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いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
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第47章 エリカ・フォール3

 次の日も2人はエリカの家に行く。


 ノックすると、ドアをすぐに開けてくれた。

 エリカは、今日も猫耳のフードを深く被っている。


 エリカは頭を下げる。

 「昨日、よく考えてみたのですが、学内戦だなんて大それた事、やはりわたしには無理です……」


 ……予想通りの反応だ。

 

 いぶきは逡巡する。

 そしてこう切り出した。

 「この前の奇跡どうでしたか? あのウズラのタマゴからヒヨコが生まれるやつです」


 エリカの目が輝く。


 「あれどうやってやるんですか? 何かの魔法ですか? わたし、ずーっと考えたけれど分からなくて」

 

 「教えて欲しい?」


 「はい! 教えて欲しいです!」


 「ん〜。どうしようかな。あの奇跡はウルズの秘術だし……。じゃあ、こうしませんか? とりあえず対抗戦に出てくれたら教えます。勝てなくてもいいよ。あとはわたしがなんとかするから」


 「本当にいるだけでいいんですか?」


 「うん。いるだけでいい」


 「……わかりました」


 やった! とりあえずの目標は達成だ。



 すると、エリカが急に明るくなる。

 「わたし、2人が来たらどう断ろうかと悩んでたんです。正直、めんどうだなぁと」


 メイは一瞬、不快感をあらわにするが、いぶきが制止した。

 

 エリカは椅子から立ち上がった。

 「緊張が解けたら、トイレにいきたくなっちゃった。ちょっと席を外しますね」


 エリカが居なくなるとメイが口を開いた。

 「ちょっと、あの態度、失礼だと思いませんか? こっちは真剣に悩んで心配してるのに。あっけらかんとしてて、小馬鹿にされた気分です。あれで承諾するくらいなら、最初から参加してくれたらいいのに」


 いぶきはなだめる。

 「まぁまぁ…。参加してくれることになっただけで、今日のところは良しとしないとね」


 いぶきは従姉妹のことを思い出す。

 従姉妹も気が抜けると失言することが多かった。

 

 あの失言は、とりあえず目の前のハードルがなくなったことの安堵感の現れなのだ。

 そして、従姉妹は良くも悪くも自分の好奇心に忠実だった。


 それでエリカの好奇心を刺激してみたが、期待通りの反応だった。

 あとは、当日のドタキャン対策を考えるべきだろう。


 きっと、ギリギリになると抗えない嫌な気持ちに押し潰されそうになるのだ。

 

 エリカは戻ってくると、話しかけてきた。

 「あの。昨日、お母さんと話してくれてありがとうございました。お母さん喜んでました」


 「いえいえ。素敵なお母さんですね。お仕事は道具屋さんをしているとかで。エリカさんもお店を手伝ったりするんですか?」


 「わたしは人付き合いが苦手なので……。たまに商品の整理を手伝うくらいです。こんなわたしなのに、もったいないくらい良い親で。学費も大変なのに出してくれたんですよ」


 「それは立派なお母さんですね。あっ、そういえば、学内対抗戦って、優勝すると賞金もでるんですよ。頑張らないとね」


 「えっ。そうなんですか? それは……。弟も喜んでくれるかな」

 

 いぶきはニコッと微笑む。

 ずっと立ち止まっていたエリカが、前を向いて歩き出そうとしていることが嬉しかった。


 「詳細は、また話しに来ますね」

 そういうと2人はエリカの家を後にした。


 女子寮に帰ると、すでにあかりは寝ていた。

 毎朝、仏道修行があるらしく、あかりはやたら早起きなのだ。最近のマイブームは、断罪された霊魂の供養らしい。

 

 だから、遅めに帰って来たときは、いぶきは自分の時間を過ごすことにしていた。


 ササッとシャワーを浴び、ベッドに潜りこむ。

 そして、掛け布団を頭のずっと上まで被り、ひとりを満喫する。

 掛け布団からお日様の匂いがする。あかりが干してくれたのかな。


 相棒に感謝しつつ、今日一日を振り返る。

 

 エリカ。きっと今まで辛かったんだろうな。

 

 自分の特性が変えられず、社会も変わってくれないのなら。

 自分を大切にして、社会が必要にしてくれる高みに届くまで、全力で駆け抜けるしかないのだ。


 酸っぱい木苺が、アップルパイをより美味しくするように。

 

 『エリカはきっと、良い木苺になれる気がする。ブラックベリーとラズベリー。どっちかな』

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