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いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
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第50章 木霊の森で

 

 いぶきは夢を見ている。

 この前の夢の続きだった。


 会社からの連絡で戻ると、既にサーバーダウンの祭りは収束しかけていた。

 フォームのお問い合わせやメールが数百件たまっていたが、

 それらは、緊急性の高いもの以外は業務の合間に少しずつ返していくのだ。


 『戻ってくることなかったな』と言いながら、いぶきは休憩のために席をたった。

 すると、SEの山田に呼ばれる。部屋に入ると山田はPCの前で腕を組んでいる。


 何かトラブルかと思って、いぶきがどうしたのか?と聞くと。

 山田は何かを悩んでいるようだった。


 「チームで新しいゲームのAIを調整しているんだけれどさ。僕の受け持ちは緊急避難用の隔離AIなんだよ。メインがハッキング等でトラブルになった時でも、テスターやシステムを保護するするために独立して動けるAIなんだ。アバターもつける予定なんだぜ? ほら可愛いだろう?」

 

 そのアバターはいかにも山田が好きそうな小柄な少女だった。

 いぶきは、山田の話題に付き合う。

 「んで、このAIって名前あるの?」


 「え。ないよPC36」


 「いやいや、それは可哀想でしょ。アバターつけるなら名前もつけてあげようよ。例えば……」

 

 

 ……。

 …。

 

 

 「いぶきちゃん。いぶきちゃん……」

 再びあかりの声に起こされる。


 目を開けると、あかりとメイ、エリカ、アイラの4人が手足を縛られている。

 いぶきも手足を縛られており、身動きができない。


 メイは肩から血を流している。


 「ここはどこ? 山田は? あぁ、夢か。今はどういう状況? メイは大丈夫?」


 「大丈夫です。わたくし達はアガーテの手引きで捕まってしまったのです」

 

 どうやら、馬車でいぶきが寝てる間に、アガーテの手引きでダークエルフ数名に襲われたらしい。

 戦闘の末、ノアとエリカは負傷し、ノアは別の部屋に連れて行かれたようだ。


 空気が冷んやりしていて肌寒い。ここは、どこかの地下だと思われた。


 エリカが鉄格子を指で叩く。

 「カンカンいってる。簡単には壊れそうもない……」


 さて、どうするか。

 武器は奪われてしまった。

 簡単にここから脱出することはできそうにない。


 犯人の目的もわからない。

 アガーテが手引きしたということだが、王宮のメイドは、採用の際に相当念入りな身辺調査を受ける。

 貴族である必要はないものの、平民であっても両親の仕事から親戚関係まで、不審な点があってはならない。


 そのため、ハーフエルフの女性が王子付きのメイドになっていることに、やや違和感はあった。

 きっと、今回の騒動のために事前に潜伏していたのだろう。もしくは、何か弱みを握られているのか。


 ここでこれ以上考えても拉致が明かない。


 いずれにせよ、ノアをターゲットにした犯行であることは明らかだった。


 いぶきは、目を閉じると回復の加護(永劫回帰)でメイの傷を治す。

 エリカは初めて見るグロい光景に目を逸らした。


 先日、道で転んで膝を擦りむいた子供がいたので回復の加護で治療してあげた。

 そうしたら、怪我で泣かなかった我慢強い子が、治療のエフェクトに驚いて泣いたのだ。

 そののち親御さんがきて、感謝されることもなく「このエセ神を信奉する詐欺師が!」と追い払われた。

 

 トラウマを思い出してちょっと悲しい気持ちになったが、メイの傷が治ってよかった。


 まず、周りの状況を知りたい。

 すると、エリカが何か言いたそうにしている。

 「わたし、使役の魔法も使える。従魔に様子を見させてこようか?」


 さすが主席合格者。一味違う。


 すると、エリカは四つん這いになると、縛られた手で石ころを床に擦り付け、小さな魔法陣のようなものを描きはじめた。

 魔法陣が完成すると詠唱を始める。

 

 「星の煌めきに引き寄せられし小さき者よ。血の契りに応じ、ここに顕現せよ。五芒星の従魔(サモン•サーヴァント)」


 詠唱が終わると、エリカは右人差し指の先を食いちぎり、五芒星の中心にボタボタと血を垂らす。

 4人はその様子に顔を見合わせるが、エリカは平然としている。

 「驚かせた? これは従魔にあげる餌。大きなものだと沢山必要だけれど、わたしの従魔なら数滴で大丈夫」

 

 その割には、そこそこの出血量だったと思うが……。

 

 すると、魔法陣が光り、小さなカエルが召喚された。


 ケロケロ。

 ケロ。


 なんだかとっても頼りないんですけど、大丈夫?


 エリカはエッヘンとでもいいたげに胸をはっている。

 「問題ない。この従魔とわたしの意識は、完全に繋がっている。カエルが見たものはわたしにも見える」


 いぶきは素朴な疑問がわいた。

 「痛覚も共有しているの?」


 エリカはますます胸をはる。

 「そうだ。これで外の様子を偵察してくる。みんなわたしに任せるとよい」


 「カエルが潰されたら、主人も死ぬの?」


 「それはわからない。だが、潰されないから大丈夫」

 


 『なんだか全然大丈夫じゃなさそうなんですけれど……』

 

 不安で胸いっぱいな4人だった。

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