第19章 冒険者ギルド 1
いぶきは歩きながら、あかりのスキルについて確認することにした。
まず、クラスインフォメーションの内容について、あかりに「クラス説明の下に『スキル』欄はある?」と聞く。
あかりは首を横に振る。
いぶきは考える。
『魔法使いじゃないにしても、何かしらの物理スキルはあるはずだ。何も表示されていないってことは、まだ何も覚えていないだけなのか?』
続けて、いぶきは、「盗賊を倒した時の技は? 何かのスキルじゃないの?」と聞いたが、あかりが言うには、現実世界で覚えた短刀居合の技とのことだった。
いぶきは『現実であれできるの? この人、こわっ』と別の意味で驚いた。
推測の視点を変えてみる。
例えば、いぶきの場合は、回復を強く念じると、聖典の触媒が出現する。
あかりの場合は、そもそも自分がどのスキルを使えるのかすら分からないから、何を念じていいのかも分からない。しかも、触媒になるアイテムが何なのかも不明だ。
『お手上げだな』
なんとか1週間後までに、あかりに魔法を覚えさせないと、とんだ経歴詐欺ペアになってしまう…。
ギルドネットワーク(あるか知らんけど)で指名手配されたりして、パーティーメンバーも探せなくなって、アビスの討伐もあかりと2人になって。
布装備の後衛2人パーティーでラスボス討伐。いやぁ、無理ゲーすぎるでしょ。
……などと、いぶきの頭の中では、不幸な連鎖の想像が広がるのだった。
小さい街なので、そうこうしているうちに目的地のギルド会館についた。
そこは木造二階建ての古びた雰囲気で、いかにも腕っぷし自慢の荒くれ者がいそうな建物だった。
ギィ……。
いぶきは、鉄板が打ち付けられた重い木の扉を開ける。
中は、向かって右側はバーカウンター、左側がギルド受付のようだった。
受付には人がおらず、カウンターには木製ジョッキでビールを飲む冒険者らしき大男が1人いる。
男はソフトモヒカンのような髪型をしており、動物の毛皮を雑に縫い付けただけの簡素なベストを着ている。
男は、いぶき達に気づくと、こちらを睨みつけた。
そして、無精髭を生やした口元を気だるそうに開き、低くざらついた声でこう言うのだ。
「地獄の一丁目にようこそ、お前らも死にたがりのバカどもか?」
それを聞いて、いぶきは『テンプレートきたきたきたー!!』と内心大はしゃぎだった。
こんなベタなNPCがいてくれて、ほんと嬉しい、と思う。
男は、おもむろに立ち上がると、左側の受付カウンターに移動した。
そして、突然、事務的な口調になり「新入りですか? ここに名前を書いてください」と言った。
そのあまりの温度差に、いぶきは思わず『えっ?』と口に出してしまう。
そして、心の中で、
『おーい、さっきまでのワイルドさはどこいったー? って、このモヒカンが受付なの?
この人で大丈夫ですかー?
いま、何かお酒みたいなの飲んでましたけど!! なんかコレが私らの利害関係人だとちょっと困るんですが』
と激しく突っ込むのだった。
いぶきは心の底から女神ウルズに祈った。
『女神様、この人、チェンジでお願いします!!!!』




