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エイル襲来

 

「あはっ」


 芹沢さんの動きを見て楓ちゃんもまた手に刀を取り出した


 芹沢さんは空を見上げる


「あら?この辺りに軍隊マーロットの大量発生情報があったはずなのだけれど」


 と空からいかにもお嬢様風のセリフが聞こえてくる。『ですわ』ではないが高貴そうな口ぶりである。

 私たちもその声の方へと目線を向ける。


 空には中世貴族が来ているようなフリフリのスカートに背中が全開のドレスを着て、大きな帽子を被った少女が浮いていた。


「ひょっとしてあなた方が倒してしまったの?」


 そのままスタンと地面に降りてきた。ふりふりのドレスが捲れないようにばっと持ち上げると芹沢さんをいたずらそうに見上げた。

 芹沢さんは参ったとばかりに刀をしまった。それを見て楓ちゃんはつまらなそうに刀を手から消した


「私は芹沢と申します…少し遭難していまして助けていただけると」

「わたくしは倒したのはあなた方?とお聞きしたのですよ?」


 そう言うと彼女は笑い、一歩下がるとスカートの端を摘みお辞儀をした。

 ものすごく美しかった。

 可愛いなんて感想は出てこなかった


「わたくしはエルと申します。ギルド、『サドマ』に所属しています。よろしくお願いいたしますわ、そして意地悪してごめんなさいね、状況を見ればわかりますわ」


 そう言って楓ちゃんに目線を流す。その目線に合わせないように楓ちゃんは顔を背けた。


「あの、そこのフリフリの嬢ちゃん」


 塚本さんがそう言うとエルはピクッと口角を少し上げた。

 この人は何というか空気が読めないのだろうか?


「あら、そこのダンディなおじさま、何かご質問でも?」

「いや…とりあえず街に案内してくれ」


 そう、塚本さんが言うとさらに口角が吊り上がった

 確かに刑事からすれば普通は協力してくれると考える。普通の日本人は人の命を奪うことに関しては抵抗があるはずなのだ。

 しかし、ここは異世界だ。そんな日本の常識が通用するはずがない、ここで相手の神経を逆撫ですれば協力関係なんて得られないかもしれない


「…私がサドマに入ってなければぶん殴ってましたわ、ですが、いいでしょう、風貌を見るに異世界人のようですので、そこの失礼なおじさまも」

「…すまねぇ…」

「ふむ…しかし、この人数は面倒臭いですわね…」


 エルはそう言うと空間に手を向ける。その瞬間、次元が裂けて、その裂け目の中から浮遊する絨毯のようなものが出てきた


「おぉ、すごい!」

「骨董品ですがまぁ、移動する分には十分でしょう…そろそろわたくしも車を買ったほうがいいのかしら…」


 塚本さんはホームズをその絨毯の上にのっける


「おぉー!なんか不思議な感覚ですよ!」


 ホームズは若干興奮しながらそう言う、そして恐る恐る楓ちゃんが絨毯に触れる。


「…言葉が出ない…この外国の畳を浮かすなんて…」

「外国の畳!」


 絨毯ってそう言う認識なの!?


「あら、面白い表現をいたしますわね、ヤマトの床材ですわよね?」


 て言うか普通にですわキャラだった。


「あれ?向こうの方なのに日本語がお上手なのですね?」


 楓ちゃんは首を傾げながらそう言う

 さっきロディアが教えてくれたはずなのだが…


「…あぁ!翻訳魔法のことですわね、常に発動しているので忘れてましたわ、一度切ってみます?」


 そう言った瞬間、全く知らない言語が耳に飛び込んでくる。

 ていうか、ですわ口調とかの補完ってどうなってんの?


「と言うことで」


 エルはそう言うと絨毯に飛び乗る。そして私、楓ちゃん、芹沢さん、塚本さんの順に乗り込んだ


「じゃあ、いきますわよ」


 その瞬間、ものすごい速度で絨毯が飛び上がった。しかし、不思議と空気抵抗を感じずに普通にすごせている


「…エルさん、あなたひょっとしてどこかの貴族の方?」

「えぇ、ローア王国の貴族の娘ですわ、本名はエアル・フォルテですわ、しかし、今はギルド『サドマ』の一員として話していますわ」

「サドマ…とは?」

「そうでしたわね…この世界について何も知らないのでしょう、街に着くまでに間に少し説明しておきますわ」


 そう言うとエルは話し始める。


 要約すると

 この世界には様々な国があり、この場所は極東の島国「ヤマト」である。

 ヤマトはここ数年で内乱がおわり、政治が新体系となった。

 驚きなのは新体系になっても大した乱れも起きず逆に今まで国交を断絶していた他の国に対してアプローチをし始めた


「明治維新みたいだね」


 私が楓ちゃんに同意を求めると楓ちゃんは首を傾げる


「すみません、異世界のあたりから理解できないので話半分でした。なんです?」

「いや、なんでも…」

「続き行きますわ」


 この世界には二つの永世中立組織が存在する。二つとも世界の中心に存在し、他の国の戦争や思想宗教を自由とする組織、それが中央魔法学院と冒険者組合だ。

 中央魔術学院はその名の通り魔法使いや魔女の育成機関、世界中の優秀な魔法使い達の卵がそこに通う

 そして冒険者組合、これは世界中の人間の生活の平等を支えるために作られた組織だ。各国に支部を置き人々の生活を支えている


「そして最近、組合は新たな方針を定めたのですわ」


 それは中央組合、世界中を飛び回ることのできる選りすぐりの冒険者達


「しかし、彼らは管理が大変ですわ。とにかく我が強くて…」


 そこで取り入れたのが「ギルド」

 求心力のある冒険者がギルドを結成し彼らをリーダーとしその名の下に中央冒険者を所属させる仕組みを作った。それがギルド


「で、わたくしはその中でも一番と名高い『サドマ』に所属しているのですわ」


 とのことだった。用は説明を使った自慢だった。


「なるほどな…まぁ、なんとなくはわかった。他にもあんのか?そういうギルド」


 塚本さんが興味ありそうな形で首を突っ込む


「ありますわ…例えば我が国の国王がリーダーである。『キング』が二台巨頭とされていますわ。…それと、最近勢力を強めているのが『パング』ですわね…」


 少し嫌そうな顔をしながらそういう


「まぁ、なんにせよ今のあなた方にはあまり関わりのない話かもしれませんわね」

「そう?私、あなたに負けると思えないけど」


 そう、発破をかけたのは楓ちゃんだった。楓ちゃんの目はぎらついていた。まるで獲物でもみているかのような目だった


「あら、それは嬉しいわ…ですわ、しかし、実力というのは名声あってこそ、だから今のあなた方には関係ないと言ったのですわ。勘違いしないでほしいですわね」

「…ごめんなさい」


 楓ちゃんはそう謝った。

 この人マジでしっかりしてる。なんというか風格がある。正直悪いけどポッとでの力を身につけただけの楓ちゃんに勝ち目はないだろう


「さて、そろそろですわ」

「そうですか、ありがとうございます」


 さっきまで黙っていた芹沢さんがそう言う


「いえいえ、礼には及びませんわ、けどサドマのいい噂を流してくれると助かりますわ。リーダーの為に」

「ひとつ、気に食わないことが…」


 ぶっ倒れたホームズが首だけ動かしてエルに向く


「なんですの?」

「力…ですか?この世界は…」


 しばらくエルはポカンとしていたがすぐに笑い始めた


「そんなわけないでしょう、あくまで冒険者組合は力です。商業組合なども中立ではなく存在しています。あそこは資本的ですからね」


 そう言うとエルは絨毯を急降下させた


「世界に必要なバランスは武力ですわ。商業などは競い合ってこそですわ、世界が滅びないように強力な力は人類全員で共有する必要がある」


 そして地面に降り立つとホームズに手のひらを向ける

 その瞬間、赤い光がホームズを包み込んだ


「魔力をわけましたわ、動けるはずです。しかし、初見で不発とはいえトータルリレアズで魔力を出し切るとは才能があるのだがないのだか…」


 それを聞いて塚本さんがピクッと動いた


「ひょっとして見てたな、フリフリの嬢ちゃん」

「あら、バレました?」


 悪戯そうにエルは笑う、しかし悪びれる様子もなく再び深くお辞儀をした


「では、ご縁があればまた会えるはずです。それまでお達者で」


 その瞬間、エルの体が真紅の光に包まれ消えてしまった


「嵐みたいな嬢ちゃんだったな…」

「そうですね…」

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