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異世界?

 


「おい、嬢ちゃん、目覚ませ」


 パチパチという変な音と頬を伝う衝撃で私は目を覚ました

 目を開けると、見知らぬ男が私のほおを叩いていた


「ちょっ!女の子の顔は!」


 と起き上がった。そしてそこで異様な光景を見た。

 そこには数人の人たちが談笑したりあたりを見渡したりしていた。

 それより異様なのが先ほどまで電車に乗っていたはずなのに、私の視界には幻想的な草原が広がっていた。


「???」


 私はキョロキョロとあたりを見渡す。しかし、やはりどこを見ても電車の中ではなかった


「とりあえず嬢ちゃんで全員だ」


 おじさんは立ち上がり周りを見渡す。

 おじさんはスーツとコートを着ており胸には赤いバッチがついていた


「皆さん、パニックにならず、落ち着いて現状を受け止めていただきありがとうございます。私は警視庁捜査一課の塚本和輝と言います」


 そう言って男は警察手帳を見せた。私は状況が飲み込めずに周りの人を見渡した

周りには、数人、道着に竹刀袋を担いだ女性と病人服の女の子、ドレスみたいな青い制服を着た女の子、そして警察手帳を掲げ、スーツを着た中年のおじさんがいた。

そしてこの場の音頭をとっているのはその警察手帳を掲げている男のようだった。


「本来は事件の捜査が主な仕事なのですが、警官として現状の確認をさせていただきます」


 男がそういうと周囲は全員、男の方を向いた


「現状…とは言っても、訳の分からないまま訳の分からない場所に放り出されたっていうのが現状なのですが…何が皆さんで気付いたこととか、共有しておきたいこととかあれば遠慮なく…」


 そう言った時、一人の病人服を着た少女が手を挙げた


「す…すみません!ここって…えっと…いや!すみません!何でもないです!」

「…まぁ、そうした格好の違いも気付くべきポイントですよね」


 塚本さんはそういいため息をついた。

 そう、そうなのだ。少なくともあの電車に乗っていたものたちではないことは確かなのだ。しかし、このよくわからない平原に全員がいる。この訳のわからない状況を誰も把握していないのだ

 それにしても、あんな感じのドレスのような制服があるなんて知らなかった。

あんな制服日本にあるんだ…


「とりあえずここがどこかよりも安全を確保したほうがいいかと、こんなに広い草原、どんな動物がいてもおかしくありません」


 そう言ったのは少し怖い目つきをした道着を着たお姉さんだった。背中には大きな布、おそらく竹刀が入ってるであろう袋をを担いでいた


「それもそうですが、見渡す限り草原で下手に動く方が危ないという可能性もあります」

「まだ日が高い、お互いの位置が確認できるうちに人を探して歩いたほうがいいかと、獣に襲われる確率よりも夜の方が怖いと思います」


 塚本さんはそれを聞いて黙る。確かにと思う反面、危険な行動へと誘導するのは警察の責務ではないのだろう


「あの、可愛い私から一言いいです?」


 私は口を開く、その発言に全員の目線がこちらを向いた


「いやいや、大したことじゃないんですけど、ここって本当に地球なのかなって、ほらよくあるじゃないですか、異世界の話って」

「異世界…」


 塚本さんは顰めっ面で聞く


「否定はできないな、ただでさえ非現実的な話だ。何が起きていてもおかしくないが、憶測だけで物事は進められん」

「わかりました」


 と先程の道着を着たお姉さんが言った。そして背負っている袋の尾を緩めると中から日本刀を取り出した。

 真剣だった。木刀とかじゃなく


「お嬢ちゃん、そりゃ銃刀法違反だ…」


 塚本さんはため息をついた


「平気です。私が元々いた場所は私の家の敷地内です。そこでの持ち運びのため銃刀法違反にはならないと思います。」

「まぁな…だが、その刀で何するつもりだ」

「私が先行します。とりあえず止まってるだけじゃ何もできない、先ほども言ったとおり動かない方が危険です。…ん?」


 道着の女はその刀を持つと少し首を傾げた。そして刀を持った自分の手を首を傾げながら見ている


「どうした。嬢ちゃん?」

「何か…違和感が…」


 そういうと彼女は軽く刀を振った。塚本さんはそのおかしい様子に自分の腰あたりに手を伸ばしていた

拳銃に手をかけているのだ!

判断が早い!


「あぁ、少し離れててください…」


道着の女の人はそういうと塚本さんはため息をつきながら後ろに下がった。それを確認してから彼女は刀を少し確認して納刀した。その後体を沈め、抜刀術の構えをとった


「あ?おい、嬢ちゃん何して…」


 塚本さんが声をかけた瞬間、彼女はその刀を抜き放ち一閃した。

 その瞬間、空間が凪いだ。

 全ての空間が停止したように微風すらも止まる。刹那、彼女が抜き払った前面が抉れ飛んだ


「うわっ!?」


 ビリビリと空間が震えその爆風のような一撃にその場にいた全員が顔を伏せた


「…へ?」


 その一撃を放った本人も変な声をあげてマジマジとその刀を見つめている


「お…おいおいおい!人間の範疇超えてるぞ!嬢ちゃん」

「い…いや、私も驚いてる…いや…え?」


 彼女は自分の刀を半分困惑、半分嬉しそうに見ていた。

 それを見て今まで口を開いていなかったもう一人の学生が口を開いた


「…おぉ〜!」


 今まで黙ってた割には明るい声だった。その自分の声に気づいたのか慌てて口を押さえた学生


 可愛い


 可愛い私はその可愛い女の子に詰め寄ってみた


「ねぇねぇ、どこの高校?」

「え?」


 少女は困惑しながら私の方を向いた


「いや…いやぁ!?え!?何で私に急に話しかけたんですか!?」


 少女はテンション高く言った。いやこれが素なのだろう


「いや、どこからきたのかなぁって」

「私?え…東京だよ!」

「そうなんだ!私、千葉なんだよね!」

「千葉…あぁ!下総国ね!」

「…ん?」


 全員が一瞬でフリーズした。病院服を着た女の子は首を傾げている。


「ちょっと待て、今整理しなきゃいけないことが多々出てきたぞ」


 塚本さんはメモ帳を取り出し、メモをする


「まず最初に嬢ちゃん‥じゃなくて、そこの道着の方、あなたは?」

「私は芹沢葵です。まぁ、大きい道場の一人娘と思ってください、この刀は父の骨董品です」

「あの九○式の大砲みたいな火力の攻撃は何だ」

「あれは、本当にわからないんです。元々あんなのは出せませんでした」

「ふむ…」


 塚本さんはそういうとメモを取る。そして先程の少女の発言で出た。問題の部分に触れた


「その時、西暦何年でした?」

「……1974年です」


 その瞬間、塚本はため息をついた。


「俺は1985年だ…」


 これは私も言わなければと口を開く


「2025年です」

「40年も後かよ!」


 塚本は頭に手を当てた

 そして次に病人服の女の子に目線を向けた


「えっと、すみません、ちょっとわかりません…」

「?来た時代がわからないのか?」

「はい」

「…そうか…じゃあ最後に…」


 そういうとその綺麗な服を着た女の子に目を向ける。


「嬢ちゃんは何年から来た?」

「…明治三年…」

「…たはっ」


 塚本さんは変な声を上げた。そりゃそうだ。私だってそのあたりはもう歴史の話だ。


「皆さんだいぶ後の時代の方なんですね!へぇ…驚きだなぁ…」


 彼女はしみじみという


「おっと…昔から両親から華族らしくないからあまり喋るなと言われているんですよね、まぁでもなんかよくわからないけど神隠しにあったみたいだし!喋ってもいいですよね」


 そんな独り言なのか問いかけなのかわからない発言に全員ポカーンとしている。病院服の子だけがやはり首を傾げていた


「あの…えっと…私…」


 病院服の子が何かを言おうとしたが芹沢さんが止めた


「歩きながら話そう、やっぱり止まってるだけじゃわからないし、私のこの力があれば安心はできる。けどやっぱり人里…あるかわからないけど…それを探さないと始まらないと思う」

「いえ!その!」


 病院服の子が大きな声を上げた。全員がその声に驚き反射的にそちらを向いた時、彼女が言いたいことがわかった。

 彼女の後ろに何かうっすらと黒い影が見えているのだ。

 後ろも後ろすぐ背後だった


「なんかさっきから見えてるんですけど…絶対おかしいですよね?」

「…俺はもう突っ込まん」


 塚本さんはメモ帳を閉じると懐にしまった


「もう訳がわからんし先にも進めん、とりあえず芹沢さん、先行してくれ、そこの病院服の嬢ちゃんの話は俺が聞く」

「わかりました…しかし、その黒いモヤ、安全なものなのですか?…」

「わかる訳ねぇだろ」


 塚本さんは敬語が取れいかにも警部っぽい言い方で話し始めた


「お前さんの言った通り、止まってても仕方ねぇ、とりあえずは進む方が…」

「あっちです」


 病院服の少女はそういうと私たちが進もうとしていた方向とは反対方向を指さした。


「あっちに町があるって…このロディアが言ってます」

「ロディア?」


 皆が黒いモヤのようなものに視線を向ける


「こっちを見るなと言ってます。まだ馴染む前なので実体化は厳しいが街への案内くらいならできる…と…」

「馴染む!?なんの話だ!?それに!声が聞こえるのか!?」

「え?…皆さんには…」

「…いや、とりあえず行こう、歩きながらでも話は聞ける」


 芹沢さんはそういうと先行して歩き始めた。

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