表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
52/75

第49章 強化合宿

 

 夜霧から朝霧にかわる頃。

 霧が立ち込める中、いぶきとあかりは早足に歩いている。

 

 あたりはまだ薄暗く、雀のさえずりもまだまだ控えめなので、レンガ敷を叩く2人の足音が周囲に響いていた。

 ちょっと申し訳ない気持ちになり、いぶきは小声になる。


 「ハァハア…。昨日、ちゃんと用意しておいたのに、朝になったら錫杖がどこかに行っちゃった。何でだろう。不思議」


 あかりは、あんな大きいものなくならないだろう、と心の中で突っ込みながらも答える。


 「ん〜。何でだろうね。錫杖もだけど、髪の毛もじぶんで結えるようになろうね?」


 時間がギリギリになった理由は錫杖だけではないのだ。

 

 

 集合場所に着くと、ノアとメイ、アイラが既に待っていた。2人は荷馬車の前にいる。


 いぶきとあかりが到着すると、ノアが御者台から誰かを呼んだ。

 

 「2人とも遅刻な。まぁ、もう1人来てないヤツはいるがな。こいつはアガーテ。今回、道案内をしてくれるハーフエルフだ。よろしくな」


 お互いに会釈をする。

 メイは心配そうにキョロキョロしている。


 いぶきが馬車の向かう側に目をやると、建物の陰にネコ耳が見えた。

 「エリカさーん。見えてますよ」


 すると、物陰からひょこっと小柄な少女が顔を出す。

 オドオドしているが、そのライトブルーの瞳には、以前とは違う力強さ感じられる。


 エリカはタタッとこちらにくると、猫耳のついたフードの穂先をギュッと握り、顔を隠すように引っ張る。

 フードパーカーの上には、ジャケットを着ている。一応、制服だ。


 その様子を見たメイは安心した表情をする。

 「みなさん。この子がエリカです。よろしくお願い……」


 ノアは、メイの言葉が終わる前にエリカの顔を覗き込む。

 「俺はノア。よろしくな。せっかく可愛い顔をしてるんだから、フードあげようぜ?」


 エリカは物音にビクつく子猫のような表情をすると、フードをさらに深く被ってしまった。

 

 しかし、ノアが後ろを向くと、エリカはフードを少しあげてノアのことを見ている。


 『これはもしかして。メイとの三角関係勃発か?』

 いぶきが俗っぽいことを考えニヤニヤしていると、あかりに頭をぽんぽんっとされた。


 一同は馬車に乗り込むと、精霊の谷を目指す。


 精霊の谷は、ローゼンと要塞都市サースの間にある。

 半日ほどの距離だが、途中、木霊の森を通らなければならない。


 木漏れ日で彩られる明媚な景色を眺めているうちに、いぶきは眠ってしまった。


 夢を見た。

 その中で、いぶきは夜勤中だった。

 夜勤の時は、日勤の昼休憩のような感じで1時間ほどのまとまった休憩時間がある。

 過ごし方は各々で、ゲームや仮眠をする人もいたが、外に食事に出る者が多かった。


 一日中モニターを見ていると、気が滅入る。

 だから、いぶきも休憩は努めて外に出るようにしていた。


 いぶきが気に入っていたのは、会社の裏にあったイタリアンだった。

 店に入ると、スタッフは大体見知った顔で、大きめのテーブルに案内してくれる。


 席に着くと、あえて「いつもの」という注文をしてみるのだ。


 自分でも把握していない「いつもの」。

 

 この「いつもの」についての認識がスタッフごとに違って実に面白い。

 大体は、手長えびのアメリケーヌソースというパスタと、ジンジャーエールが出てくる。

 しかし、ある時、バナナのスムージーだけが出てきたことがあった。

 みんな食事をしているのに、自分の前にはバナナスムージーだけが、どんっと置かれている。

 夢の中の自分は、それをすごく面白く感じ、同僚たちと腹を抱えて笑っていた。


 すると、携帯に着信が入る。

 サーバーが落ちてしまって、トラブル続出。クレームきまくりでオフィスは祭りになっているらしい。


 バナナスムージーを一気に飲み干し、自分だけ先に戻ろうと席を立った矢先。


 「いぶきちゃん!! いぶきちゃん!!」

 聞き慣れた声で、一気に夢の底から引き上げられた。


 『あぁ、夢か……』

 寝ぼけ眼を擦ろうとしていると。

 

 「いぶきちゃん!!」


 その緊迫した声で、一気に覚醒した。

 鼓動が速くなる。


 いぶきは反射的に、回復の加護の詠唱に入る。

 自分が叩き起こされる状況は決まっている。


 きっと、誰か怪我をしたのだ。

 誰が、どんな怪我をしたのかわからない。


 いぶきは目を閉じ胸の前に手を組む。

 あかりはいぶきを起こすと直ぐに外に飛び出して行ってしまった。

 

 空気が張り詰めている。

 馬車の中には自分1人だけ。


 外から、あかりの叫び声が聞こえる。

 「いぶきちゃん。怪我人はノアとメイ。程度は……」


 そこまで話すと、あかりの声が途絶えた。

 直後、後頸部に鈍い痛みを感じ、いぶきの意識も途絶えたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングサイトに登録しました。 面白いと思っていただけたら、クリックいただけますと幸いです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ