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第4夜⑥

「ともかく、あなたが正体を明かしてくれたおかげで、手がかりが増えたわ」

「ほう?」

「そのいち、紗子は内裏に残りたがっていた。それには、何か大事な理由があったはずなの」


 人差し指をぴんと立てて沙那が言うと、寛高も頷いた。

 紗子が失踪した日、常の彼女らしくない打算を、寛高は不快に思ったのだ。つまり、その時の紗子には『何を利用してでも内裏に留まろうと必死になる理由があった』ということ。


「そして、そのに。それほど残りたがっていたはずの紗子は、何故かその日のうちに姿を消した。考えられるのは、あの子の熱意に関係なく無理やりに連れ去られたか、急に『ここにいたい理由』が無くなったのよ」

「……ということは、先に『紗子が内裏に残りたがった理由』を確かめる必要があるな」

「正解! 話が早くて助かるわ」

「褒めてもらえるとは光栄だ」


 芸を仕込んだ猫を可愛がるように、彼の察しの良さを褒めると、寛高は面映そうに笑う。『無礼だ、俺を何だと思っている』と機嫌を損ねた様子は微塵も見えない。


(あ……可愛い、かもしれない)


 ふと思った拍子に、胸がずきんと痛む。……大丈夫だ、重々承知の上だ。

 誰から何を言われなくたって、彼相手にこんなことを考えてはいけないということは、沙那だってきちんと分かっていた。


「早くっ、紗子を見つけないとっ! 頑張りましょうね!」

「ああ。さ……宰相の君が、味方になってくれてとても頼もしいよ」


 信頼を預けてくれたその笑顔がどれほど眩しくても、それを見て『可愛いな』と微笑み返してはならない。

 彼は帝で、年上の男の人で――そんな理由によって禁じられたなら、目を瞑ることもできただろうけれど。


(……何を考えているの。こんなこと、思っちゃ駄目よ。寛高さまは紗子の夫よ。紗子のことをとても大切に思っているのに)


 彼は、沙那の大事な従妹の夫だから。

 彼に心をときめかせることが許されるはずもなかった。

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