ってほしい」

「それくらいならできるけれど……」

「引き受けてくれるね?」


 一瞬だけ考えて、沙那は深々と頷いていた。


「ええ。是非、私に任せてちょうだい、小父さま!」


 不安が無いと言えば嘘になるけれど、このまま何もできずに、ここでまんじりともせず紗子の帰りを待つだけよりも、ずっといい。

 即座に承諾の返事を返した沙那に、左大臣は『頼もしいな』と目を細めていた。



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