回想
私と眞人との出会いは中学1年生の頃。同じクラスになった。その時は友達になるなんてこれっぽっちも思っていなくて。だけど、彼はいつも笑顔で明るくて、話していると楽しかった。
中学2年生の頃から、彼のことが密かに好きになっていった。音楽について話している時の目がキラキラしていて、私が自分の机にいると笑顔で話しかけてきてくれた。彼が恋愛なんか興味無いことは分かっていたけど、いつか付き合えたらなんて思っていた。それくらい好きだった。
だけど神様は意地悪で、中学3年生以降は同じクラスになることは無かった。それからというもの彼と話すことはめっきり減っていた。寂しさを感じながら過ごすことが多くて…。同じクラスに仲良い男子は沢山いたけど、心の隅では彼と話したいという気持ちが高かった。
そんな時に架乃の紹介で玲央と出会った。いつしか玲央と仲良くなって、3人で話すことが多くなっていた。架乃がいない時には、眞人が会話に加わることもあった。今考えると、気づかないうちに玲央と仲良くしていたのは、眞人と話すためだったのかもしれない。
最近になって眞人と話すことが増えた。なんか彼から話しかけるなオーラが薄れてきたような気がしたからだ。私と彼は仲が良かったけど、いつしか彼と話すことに高い壁を感じていたのかもしれない。その時に彼の苦しみに気づいていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない…。一体何があったのだろう。
「次はーー総合病院」
バスのアナウンスを聞いて、一気に現実に引き戻された。回想の中で彼に会っていたような気がしていたから、寂しさを感じた。早く着いて欲しいけど着いて欲しくない。私の中で矛盾が生まれてゆく。でもとにかく眞人に会いたい。助かっていて欲しい。ただそれを願うしかなかった。
そして私はバスを駆け足で降りた。