表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
63/75

第60章 エリカとメイ

 

 精霊の祠を出ると、あかり達が出迎えてくれた。

 結局、心配すぎて皆で迎えに来てくれたらしい。


 ……ありがたいことだ。


 いぶきは、あかりに氷の大精霊を紹介した。


 「無事に終わったよ。大精霊はおもちって名付けた。あかりが飼っていたネコも同じ名前だったよね?」


 すると、あかりはおもちを抱きあげる。

 なんだか喜んでくれているようだ。よかった。


 おもちも拒否する様子はない。

 なんだか、その様子を見ていると、少しだけ胸がモヤモヤする。


 『命懸けで契約したのに、あかりに懐いてる気がする……』


 


 一同はそのままエルフの渓谷に向かう。

 エルフの渓谷は、上流の峡谷の更に奥にはマザーツリーがあると言われており、精霊の加護が強い場所だ。

 

 傷の回復も早くなるので、長老の薦めで関連をこの場所にした。現地につくと、チームに別れ、それぞれの修練を開始する。


 ノアといぶき。


 エリカとメイ。


 あかりとアイラは、それぞれのサポートだ。



 エリカとメイ、それにあかり。

 問題点を把握するために、まずは、あかりとメイの模擬戦形式でトレーニングを開始した。


 メイは、右手の甲を外側にし、切先をあかりの喉元に向けるようにレイピアを構える。


 あかりは短刀を逆手にもつと、一気に距離を詰めた。レイピアと守り刀は間合いを制するものが勝負を制する。2人ともそれをよくわかっている。


 メイは「unoウノ!」と叫び、一気に後ろにバックステップする。そして、「dueドゥエ!」の声と同時に時計回りに跳躍した。


 どちらも人間の可動限界を遥かに超えた速度だ。


 これは、一部の魔剣士が得意とするプレキャスト(事前詠唱)の技術だった。

 メイは「兎の輪舞(ラビット•ステップ)」という瞬間加速魔法を事前にスタンバイにし、設定した掛け声だけで発動するようにしていたのだ。


 そして、メイは時計周りにあかりの右側面をとると、鋭い剣先で突く。


 しかし、あかりはメイの方をみない。

 体勢が崩れるのを嫌ったのだ。


 メイの剣があかりに届く寸前。


 「「雷盾」」


 あかりは雷の盾を己の喉元に出現させ、メイの剣撃を受け止めた。その盾は威力をいなすように外側に傾いている。


 メイは剣の勢いが止まらず、バランスを崩しす。

 その瞬間、あかりは逆手に持った短刀の切先を上に向け、メイの喉元に突き立てる。


 本当に突き刺しはしない。寸止めだ。

 両者は互いに距離をとると、ニヤッとした。


 あかりが声をかける。

 「メイさん、強いなぁ。平行詠唱が得意っていうのは知ってたけれど、その事前詠唱っての? すごいね」

 

 あかりから見ると、メイは攻守のバランスが取れている。万能型だ。学生としては、申し分ない実力だろう。


 対抗戦での問題があるとすれば、エリカの方か。


 エリカはその性格もあって、攻撃魔法をほとんど使わない。召喚魔法も、カエルなど無害なものしか召喚していないようだ。


 しかし、他方、先のリッチとの戦いで見せた獄炎。あれは学生レベルを遥かに超えた高等魔法だ。おそらく、学内には防御できる者すらいない。


 エリカは攻撃魔法を使えないのではなく、使いたくないのだ。


 あかりはエリカに聞いてみることにした。

 すると、エリカは自信なさそうな様子で答える。


 「わたしは……、誰かを傷つけるのが怖い。獄炎。あれは人を殺すための魔法。召喚も贄が沢山必要なものは、凶暴。やはり相手を殺すための魔法」

 

 なるほど。やはり、そういうことか。


 すると、メイが話し始める。


 「わたしのご先祖様はね。平民だったんだ。名前も昔はユーレアと言ったの。気が弱く、人付き合いが苦手だった。でも、魔法と出会って変わったんだって」


 「そうなの?」

 エリカは目を大きく見開き、少し口を開けた。


 「あなたの獄炎。わたしの家にも伝わっているよ。獄炎は、元々は、蝋燭に火をつける魔法だった。ご先祖様が言うには、この2つに要求されるのは同じ力なんだって」


 メイによれば、昔の魔女達は、あえて、自分たちを戒めるために、その力を蝋燭に火をつける生活魔法と定義したらしい。

 

 メイは語りかけるように落ち着いた口調で続ける。


 「……わたしは、どの魔法も生活を便利にし、人を守るために作り出されたものなんだと思う。人を殺すのは、魔法じゃなくてその使い手。誰がどう使うかが肝心なんじゃないかな」


 エリカは心の中では頷いていた。頭では分かっているのだ。

 だけれど、気持ちが前に動かない。まるで、碇を海底に引っ掛けてしまった船のように。


 「それでね。わたしのご先祖様のファミリーネームはユーレア。エリカのご先祖様のファミリーネームはフォーゲル。ユーレアとフォーゲルは、遥か昔、ラインライト王国の時代に、共に命をかけて戦った師弟でもあり、戦友なんだよ」


 メイはエリカの手を両手で握る。


 その様子を見ていたあかりは、本当に悠久の時をこえて、子弟が再会しているようだと思った。


 そして、メイはエリカの目を覗き込むようにして続ける。


 「……だから、わたしは貴女とこうして一緒に学べることが嬉しいんだ。わたしに力を貸してくれないかな?」


 エリカは、はにかむように頷く。

 そして、少し嬉しそうに、握られたままの手をメイの方に向けた。

 戦友という言葉が響いたらしい。


 メイはエリカに一冊の本を渡す。


 「これは、わたしのご先祖様が残した本。わたしには扱えないけれど、貴女には役立つと思う。しばらく、あなたに貸すよ」


 それはメイの家系に先祖代々伝わる魔法書。

 

 エリカは本をパラパラめくる。 

 エリカの目が輝く。知的好奇心を抑えられない。

 

 眼球は、ページをめくる何十倍もの速度で動き、脳神経は、そのさらに何百倍もの速度で情報を伝達する。


 10分ほどでエリカは本を閉じた。


 「本は返す。内容は全て覚えた。これを書いた人は天才。とても面白い示唆に富んでいた。これならば、今までの何倍もの効率で魔法を制御できるかもしれない。それに、あなたとわたしのご先祖様の想いも読み取れた。わたし頑張る」


 あかりは思う。

 『天才が書いた本を10分で暗記できる貴女も、相当な才能だと思うけれどね』


 よし、エリカは大丈夫そうだ。

 メイとあかりは胸を撫で下ろした。

 

 つぎは、あかりとエリカで模擬戦だ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングサイトに登録しました。 面白いと思っていただけたら、クリックいただけますと幸いです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ