表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: ラララ

「ねぇ、〇〇君、いつになったら病気は治るの?」


 愛ちゃんから、そんな質問が飛んでくる。

 僕の病気は生まれつきの病気で、絶対に治る事はないと言われたこともある、けど……


「愛ちゃん、僕は絶対にこの病気を治すよ!‘ずっと一緒にいようね’!」


 そんな僕の言葉に顔を綻ばせる。

 愛ちゃんはまるで天使みたいだ。


「うん!〇〇君とずっと一緒にいるんだ!」


「ね、ねぇ、もし僕の病気が治ったら、け、‘結婚しよう’……」


 僕は顔を真っ赤にしながら言う。

 愛ちゃんも真っ赤になっている。

 僕と一緒で恥ずかしいのかな?


「う、嬉しい!ずっと一緒だよ?‘約束’だよ!」


 そう言って愛ちゃんは小指を差し出してくる。

 解っていると言うふうに僕は頷き、一緒に小指を差し出し、二つの小指を絡ませる。


『ゆびきりげんまん嘘ついたら針千本のーます!指切った!』


 2人で息ぴったりに層の様子は長年寄り添って来た家族に似たものを感じてしまうほどだった。


「そういえば、今日は〇〇君の15さいの誕生日だったよね!」


「そうだね。」


 今日は僕の誕生日だったみたいだった。

 言われて思い出す。


「じゃぁ、誕生日プレゼントって何する?」


「え?でもそんなの今からは決められないよ?」


「決められるものだったらなんでも良いよ?」


 僕はすぐに悩む。

 なんで愛ちゃんがこんなことを言ってくるのか。

 誕生日で、自分にリボンをつけている愛ちゃんはとっても似合っていた。


「そんなこと言われたら勘繰っちゃうじゃないか。」


「勘繰っても良いのに……」(小声)


「何か言った?」


 少し聞こえた気がした。


「か……て……のに?って何?おしえて?」


「嫌だ!」


「え〜」


「いやってものは嫌なの!」


 そんなやりとりを繰り返し、次第に夜は更けていく。


「じゃあ、‘また明日’!」


「今度来た時はお菓子を持ってくるね!」


「医師の人からダメって言われてるよ……」


 そう言うと、そうだったと思い出した様に愛ちゃんは言った。


「じゃ、無理かぁ〜それでも今度またお見舞いに来るよ!」


「ばいばい!」  「ばいばい!」


 お互いにそう言うと、その扉閉まって行く。


「やる事は無くなっちゃったな。」


 そう言い、夢の中に行こうと布団の中で寝息を……


 ◇ ◆ ◇ ◆


「う〜ん、おはよう!」


 起きると‘地面は硬かった’。

 なんでだろう?

 昨日は確か……どこで寝たっけ?


「僕は一体誰なんだ?」


 名前を一切思いだす事は出来ない。


「分かるのは……僕が嘘つきだって事だ。」


 そう言うと同時に重苦しい量の罪悪感がのしかかってくる。

 そのことがあると僕は思ってしまう。


「どれだけの嘘を重ねればこうなるのか?」


 嘘には決して時効はやってこない。

 誰かからの受け売りだ。

 嘘をつくな。

 いつか罪悪感に押しつぶされて、罪悪感の心になってしまう。

 そんなことを言っていた気がする。


「そう考えると、腐った僕には腐って寂れた場所がお似合いっていうのかな?」


 そう、僕が立っていた場所は路地裏だった。

 どこの路地裏かは分からない。

 ただ、大通りの喧騒も聴こえなければ、スラム街特有の悪臭もせず、啜り泣く声や怒鳴り声も聞こえない。


「ここはどこなんだろう?」


 僕はまったく持って知らなかった。

 何もかもを覚えちゃいなかった。

 記憶に大量の穴がある。

 昨日何をしていたのかなども一切合切分からなかったのだ。


 疲れた様に二度寝をすることにした。

 知る事は後回しにしたのだ。

 ‘いつ調べたって変わらない’のだから。


「おやすみ。」


 そういい、僕は二度寝の快楽に浸かるのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 起きたら目の前に女の子がいた。

 その女の子は、妙に見覚えのある顔立ちだった。

 静かに僕の目の前で黙祷していた。


「ねぇ、君は一体……」


「あなたは死んでしまったのね。」


 ‘誰?’


 と言おうとしたが、そこで喉に魚の小骨が挟まった様な感覚に陥り、言うことを止める。

 とある感情が浮かんできたのだ。

 何故だかわからないが、その感情のことを把握できない。


「今日が最後の、お見舞いの日になるなんてね。」


 その言葉で僕の中に‘愛ちゃん’と言う名前が浮かんでくる。


 その瞬間湧き出た。

 黒く後悔の滲んだ色が吹き出し、僕の‘体’を染めて行く。



 僕の事今理解してくれても、もう愛してくれなくて良い。



 僕の事を判ってくれても、見下してくれて構わない。



 だから……と、思っていたその時、‘昨日のお見舞い’が浮かんでくる。

 その瞬間目尻に溜まっていた塩水が滝の様に溢れ出した。

 その塩水は地面に伝わり、世界に広がって行く様に拡散されて行く。


 その瞬間理解したくもない事を理解してしまったかもしれない。



「僕はもう’…’なんだ。」



「嘘ついてごめんね……」



 その二つの言葉が心のうちから溢れ出して来てしまう。

 僕は‘大嘘つき’だ。

 約束を破ってしまう最低で屑な野郎だ。


 1人トボトボと路地裏を歩く。

 そうして行くうちに歩き疲れてしまったのか、いつの間にか寝てしまっていたのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


「僕は大嘘つきだ。」


 目の前に愛ちゃんがいるからこそ、そう吐き捨ててしまう。


「嘘つきは悪い事なんだ。」


 自分で何をやりたいかもわからなくなる。

 昨日までの自分がまったく思い出せない。


 ‘何をしていたのか?’


 これは僕が病院にいたことで推測はつく。

 闘病していたのだ。

 酷く辛い闘いを行なっていたのだ。


 ‘僕は一体誰なんだ?’


 僕が知りたい。


 ‘ここは一体どこなんだ?’


 永遠と続く路地裏に辟易していた。

 良い加減、誰かいてくれても良いんじゃないかと思った頃に、愛ちゃんと会った。


「針千本飲むからさ……指も切るからさ……もう一度‘会って’くれないか?」


 それは何でもない、救いを求める声だ。

 ただただ救済を求める人間の中の1人だ。


「でも、僕は最低な奴だ……」


 言葉に出して明言してしまう。

 その方が楽だと確信していたのだ。

 楽な方に逃げないと精神は持たない。

 当たり前の話だが、逃げの精神に染まっている僕の心はもうズタボロだった。


「僕は悪なんだよ……だから、悪い奴を懲らしめてくれ……」


 心の底から願う様な声をあげる。

 本当に辛くて泣きそうだ。

 そんな声に無言を貫く愛ちゃんに僕は何も言えなくなる。

 そうして、のらりと立ち上がり、路地裏を進むのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 僕は辿り着いたところで座り込んだ。

 お腹も空かず、体力切れの心配も無くただただ歩くだけ。

 それがあまりにも虚しく、悲しかった。

 自分以外には誰もおらず、その空間をただ進むだけと言う事は、ものすごい量の精神が抉れる。

 それにて、眠気はあるのだ。

 ついに耐えれなくなった僕は座り込んでしまった。

 その瞬間、途方も無い眠気が僕の事を襲ってくる。

 限り無く、限界に近かった精神は‘耐える’と言う3文字を知らないとでも言うかの様に、深い深い眠りの中に落ちてゆくのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 何か途方も無いものが流れ込んでくる感覚がする。

 それに頭痛を感じてしまい、パニックに陥りそうになるが、それ以上の衝撃が待っていた。


「愛ちゃんとの出会い……」


 天使の様な微笑みを浮かべる愛ちゃんの顔を思い浮かべると、ものすごく楽しみになってしまう。

 どんな出会いをしたのだろうか?と、自分の過去にも関わらず、無性に楽しみなり、待ちきれなくなっていたのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


 病室の中で、色白い肌をした僕が座っていて、まるで監獄の中にいるかの様な表情をしてしまっているのは僕だ。


「母さん、父さん……」


 僕はそう呟く。

 どこにいるかもわからない様な二人組に向かって助けを乞う。

 あぁ、辛い。

 誰か僕を一度抱きしめるだけで良い。

 それだけで僕は明日からも、頑張っていけるから。


「愛情も友情もない。僕はいつから……」


 ‘空っぽなんだろう’


 生まれつきの病を持っている僕だけが、1人で病室にいるんだ。

 なんで、僕だけこんな目に合わなくちゃいけないんだ!


「この世界にもし運命の神様がいたなら、絶対に呪ってやる。」


 まるで決意表明とでも言うかの様に叫んだ。


 ‘治ったら母さんと父さんに会いに行く’


 この二つの目標を叶えるために、今を生きている。

 それ以上でもそれ以下もない。


「テレビをつけよう……」


 そう思い、リモコンを取ろうとした直後、ナースコールボタンに腕が当たってしまった。


「あっ……」


 すこしすると、ドタドタという足音と共にナースさんがやってきた。


「すいません、リモコンを取ろうとしたら、腕が当たっちゃって……本当にすいません……」


「良いのよ。‘次から間違えない様に’ね。」


「はい!」


 そう返事はしたものの、何故か胸を締め付けるこの痛みは何だろう?

 その瞬間、自分の過去という事を思い出す。


「そうか……さっきのも嘘なんだな……」


 でも救いはある。

 ‘愛ちゃん’だ。

 今は誰だか知らないけど、いつか自分を迎えにきてくれるんだ。

 そして、ずっと一緒にいて結婚するんだ!


 その瞬間……



 ‘コンコン’



 とノック音が響く。


 でも僕の部屋にノックして入ってくる様な人なんていない……いや、‘愛ちゃん’なのかもしれないな。

 期待に胸をふくまらせる。


「こんにちは。覚えてる?」


 そこに居たのは、物凄く可愛い女の子だった。

 ボキャブラリーという奴が俺には不足しているが、それでも、この女の子は100人に1人いるか居ないかだ。


「こ、ここんにちは。ぼ、ぼ僕は〇〇です。」


 え?言えない?いや、言えたけど言えてないのかな?

 不思議な感覚だ。


「やっぱり〇〇君だ。私……」


「愛ちゃん?」


「えっ……私のこと覚えててくれたんだね!」


「勿論だよ!」


 そんな応答を行う。

 くだらなくない、それでもつまらない様な会話だ。

 世間話を行った。


「愛ちゃんの方は最近どうなの?」


 そう尋ねたがよく聞き取れず、そこを終わらせられる。

 そして、もう一度聞こうとする。


「つまり、……って事だね。」


「うん!そういう事!」


 え?何?どういう事!?

 喋ろうと思った事を喋れない?


「へぇ愛ちゃんの家族は……なんだ。知らなかったなぁ〜」


「そうだよ!凄いでしょ〜」


 やっぱりだ。

 ‘さっきの話、もう一回聞きたいな。’

 と言いたいはずなのにそう言えない。

 何だろう、とてももどかしい感覚だ。


 何故だろう?


「じゃあね。またね。」


「また!」


 愛ちゃんが行った後の病室で、静かに考える。



 ‘僕は一体なんなのか?’


 ‘愛ちゃんは一体誰なのか?’


 ‘僕はどんなところに生まれたのか?’


 ‘僕の名前を言えない理由は?’


 ‘愛ちゃんにもう一度聞かせてが言えない理由は?’



 様々な疑問が渦巻く。

 何故こんな状況かもわからずに呆然としてしまっている自分がいた。

 自分で元気を出そうと、テレビをつける。

 しかし、そのテレビには‘チャンネルが一個しか無い’のだ。


 そこに写っていたのは……


 ◇ ◆ ◇ ◆


 ‘僕’だった。


 自分というにも烏滸がましい何か。

 それが今の自分とそいつが言った。


「お前って最低な奴だよな。今まで何千何百と嘘をついてきたんだろう?」


 違うっ!あれは、あれは仕方がないじゃ無いか。


「そうやっていつまで逃げるつもりなんだ?良い加減現実と向き合えよ。」


 うるさいっ!お前は一体誰なんだ!俺じゃ無い何かのくせに俺の顔を使うな!


「ククク、俺は‘お前自身’だ。」


 嘘を言え!お前なんかと俺を一緒にすんな!


「なら、何故‘俺を一緒にするな’なんていうんだ?認めたく無いだけだろう?」


 そんな事は……


「あーあ、ボロ出しちまったなぁ〜カマかけただけなのにな!」


 っ!巫山戯るなよ!クソ野郎!


「残念!まぁ、俺はお前に伝えたいことが二つあるんだが……まぁ一つはもう言ったかぁ〜」


 それは、何だ?


「お?聞いてくれんの?まぁ、そっちの方がいいけどな。」


 さっさと要件を言え。


「お前はもう既に、‘死んでいる’。」


 っ!


「お前は認めようともしないからな。俺様が教えてやってんの。」


 そんなわけ、ない、だろう。


「残念ながらあるんだよな。これでお前の疑問の一つ、‘僕は一体誰なのか?’という疑問も解消されたな!」


 ……


「お前に伝えたい事はもう伝えたが、お前は知りたい事はあるか?」


 愛ちゃんは、誰なんだ?


「クククッ、お前もう既に知っているんじゃ無いのか?」


 ……いや、知らない。


「クククッ、あの娘も可哀想だな。信用されていない。まぁ、いつか分かるさ。それじゃあな!」


 まて!答えになっていない!


「……」


「くっそ!もう何も言わないってか!?」


「……」


「はぁ、何だってんだよ……僕は、死んだのか……もう、疲れた。」


 そう呟き、ベッドの中に潜るのだった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


「クゥ!」


 疲れた体を叩き起こし、ベットの上で上体を起こす。


 ただ、昨日と違って僕の体は


「透けてる。」


 ‘透けていた。’


 それは異常事態だ。

 今までこんな事は決してなかったのに、急にこんなことが起こるのだ。


 もしかしたら?

 肉体を奪い取れるかもしれない。

 だったら……

 そう言うと、ふらりと立ち上がった。


「絶対に愛ちゃん以外の生きている人間を見つけなきゃ。」


 そこはもう既に寂れた路地裏だった。


 ◇ ◆ ◇ ◆


「ふぅ。」


 それだけ歩いただろう?

 果てしない距離を歩いた気もするし、まったく疲れていないため、たいした距離を歩いていない気もする。

 俺が求めるものは……‘肉体’


 昨日まであんなに自分のことを知りたかったのにも関わらず、今はただ肉体を求めて歩き続ける亡霊と化してしまったのだ。

 理不尽な境遇に嘆きながらもただただ歩き続ける。


 歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く歩く……


 何処まで歩いたのだろう?

 もう疲れたよ。


「疲れたなぁ。」


 そう呟き、壁に座り込む。

 不思議な事に目から大量の汗がこぼれ落ちてきた。


「愛ちゃん……」


 そう呟くと目の前に愛ちゃんが現れた。

 僕は目の前に希望が生まれたかの様に手を伸ばす。


「もう、君は死んじゃったのにまた私の前に現れるんだね。」


 愛ちゃんはそう呟く。

 喋りかけてくれた事に対して驚愕の表情を隠せなくなる。


「僕が見えるの?」


 救いを求めていた。

 助けを求めていた。

 心の底から欲していた。


 ‘他人から認められる事’を。


「愛ちゃん!」


 そう叫びながら、思わず飛びついてしまう。


「もうもう、ダメだよ、こんなに目元を濡らしちゃ私も濡れちゃうよ。」


「ああああぁぁぁぁ!」


 薄く寂れた路地裏では無く、厳格な雰囲気の場所だ。

 何処かで見たことがある様な気がする。


 槌に、工場の工の形をした物。

 周りを囲む様に机が置かれている。

 真ん中の机にはマイクが置かれていた。

 それはまるで……

 ‘裁判所’の様だった。


「あ、愛ちゃん?ここは何処?」


「あはっ、じゃあ始めようか。」


「な、何を?」


 少し愛ちゃんに恐怖を覚えてしまう顔だった。

 まるで、狂人の様な表情を浮かべ、こちらを見つめる。


「〇〇君、君はどれだけ嘘をついてきた?」


 その瞬間絶望的な罪悪感がのしかかる。


「私はあなたのことが好きだったんだ。どうにもならない程に。」


 ‘だって私のことを……でくれたんだから’


 そう言った。

 最後の言葉の一つがよく聞き取れなかった。

 しかし、もう一度聞こうとしても聞けないことを悟る。


「大量の嘘を重ねてきました。」


「私にずっと一緒にいようって言ってくれたよね?それはどうしたの?」


 胸の中から溢れ出す想いが突き抜ける。


「ごめんなさい……!」


 それは謝罪にして、慟哭だった。

 声にならない叫び声をあげながら泣く。


「ふふふ、やっぱり、君は‘我儘’だな。」


 そう言いながら、壇上から降りてきて頭を撫でてくれる。

 愛ちゃんの胸が包み込む。

 段々と安心感が充満してきて、ついには泣き止んだ。


「ごめんね、愛ちゃん。みっともない姿を見せちゃって。」


「うん、そうだね、判決を言い渡します!‘幻君’の罪状は、これからの現実に向き合うことです。」


「え?」


 全てをだんだんと思い出す。

 あぁ、僕は、僕は……


 ‘幻’だったんだ。

 一番最初から。


「ねぇ愛ちゃん、この世界って一体何なのかな?」


「それは、ってまだ言わない方がいいか。」


「え?」


 唐突にそう言われ、変な声をあげてしまう。

 全身が不思議な感覚に飲まれそうだった。


「もう直ぐわかるよ。」


 そう言われると同時にどんどんと情報が頭の中に流れ込んでくる。


「ふぁあ、ふぁふぃふぉふぇ、ふぁふぁふぃ。」(ふぁあ、何これ、やばい。)


「愛ちゃんは、幻の味方だよ!」


「有難う。」


 何と立ち直した僕は愛ちゃんにそう述べる。


「クククッ、ま〜た俺の出番かよ。」


「お、お前は?」


「俺は‘お前自身’だ。」


 そう言われて何とか思い出す事に成功する。


「まぁ、そう焦るな。前回と違い今回は喋れるんだぜ。」


「ああ、助かる。」


 となると心の中でこいつにいくら毒付いてもバレないな。


「いいや、バレるぜ、思った事全部血にしといた方が後から楽だぜ。」


「うん、分かったよ。」


「まずは確定事項だが、お前は幽霊だ。」


「うん。」


「お前にとって辛いことを話す。心しろ!」


「う、うん。」


 こいつがこんなこと言う様な奴だったなんて信じられないな。


「聞こえてるぞって、もういいや。この世界は‘幻’だ。」


「え?」


「いくら何でも疑問に思っただろう。どれだけ時間をかけて歩いても辿り着かない路地裏。急に転移する自分。愛ちゃん。はらも減らない。」


「っ!」


「と言っても、俺はこれを伝えにきただけなんで、お先に失礼すんぜ。」


「ええ、はい。」


「え?」


「最後に私からよ。‘産んでくれてありがとう。’」


「え?」


「ふふっ、どう?びっくりした?」


「もしかして、」


 もしかして、


「最初から愛ちゃんは幻だった?」


「うん。」



 そうして、遂に、僕は浄化した。

 現世に未練を大量に残して。




 精神調査票


 ・精神異常 はい  〇

 いいえ


 ・はいと答えた方のみ、その様な精神異常があったのかおかき下さい。


 時折架空の人物と会話し、喜び、壊れる。

 泣く。などを繰り返す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ