表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いぶきとあかりの異世界回想録♬  作者: おもち
第二篇 旅をする意味
23/75

第23章 双剣の少女 2


  敵っ!?


 いぶきは咄嗟に錫杖を構える。

肉弾戦は最弱のいぶきだが、無抵抗で切り刻まれるつもりはない。


 銀髪の少女は右手の剣を振り上げると、左下に向かって袈裟斬りのような軌跡で斬りつけてきた。

 いぶきは錫杖で受け流す。金属音が鳴り響き火花が飛び散る。


 いぶきは左手を前に出し防御魔法を……。

 『あっ、私、防御魔法ない』と気づく、いぶき。


 

 とりあえず、直感のままに後ろに飛び退くことにした。

 その刹那、少女の返す刀の斬撃が空を切る。


 すると、どこからか

 

 「そこまでっ!!」


 という声がした。

 あかりの声だ。あかりは、いぶきと少女の間に割って入る。


 銀髪の少女は、あかりを見るなり舌打ちすると、

 「明日のクエストに行くのはやめろ」と言った。


 そして、山岳部を駆ける野生のヤギのように、軽快な身のこなしで走り去って行った。


 いぶきはあかりに「ね? 見た? わたし戦えたよ。1人でも避けたりできたよー!!」と嬉しそうに言ったが、あかりは真剣な眼差しで周囲を警戒している。


 そして、いつになく真面目な表情で言った。


 「いぶきちゃん、気づかなかった? かなり手加減されてたよ。あの子が本気だったら、一撃目で、いぶきちゃんの首はなくなってたと思う」


 いぶきは、絶句する。


 少しは成長したと思ったのに、手加減されてたことにすら気づかないなんて、ちょっとショックだった。

 そして思った。『さっきの子、クエストに行くな、とか言ってたけど、なんで私がクエストに行くの知ってたんだろ。

 あの食堂で会った2人ののライバルとか? それか私のファン? だとしたら、ちょっと愛が重すぎるぜっ』と。


 あかりは、いぶきが呑気にそんなことを考えていると気づいたのか、すこし強い口調で「わたしたち魔法職は、詠唱が必要な分、近接戦闘は圧倒的に不利なの! 次からはすぐに逃げること! わかった?」と言った。


 いぶきは、心の中で『あなたは近接でも普通に強いでしょうが』と思ったが、言い返すと言葉の暴力で泣かされそうだったので、「わかりました! 姉様!」と返事をした。


 そう。いぶきは、最近はあかりのことを『姉様』と呼ぶことがある。

 普段から色々とお世話をしてくれるのだ。

 朝起きて顔を洗うと髪を結ってくれるし、食後、口の周りにソースがついていた時も拭いてくれる。

 その他にも色々。


 そのため、いぶきは、随分年下と思われるこの少女を、姉のように感じる時が多々あった。

 あかりの方も思うところがあるらしく、いぶきを『いぶきちゃん』と呼ぶことが多くなった。

 

 2人は顔を見合わせて笑うと、一緒に宿に帰ることにした。

 

 宿に戻ると、2人は早々に食事を済ませてベッドに潜り込む。

 明日は、食堂で会った彼らと約束した日なので、身体をゆっくり休ませる必要があった。

 眠るまでの僅かな時間、いぶきは、あかりに爺さんとの修行の成果を聞くことにした。


 まず、セクハラはされなかったということで一安心した。

 スキルについては、どうやら無事にコツを掴めたようだ。

 あかりが言うには、仏士がスキルを使うには、普段から【法力】を貯めておく必要があるらしい。

 そして、法力は、寝たら回復するという類のものではなく、普段から仏道修行(読経)することで数珠にチャージされるとのことだった。


 一緒に行動をはじめてから、あかりがお経を読んでいた気配はなく、そのため法力不足でスキルが使えなかったらしい。

 法力については、爺さんと沢山お経を読んだから、今は満充電ということだった。


 そして、これは私にも関係あることなのだが、魔法スキルの使用には、簡略詠唱と完全詠唱の2つの方法があるらしい。

 簡略詠唱では、一言か二言でスキルが発動するかわりに効果が限定され、完全詠唱では、その魔法が本来もつ効果が発揮されるが、時間がかかるとのことだ。

 そして前提として、簡略詠唱には詠唱全文を暗唱できる必要があるので、初めての時はできないとのことだった。


 あかりは、まだ色々と話したそうだったが、いぶきは抗えない眠気に襲われて、そのまま目を閉じたのだった。



 次の朝のまだ薄暗い頃、いぶきとあかりが少し遅れて待ち合わせ場所にいくと、ケインとアリアはすでに待っていた。

 ケインはチャラい割には時間には性格らしい。


 合流すると、ケインは早速本題に入った。

 「前も話したけれど、俺はケイン、そいつはアリア。戦士と格闘家だ。2人はギルド登録はしてきた?」

 「なら、カード見せて。ふむふむ、2人とも【Fランク】か。意外だな。まぁ、今回のクエストは初心者向けだから大丈夫」

「俺とアリアは【Eランク】だし。目的地まで少し距離があるから、詳しいことは歩きながら話すよ」


 そこまで話すとケインは歩き出す。


 あまりに情報が少ないので、いぶきが「どんな内容のクエストですか?」と聞くと、ケインは足を止めることもなく言った。

 「ん? ゴブリンの討伐だよ。だから、今はゴブリンの巣穴を目指してる。この前、様子を見てきたんだけれどさ。人間なら1人通るのが精一杯のしょぼい穴だったよ」

 「入口小さいし、どうせ中も狭いでしょ。俺らダンジョンの経験ないけどさ。きっと洞穴みたいなもんだし。高位神官様もいるし、余裕だろ?」


 いぶきは思った。


 ——こいつ、私らのスキル詳細も回数も聞かずに、余裕とかマジで言ってるのか。神官でも回復魔法使えなかったらどうするんだよ。

 ——それに、【ゴブリン】、【巣穴】、【ダンジョン未経験】、【即席パーティー】だって? 死亡フラグ立ちすぎ……。


 いぶきは激しい不安感に襲われ、心の中で誓うのだった。


 『最悪の場合でも、あかりだけは絶対に死なせない』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングサイトに登録しました。 面白いと思っていただけたら、クリックいただけますと幸いです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ