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いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
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第56章 エルフの長老を守れ

 

 その日の夕食は、里をあげての宴をしてくれた。

 大きな葉(天狗の葉団扇かな?)に、数々の料理が並ぶ。


 野菜中心の料理が多いが、いぶき達にも配慮してくれ、肉料理もある。


 一口食べてみると、初めての味で美味しい。

 何のお肉か気になるが、エルフは肉食の習慣がないらしいので、怖くて聞けない。


 ……うん、知らない方がいいことってあると思う。


 宴もたけなわになる頃、いぶきはノアに呼び出されて外にでる。

 ユルタのようなシダや枝を積み上げた丸いテントを背にして、2人は夕暮れ時の森を見下ろしながら話す。


 ノアはいぶきの方を見る。

 「なぁ、お前、テスターだろ?」


 「うん」


 「おれもなんだよ。父上、いや、王は、テスターと現地人で協力してアビスに対抗すべきだと考えている。ただこの考えには、皆が賛成してくれている訳じゃなくてな。保守派の貴族のほとんどは反対派なんだ。

 だから、憂国騎士団にも付け狙われることになった。この前は迷惑かけて悪かったな。詳しくは王との謁見の際に説明されるとは思うが、お前らも協力してくれないか?」


 「難しいかも。詳しい事情は話せないけれど、アビスは、手に負えなくなる前に倒さないといけない。だから、あまり時間がないんだ。私とあかりは、謁見が終わったら南西を目指して旅をするつもりだよ」


 「そうか。こっちもルンデンだけの話しではないからな。おれは王の名代として、各地をまわり、テスターと現地人を取りまとめるようと思っている。お前らが旅をするなら、丁度いい。同行できないだろうか?」


 「……考えておく」


 きっと、いまの話は本心なのだろう。

 ならば、大筋においては同じベクトルだし、露払いにもなるので、男性の前衛職がいてくれると助かる。

 ノアなら寝込みを襲われる心配もなさそうだ。

 信頼できるし、断る理由はないハズだ。


 ……でも……。


 夕焼けに照らされるノアの顔は、凛々しく、そして、誇り高く見える。


 見ていると、頼もしくて少しドキドキする。


 いぶきは、はっとした。

 そして、今の気持ちを拭き消すように頭を振る。

 

 身体の性別に精神が引っ張られているのかな。


 これは……。


 男からみても惚れ惚れする、ってやつに違いない。

 同性の先輩に対する憧れみたいなもんだ。


 そうだよね?

 ……そうであって!!


 いぶきが自問自答していると、ノアが不思議そうな顔をする。

 いぶきは、空気感を変えたくて、憎まれ口のような声のトーンになる。

 「……考えておく。まぁ、でも、ノアがいてもあまり役に立たなそうだけれどね〜」


 「それ言われると、俺も弱いわ」

 ノアが頭を掻こうと、腕を振り上げたちょうどその時。


 ドンッ。

 地上で爆発音がした。

 

 いぶきは身を乗り出して、地上を覗き込む。

 「これは……。煙でよく見えないけれど、長老の家の近くで何かあったみたい」


 いぶきとノアは、長老の家の方へ急ぐ。


 腕力があるノアは蔓を持って、滑るように下りる。

 いぶきは、遠回りをして階段から降りた。


 ノアは叫んだ。

 「長老を守るんだ! もし長老に何かあったら、テスターのせいにされかねないぞ!」


 「彼方……より来たり……て、……此方へ過ぎ去りし……」

 いぶきは、息を切らしながら、加護の詠唱を始める。

 幸い、長老には会ったことがあるから、詠唱に必要なイメージが構築出来る。


 ノアはひと足先に長老の家につく。

 すると、ダークエルフが、左手で長老の襟を掴み上げ、右手のダガーで喉を突き刺す寸前であった。


 長老は左肩から大量の出血をしている。


 ノアは今は帯刀していない。

 そのため、ショルダータックルのような体勢でダークエルフを突き飛ばした。

 突き飛ばされたダークエルフは、すぐにノアにターゲットを変えた。

 ノアとダークエルフは掴み合いになる。


 すると、どこからともなく新たのダークエルフが現れ、長老に止めを刺そうとする。


 ノアは目の前の敵で精一杯で、そちらまで手が回らない。


 いぶきは、まだはるか彼方だ。



 絶体絶命

 


 ダークエルフは勝利を確信したのか、ニヤリとするとダガーを長老に振り下ろす。


 

 バチンッ!!


 その瞬間、ダークエルフと長老の間に雷の盾が割り込む。ダークエルフは金属のダガーから感電し、後方に吹き飛ぶ。


 あかりだ。

 

 そのまま、あかりとダークエルフは戦闘になる。ダガーと守刀の闘い。一瞬の油断が致命傷になる殺し合いだ。



 長老の目の前には、新手のダークエルフが地面から這い出すように上半身を現した。


 ノアもあかりも何もできない。

 いぶきは、まだ遠い。


 メイはまだ見える範囲には居ない。


 あかりが叫ぶ。

 「そいつらは影から出てくる! 影を消さないとダメ!」


 新手のダークエルフは(身体の半分はまだ影の中だが)動き出した。

 そして、右手に握ったダガーを長老の胸に振り下ろした。


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