第18章 港町ハイネ 2
いぶきは、不機嫌そうな口調で「だから何?」と返す。
あかりはその口調が意外だったらしく「いぶきちゃん、お腹痛いの?」と心配そうにしている。
もちろん、いぶきは体調が悪かった訳ではない。
ただただ、女性である今のうちに『上から目線のそっけない女』をを演じてみたかったのだ。
話しかけてきた男は、全く意に介する様子もなく続ける。
「俺はケイン。戦士をしている。あっちのはアリア。女格闘家だ。見ての通り、筋肉系のアンバランスパーティーでさ。手伝ってくれるヒーラーを探してたんだ」
いぶきは肩透かしを食らい、つまんなそうに答えた。
「私達は、いぶきとあかり。見ての通り初心者だけれどいいの?」
ケインは続ける。
「全然OK。俺らも初心者だしさ。見たところ、そっちの黒髪の彼女はバッファー?」
ケインは捲し立てるように続ける。
「つーか、金髪のキミは高位の神官っしょ? 神官は初級どころか高レベルのボス討伐でも取り合いだよ? いやぁ、入ってくれたらマジ嬉しいわ」
その軽い口調が、いぶきをイライラさせる。
いぶきは思った。
『こういう言い方されるとマジでムカつく。こっちは名前教えてるんだから、名前で呼べよ。
なんだか今更ながらに女の子の気持ちが分かる。ほんとないわ〜。気に入らないから断ろうかな』
すると、あかりが即答してしまった。
「いいよ! わたしたち暇だし。さっきもいぶきちゃんと暇潰しの方法について議論してたの。ね? いぶきちゃんもいいよね?」
いぶきは『また、いつもの安請け合い』と思ったが、レベル上げにもなりそうだし、しぶしぶ了解することにした。
ケインによると、ここハイネには冒険者ギルドがあり、いぶき達がクエストを受けるには事前にそこで冒険者登録をする必要があるらしい。
「出発は7日後だから。日の出の頃に、この店の前で集合な。メンバーはうちらとそっちの計4人。んじゃあ、そういうことで〜」
ケインは一方的に言いたいことだけ言うと出ていってしまった。
いぶきは、ケインを追って席を立とうとする。
クエストの内容や準備するアイテムについて知りたかったのだ。
しかし、『初心者クエストっぽいし、追いかけるほどじゃないか』と思い、いぶきは追いかけることをやめた。
いぶきたちは店を出ると、さっそく冒険者ギルドに行くことにした。
道すがら、あかりが聞いてくる。
「ねぇ、いぶきちゃん。さっきの人が言ってたバッファーって何?」
「バッファーは補助術者のことだよ。パーティーメンバーの力を強くしたり、素早くしたりね」
あかりは、あごに指をつけて不思議そうな顔をすると、素朴すぎる質問をした。
「わたしって魔法使えるの?」
いぶきは思わず、すっとんきょうな声で、
「え? あなた魔法つかえないの?」と聞き返えしてしまった。
あかりは、両頬をリスのように膨らませる。
「わたしが聞いてるんですけど〜?」
今のいぶきには、そんなあかりのご機嫌をとっている余裕はない。
いぶきの頭の中は大混乱中なのだ。
『え、「仏士」って魔法えないの? なんか使えそうな雰囲気プンプンなんですけれど? いや、でも、あかりに聞いたクラス説明でも、魔法が使えるとは一言も言ってない……。え。じゃあなに。あかりは短剣職のアタッカーなの? 言われてみれば、短刀術、普通に強かったよね……』
ここまで考えが至ると、いぶきはさっきの何倍も大きな声で叫んだのだった。
「ええええーーーーーーっ?!」




