第92話 未知なる共闘
【行くぜぇ!!】
テッサは勢いよくゼウスの懐に入り込み曲刀を薙ぐ。
激しい衝撃を生み、やはり曲刀はゼウスに届く事なく停止した。
「蝿ごときが足掻いた所で意味はない」
ゼウスがその手を天に掲げる。
テッサはニヤリと笑った。
その場に残像を残し高速で背後を取る。
「!!!」
ゼウスは微小な違和感を感じ曲刀を回避する。
【どうした? 自慢の空間操作で止めないのか?】
「・・・何をした?」
ゼウスはテッサを睨む。
【俺の剣筋はエーテルの流れを遮断する。この曲刀に触れられものは神術を展開維持する事は不可能だ】
テッサは軽やかにステップを踏みゼウスの脇腹目がけ曲刀を振る。
再び激しい衝撃音が響き渡り、まばゆい閃光を放つ。
曲刀はゼウスに届く事なく停止していた。
「エーテルを遮断するのではなかったか?」
ゼウスは掌から雷撃を放出する。
【ぐああっ!!!】
直撃するがアルシオーネの遮断能力で雷を止めダメージを最小限に留める。
【こいつ、マジかよ。確かにエーテルの流れは止めたはずなんだが】
〖ちょっと! やっぱりダメじゃない! 見ていられないわ! 交代よ!!〗
テッサの脳内にエレクトラの怒鳴り声が響く。
【まあ待てって。ちゃんと効果は出てる。ただ、あいつの中からエーテルが泉のように湧き出ているみたいだな】
〖・・・つまり?〗
【何度遮断してもまたすぐに空間操作されるって事だな】
〖ダメじゃない! やっぱり後から入ってきたヤツなんかに任せるんじゃなかったわ!〗
エレクトラはアルシオーネを押しのけ顕現しようと試みる。
【待て待て待て!! 落ち着け!! そんな強引に入れ替わったらテッサの精神が壊れちまう!!】
〖じゃあどうするのよ?〗
【一つだけ策がある。俺とエレクトラの二人でテッサの身体を使う】
アルシオーネの提案にエレクトラは激怒する。
〖はぁっ?! そんなの無理に決まっているでしょ? テッサの身体が持たないわ!〗
【確かに、上手くいく保証なんてどこにもない。俺達は構わないがテッサは人間だ。体が持たないかもしれない。いや、高い確率でそうなるだろうな。でも、それくらいしないとやばい相手だってのは分かるだろ?】
〖でも、そんなことしたらテッサが・・・〗
二人の話を黙って聞いていたテッサが口を開いた。
『私は構いませんよ。それしか道はなさそうですし、やるしかないと思います』
〖ちょっと! 何言ってるのよテッサ!! 死んじゃうかも知れないんだよ?!〗
『それは重々承知しています。ですが、ニケさんやピュラさんだけでなく、アシーナさんまでもが犠牲になった。彼に挑んだ時点で、とうに覚悟はできています』
テッサは深く息を吐いた。
『何より、胸がとてもざわつくのです。こみ上げてくるのです。仲間を傷つけられた悔しさが。怒りが・・・』
テッサは握る曲刀に力を込める。
〖テッサ・・・〗
【テッサの覚悟は受け取った。なら、俺達も主に対して最大限の敬意を示さないとな】
〖そうね、分かった。そこまで言われちゃったら従うしかないわね〗
ペルセポネの横で浮遊する双剣、メロペとアステロペが淡く光り出す。
まるでエレクトラとアルシオーネに呼応するように。
テッサに魅了されるように。
「あら? あなた達、一体どうしたの?」
ペルセポネは不思議そうにゼウスの前に立つテッサを見つめた。
「もう十分楽しんだ。これ以上纏わりつかれても邪魔だ。消えろ」
「『裁きの天雷』。」
轟く雷鳴が鳴り響きまばゆい閃光が辺りを照らした瞬間、激しい稲妻の束が収束しテッサの頭上に襲い掛かった。
手応えはあった。
間違いなく直撃したはずだ。
目の前のあり得ない光景に、ゼウスは唾をのむ。
見る見るうちに稲妻が凍っていく。
ひとたび風が吹き荒れ上昇すると、天まで伸び凍った稲妻は音を立てて砕け散った。
「バ、バカな・・・」
背中に青白く輝く羽と、対を成すように生える黄色い羽が八枚。
美しい白銀の髪は下へ伸びるにつれ鮮やかな黄色のグラデーションを作り出す。
両手に握られる長刀エレクトラと曲刀アルシオーネ。
四肢は風の衣を纏い、テッサの周りを囲うように宝石を思わせる無数の氷塊が浮いていた。
〘行きます〙
紫水晶と深緑の瞳が開かれる。
「『雷雨』。」
テッサの頭上から激しい雷の雨が降り注ぐ。
テッサは天に向かいエレクトラを一薙ぎする。
その瞬間、雷の雨は一斉に凍り付き、同時に発生した豪風に吹き飛ばされダイヤモンドダストと化し風に吹かれていった。
凍った稲妻の結晶が空中に煌めく。
「何だと・・・?」
軽やかに一歩を踏み出す。
テッサは瞬く間に構えるゼウスの目の前に移動する。
エレクトラとアルシオーネを交差させゼウスに思い切り踏み込んだ。
「ぐっ?!!」
戦いを見守っていたアレスは凄まじい剣戟に吹き飛ばされる。
まばゆい閃光が走りゼウスを取り巻く空間が揺らめく。
「馬鹿め!! 無駄だと言っている!!」
〘ああああ!!!!!!〙
テッサは反発する力に必死に抗いながら全霊込めて剣を押し込む。
軋む音が響き渡り、徐々に空間に亀裂が入る。
稲妻が迸るが如く、凝縮されたエネルギーは乾いた音を立て双剣に引き裂かれた。
「くっ!!!」
身の危険を察知したゼウスは後方へ大きく回避する。
〘あはっ♪ アルシオーネの賭けは成功したみたいね♪〙
〘う~ん、もう少し簡単に突破したかったというのが正直なところだけど、初の試みではこんなものかな〙
アルシオーネは冷静に分析する。
〘テッサ、身体は大丈夫?〙
エレクトラの問いかけに反応はない。
〘テッサ?!〙
〘・・・すみません。平気です。やはり気を抜くと精神が持っていかれますね〙
エレクトラは安堵の声を漏らす。
〘も~。驚かせないでよね。テッサが倒れちゃったら、あいつの魂食べられないじゃない〙
〘お前・・・こんな時にそんな呑気な事言ってる場合じゃないだろ。テッサの事を考えるとあまり長いこと二人が顕現するのは得策じゃないんだ〙
ゼウスはエーテルをその手に集中させる。
「人間ごときが全知全能を破るとは虫唾が走る。これだから人間は野放しにできんのだ」
ゼウスが手を振り上げる。
「『神の稲妻』。」
厚い雲が星空を覆い尽くし雷鳴が轟く。
閃光と共に一本の赤い稲妻がゼウスの手元へ落ちる。
落ちた稲妻はその場で留まり段々形を変えていく。
そして一本の稲妻の剣となりゼウスの手に握られた。
〘おいおい、小物の癖にすげーエーテルだ。こりゃ出し惜しみしている暇はないかな?〙
テッサは凝縮された稲妻の剣に冷や汗をかく。
「喜べ。人間にこの力を振るうのは貴様が初めてだ」
〘それは・・・あまり喜ばしい事ではありませんね〙
ゼウスは笑みを浮かべ」赤き雷鳴の剣を大地に突き刺した。
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