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いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第三篇 首都ローゼン
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第39章 魔法少女への道 2

 

 『イジメだ』

 

 ———小学生の頃。いぶきにはイジメられた経験があった。

 

 何がキッカケだったろう。

 今では思い出せないくらい些細なキッカケ。

 それで運悪く、ターゲットにされてしまった。

 

 学校に行けば無視をされ、教科者には落書きされていた。

 幸か不幸か、勉強は不得意ではなかったから、先生が露骨に味方してくれた。


 しかしそれが反感を買い、ますますエスカレートしてしまったのだ。


 教科書の落書きは、やがて教科書の紛失に変わった。

 無視は、やがて存在の露骨な排除に変化した。


 孤独だった。

 

 学校には行きたくないが、親には心配をかけられない。

 

 学校にいけば、嫌がらせをされる。

 

 周りの子は見て見ぬフリをしている。無理もない。

 庇えば自分が次のターゲットになりかねないのだ。

 

 死にたい———。


 でも、明日は何か変わるかもしれない。

 中学生になれば、何か変わるかも知らない。

 自分がいなくなったら、きっと母さんが悲しむ。



 そして、今日もまたイジメられる。

 無感情に無感動に。

 さも死にかけの虫を弄ぶように弄ばれる。

 世界がモノクロになってしまったように感じた。

 


 そんなある日、変化が起きた。

 自分を蹴飛ばしていた子が、突き飛ばされたのだ。

 その子はビックリして唖然としていた。


 「なんなのアンタ達! よってたかって格好わるい!」


 クラスメイトの女の子。

 ちょっと勝気で乱暴な、近所に住んでいた子。

 自分の方を見てニカッと笑う。

 

 「もう大丈夫。遅くなってゴメン。おい、お前ら! またやったらワタシが許さないからな!」


 女の子に守られて情けなくなった。

 だからきっと、すくには助けずに今まで様子を見ていてくれたのだろう。


 だけれど、それ以上に嬉しかった。


 安堵した。


 救われた。


 世界が、鮮やかに色付いていくのを感じた。


 本当に困っている時に差し伸べられる手の有り難さは、身をもってよく知っている。



 ——あの時に誓ったのだ。自分もそういう存在になろうと。


 

 『あ、そういえば、あの時助けてくれた子。少しあかりに似てたな』


 そんなことを考えながら走る。



 しばらく追うと、その先は袋小路になっていた。



 先を逃げていた子は追い詰められ、数名の少女に囲まれている。

 「メイ。なんでこんなことをするの! やめて」


 追い詰めた方の中心にいる子はメイと言うらしい。


 「おい。呼び捨てにするなよ。いつ呼び捨てにしていいって言った? この平民風情が。少し成績がいいからって調子に乗ってるんじゃねーよ! 王子にも色目つかいやがって」


 「だって。入学式の後の自己紹介で、気軽に呼び捨てにしてね、って自分で言っていたじゃない」


 メイはさらにイライラする。

 「皆? 皆に平民が入っている訳ないでしょ。平民以外の皆という意味わかんないの? 馬鹿なんじゃない?

  これだから貧乏人は。あんたの親、裁断屋でしょ? この前、お母様の前でヘコヘコしてたわよ。

  情けない。平民にはプライドっていうもんがないのかしら。ああ、貴方のラストネームは、テイラーだもんね。

 ねぇ、アイラ テイラーさん」


 「お父さんの悪口をいうな!!」


 少女達は掴み合いになったが、すぐに、アイラは髪を持たれて、ひざまずかされた。


 やっと追いついたいぶきは、アイラとメイの間に割って入る。


 「貴女達、やめなさい!! 多数でよってたかって。恥ずかしくないの?」

 

 メイは下から睨み上げるような仕草をする。

 「はぁ? あんた誰? 邪魔しないでくれる?」


 すると、メイの取り巻きの1人が耳打ちする。

 「メイさん。あいつが着てるの神官服ですよ。きっと神官ですよ。やめといた方が……」


 メイは舌打ちする。


 いぶきは内心ヒヤヒヤだった。


 戦闘力ゼロのいぶきは、揉み合いになれば間違いなく一方的にやられる。

 だから、なんとしてもその展開は避けたい。


 『よし! あと一押しだ。ハッタリをかませば追い払える気がする』



 いぶきは、適当にそれっぽく詠唱を始める。

 「地獄の劫火よ……断罪の灼熱をもって……」

 

 そして、いかにも攻撃呪文風に腕を前に突き出し、円環陣を腕の周りに三重に出現させた。

 足元には五芒星を取り囲む円陣を出現させる。


 最近、いぶきの光芸はメキメキ上達しており、光で色んなものを描けるのだ。

 そして、念には念を入れて、掌の前に光の球を出現させる。光の球には紫電がほとばしっている。

 『あれ? なんか勝手に紫になった? 私の光芸もここまできたか……』


 すると、取り巻きの1人がまたメイに耳打ちする。

 「メイさん。あの聞いたことのない詠唱…、きっと噂に聞く、炎系の最上位魔法のインフェルノ? やばいですよ」

 

 メイは悔しそうな顔をする。

 「邪魔が入って興醒めしました。あなたたち、行きますよ」

 

 そして、仲間たちを引き連れてその場から去った。



 いぶきはアイラに手を差し伸べる。

 「大丈夫?」


 「あ、はい。神官様。ありがとうございました」



 すると、さっきの取り巻きの1人が戻ってきて、壁の陰から顔を出した。

 「やーい。ウルズの神官は詐欺集団! エセ神崇める詐欺集団!」

 

 いぶきはアイラの手を持ったまま振り返る。

 「おい! お前! ちょっとこっちこい! 詐欺もしてないし、集団でもないぞ!」

 

 いぶきは、怒鳴りながらメイ達を追いかけて行ってしまった。

 

 取り残されたアイラは首を傾げる。

 「ウルズの神官様ありがとう。それにしても、神官様が光を出してから、雷の上位精霊が集まってきている。本人に伝えなくて良かったのかな……」


 もう姿が見えない恩人に深々とお辞儀をすると、アイラもその場を離れるのだった。

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