第20章 冒険者ギルド 2
いぶきとあかりは、言われるがままにカードに名前を書こうとする。
するとモヒカンは「あ、一応。この規約にも目を通してね」と言って、A4サイズくらいの紙を一枚差し出した。
規約には色々と箇条書きになっていたが、要約すると
【自己申告に嘘はありません】
【私は貴族及びその子弟ではありません】
【死んでも文句いいません】というような事が書いてある。
この子弟のくだりは、後からクレームが出ないためなのだろう。
「読んだら、忘れずに右下にサインね」とモヒカン。
モヒカンの口調が随分と支離滅裂な気はするが『きっと、これが素の彼女なのね』ということで、いぶきは気にしないことにした。
いぶきとあかりは、規約に目を通すとサインをした。
次いで、ギルドカードにも記入する。
カードは、名刺より一回り大きいくらいのサイズで、表面に【名前】、【クラス】、【ランク】の欄、それと発行ギルド名があるだけのシンプルなものだった。
いぶきは、モヒカンに「このランクってなんですか?」と聞いた。
すると、ランクは冒険者の強さの目安で、AからFまで6段階あり、基本的に新入りはFから始まるとのことだった。
今まで世界で数名しかいないが、実は、Aの上にはSというものがあって、強くなるほどSの数が増えていくらしい。
あくまで目安だが、Aは1人でドラゴンと渡り合えるレベル、Eで1人でゴブリンが倒せるレベルらしい。
基本的には、功績をたてるかクエストを受注することで上がって行くということだった。
モヒカンは「なんでもいいから、早く書いてちょうだい」と急かす。
いぶきのイメージでは、ランクは測定器等で決めるものだったので、モヒカンに「ランクも自己申告なんですか?」と聞くと、自己申告で良いとのことだった。
なんでも、ランクに嘘を書いても死ぬだけだし、依頼人も冒険者が死んでも気にしないので、特に問題はないとのことだった。
いぶきは「ふーん」と思い、Fと書こうとする。
すると、モヒカンが「ちょっと待って。その神官服。上位神官でしょ? だったらBが相当かしらね〜。あ、でも『ウルズ』の神官なのね。ならFかしらね」と言った。
いぶきは、さすがに聞き捨てならない、と思いクレームを入れた。
モヒカンは言い返す。
「だって、ウルズ神官って不人気すぎて絶滅危惧種なのよ? 奇跡だって大したの使えないし。中身も実用性のない日用魔法のオンパレード。十数年前に来た神官なんてさ。『未開封のおみくじを2つ並べると、どっちのおみくじが大吉か分かる奇跡』を披露しててさ。ワタシ笑っちゃったわよ。運試しをカンニングしてどうするのよね〜。そおくせ、『運命の蝋燭』なんてのをバカ高く売っててね。詐欺で自警団に追われて、どこかに逃げて行ったわよ」
それを聞かされると、いぶきも『いかにも、ありそう』とおもってしまい何も言い返せなかった。
いぶきは思う。
『私のスキルは【加護】って呼ぶよね。【奇跡】とは違うのかな。でも、大吉を当てる方が、見方によっては奇跡だよね。まぁ、きっと、おみくじ当てて、皆で、わあわあ言ってる傍で、ウルズはニコニコして見守ってたんだろうな』
ウルズと一緒に、無限の過去を巡ったいぶきには分かってしまうのだった。
——彼女の憂いも、慈愛も。そして、悲しみも。
2人はカードを書き終えた。
あかりのスキルの謎が解けていないので、いぶきはモヒカンに聞いた。
「あの〜、クラスを測定する機械とかないんですか?」
モヒカンが言うには、クラスを測定する水晶があるらしいが、クラスもランクも自己責任の自己申告制なので、活用する機会がないらしい。
すると、モヒカンが水晶をもってきてくれた。
『髪型に似合わず、意外にいいヤツだな』といぶきは思った。
なんでも、水晶は他者がいない暗室でしか使えないらしい。
モヒカンに水晶を設置してもらい、まずは、いぶきが暗室に入り手をかざした。
すると、水晶の表面が一瞬光り、【クラス:高位神官】【ランク:B】【未開放スキル:有】【パラレルクラス:解析不能】と浮かび上がって来た。
どうやら、未開放スキルの有無まで出るらしい。
———パラレルクラスも表示されるとは。
いぶきは、暗室に1人で良かったと安堵した。
さすがに未開放のスキル名までは出ないようだが、なかなかの高性能っぷりだ。
数十秒すると、今度は水晶に
「水晶組合の規定により、お客様の個人情報は測定のためだけに利用されます、安心安全のため、測定後は全て抹消されます。ご安心ください」と浮かび上がる。
水晶組合がなんなのかよく分からないが『隅におけない高性能』といぶきは評価することにした。
『未開放スキルって何だろうな〜』と考えながら、いぶきは暗室を後にする。
暗室を出ると、あかりが待っていた。
あかりは、少し不安そうに「どうだった?」と聞いてくる。
いぶきは「特に怖いことはなかったよ。自称、安心安全な機械らしいから大丈夫」と答えた。
すると、あかりは、「自称って…」とブツブツ言いながら頷くと、暗室に入って行った。




