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いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第二篇 旅をする意味
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第28章 別行動


 ハイネに戻るとケインはさっそくギルド会館にいき、クエストの達成報告をした。

 ドラゴンも倒したと力説したらしいが『Fランク2人連れててそんなこと出来るはずがない』とバッサリ斬られてしまったらしい。


 ドラゴンについては真に受けて詳細を調査されても困るので、いぶきはそれでいいと思った。


 翌日、あかりは爺さんのところに行くとのことだった。

 別れる前に何か渡したいものがある、という事らしい。

 『別れる』というと色恋話のようで若干気になるが、深入りしないでおこう。


 一方、いぶきの方は、ケインに夕食を誘われている。

 デートのお誘いかと思って警戒したが、アリアも一緒らしい。

 せっかくなので行くことにした。

 いつも神官服でつまらないなーと思い、あかりに相談したところ「デートなら気合い入れないとね!」と、時間がない中、色々と手伝ってくれた。


 いつもは、くるっと回して後ろでまとめる簡単な(簡単なら自分でやれよ、って話もあるが)髪型なのだが、今日は気合いを入れて違うのにしてくれるらしい。

 あかりは、後ろ髪を3つに分けると、右側の一本には白地に青いラインが入ったスカーフを添えて、手際よくスカーフと髪の毛を一緒に編み込んでいく。

 最後に余ったスカーフで片リボン結びを作って出来上がり。


 いぶきは『世の女性は、こんなことしてるのか』と感心してしまった。


 あかりが言うには、このように手が込んだ髪型でいくと、気乗りしない時に『丁重にお断り』する理由が増えるらしい。

 いぶきは『自分だったら、髪型を理由に断られたら凹むけどな』なんて思いつつ髪を纏めてもらう。

 

 そして、白のフリルが入ったスカートとカジュアルなトップスを見繕ってくれると、あかりは足早に出て行った。


 と思ったら、すぐに戻ってきた。

 

 扉の陰から顔をひょこっとと出すと「断る時は、お礼と謝罪を忘れないようにね! 初デートなんだから、ちゃんとお家に帰るように!」と言い残し、また出て行った。

 『なんだか、姉を通り越してママだな』と、いぶきは思った。

 


 あかりが準備してくれた服をきて外に出る。



 いつもと違う服を着て歩くと、いつもの街並なのに、いつもと違う見え方がして気分がいい。

 

 5分程歩いて指定された店に行く。

 店の外には彫刻の入ったランプが掛かっており、店内からは淡い光が漏れ出している。

 看板には『暖炉の兎亭』と書いてある。

 『へぇ、こんなお店あったんだ』と思った。


 少し重い木の扉を開けると『カラカラン』とベルの音がする。

 店に入ると、ウェイターが予約の名前を聞いてくれる。

 いぶきが答える前に、店内にいたケインが手を挙げた。


 いぶきがそちらに向かって歩くと、皆、食事の手を止めいぶきを目で追う。そして、ゴソゴソと何か話すのだ。

 

 ケインはイブニングコートっぽいスーツを着ており、アリアはえんじ色のドレスを身に纏っている。

 いぶきは『神官服で来なくて良かったな』と思った。

 

 ケインは「おーい、こっち」というと、スッと私の椅子をひいてくれル。

 全員が席につくと、まずはワインで乾杯した。


 グラスをテーブルに置くと、ケインは、銀貨が詰まった布袋をその横に置いた。

 「これ、この前らの取り分。あかりと2人分一緒にしちゃったけど、いいよな?」


 いぶきが『どうやって持って帰ろう』と悩んでいると、ケインは「あっ、ドレスだし持てないよな。ごめん、気ぃ利かなくて。後で宿に届けるよ」と言った。

 いぶきは『宿にケインを連れて行ったら、あかりにどんな勘違いされることやら』と思い丁重に断る。


 「さっきはお疲れ様! あかりが来れなくて残念だけど、今日は俺のおごりな」


 料理は、あえて分類するならカジュアルフレンチに近いもので、高級な食材は使っていないが港街らしく魚介をふんだんに使った満足感のあるものだった。

 いぶきは中でもメインで出てきた『鯛のポアレ〜雲丹クリームと季節のキノコを添えて〜』が気に入り『こんど、あかりと来よう』と思った。


 食事をとりながら話を聞くと、ケインとアリアは、次は南に行くとのことだった。

 なにやら南にはサースという城塞都市があり、そこで傭兵でもして自分達を鍛え直したいのだと言う。

 アビスについては、いつかはどうにかしたいが、それは自分達でなくともいいと思っている、とのことだった。

 

 いぶきは『死んだら終わりのこの世界では、それが普通なんだろう』と思う。

 彼らはドラゴンに立ち向かったのだ。十分に勇敢だし賞賛されるべきだ。

 

 いぶきもサースに誘われたが、目的の方向と違ったので断った。

 話のメインはそれだったらしく、コースを終えるとお互いの出会いに感謝し、そして別れを惜しみつつ、そのまま解散する。


 あの2人には、きっともう会うことはないのであろう。

 一日行動を共にしただけだったが、これが最後かと思うと、食事の時間がとても愛おしいものに思える。

 

 いぶきは『ほんとうに一期一会だな』と思った。


 宿に帰ると、先にあかりが帰っていた。

 あかりは、いぶきの話を聞きたそうだったが、あかりの話から聞くことにした。

 

 あかりは話しはじめると、一振りの短刀を見せてくれた。


 それは、黒の漆塗りに金の彫り込みが入っている美しい短剣だった。

 所々に藤の装飾が施されており、銘は不明だが、号は『藤隠れ』と言らしい。

 あかりがいうには、藤には『葛藤』という意味があるらしく『魔に惑わされず、己の道を全うできるように』との願いが込められているとのことだった。


 いぶきは刀剣には詳しくないが、一見して名刀ということが分かる逸品だった。


 爺さんが普段使いしている短剣だったのだが、あかりがいつもジロジロ見ていたら餞別でくれたらしい。

 それとこの刀だからできる小技があるらしく、いずれ実践で披露するとのことだった。


 爺さんのあかりへの可愛がり方は凄まじく、孫気分なんだろうなーと思う。


 他方、いぶきの方は大した話がある訳ではないのだが、あかりは興味津々らしく、根掘り葉掘り聞き出したがる。

 どうやら、あかりはアリアの存在を忘却しているらしく『告白された?』とか、『いつからそういう感じだったの?』とか、ひっきりなしに聞いてくる。

 

 いぶきは、適当に盛った返事をして、からかってやろうかと思ったが、変に刺激して愛のキューピッドに変身されても困るのでやめとくことにした。


 興味がない話しになってきたせいか、

 いぶきは抗えない睡魔に襲われ、目を瞑った。


 

 明日は、ローゼン行きの定期船出航がでる日だ。

 ゆっくり休むことにしよう。


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