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第84話 不可視の強さ


アシーナはクロノス、ゼウスには目もくれず石化したガイアに迫る。


「壊れろ」


腕を振ると円形の鏡の盾はガイアの首筋目がけて飛翔する。


アシーナは空から飛んでくる高エネルギーを察知し後方へ回避した。


深緑色の槍が轟音と共に高速で迫り鏡の盾を弾き飛ばし地面に突き刺さる。


刺さった槍の中心から緑色の風が発生し次第に大きくなっていく。


燃えるような赤い髪を束ねたバンダナの男は身体を回転させ衝撃を和らげ地面に着地した。


「何だその面は?」


アシーナは空からやってきた人影を睨む。


「・・・アレス」


「随分雰囲気が変わったじゃねえか。あの泣き虫真面目野郎はどこ行った?」


アレスが手をかざすと深緑の槍は彼の手中に戻った。


「何の用? あなたに構っている暇はないの。邪魔をするなら殺すわよ」


「ははっ!! こりゃあ傑作だ!! 俺に対しあれだけ偉そうに説教垂れたお前からその言葉が出るとはな!!」


「お前が誰の命を奪おうが、どれだけその手を汚そうが興味ねえしお前の勝手だ」


アレスは槍を構える。


「だが、己の掲げた信念を捻じ曲げる事だけは許さねえ。俺はそんな弱い奴に負けたつもりはねえぞ。アシーナ」


「一度負けたあなたが何を偉そうに。負けた分際でよく私の前に立てるわね。あの時は命までは取らないであげたけど、次はないわよ」


オリーブの紋章が真っ赤に染まり上がる。


「それは同感だが、俺を倒した奴が実はメンタル雑魚でした、では俺が困る。この俺を倒したお前だけは最強でなければならねえ」


「どこまでも強く、心・技・体全てに於いて一切の隙が見当たらねぇくらい強く在り続けろ。それが、俺を負かしたお前の責任だ」


「あなたの勝手な理想を押し付けないで。単純にあなたが弱いから負けたのよ。弱者であるあなたの妄想を聞き入れる義理なんてないわ」


「『モード・大氷河(パイエトーナス)』。」


アシーナの両脇に氷柱(つらら)の盾が三枚ずつ現れる。


手を空に掲げると、無数の氷針が生成されアレスに狙いを定める。


「『集中豪雨(ボーラ)』。」


無数の氷の針が一斉にアレスに襲い掛かる。


アレスは深く息を吸い込む。


「ふっ!!!」


薙いだ深緑の槍から嵐が巻き起こる。


吹き荒ぶ緑の嵐は全ての氷針を絡め取りそのまま空へ巻き上げた。


「どうした? 殺すんじゃなかったのか?」


「一つ凌いだくらいで調子に乗らないで」


アシーナは両手を水平に構える。


「『氷の絶壁(クレモス)』。」


両脇の氷柱の盾はアレスの左右にスライド移動し、逃げ場を塞ぐように大地に突き刺さった。


すると瞬く間に分厚い巨大な氷の壁が作り出され天に向かい伸びていく。


「潰れろ」


アシーナが閉じた両手を目の前に持ってくる。


呼応するように淡い青色に光った氷の壁は、大きな地震のように大地を揺るがし廃墟の建物を難なく押しのけアレスに迫る。


アレスは槍の柄部を切り離しそれぞれ逆手に持ち替える。


「オラァ!!!!」


迫り来る氷の壁に槍を突き刺し力を込めた。


分厚い氷の壁はその動きを止める。


「くっ!!」


アシーナは更に手に意識を集中させる。


それでも壁は動かない。


「はあああっ!!!!」


アレスの身体を駆け巡るように緑色の風のオーラが吹き荒れ、槍の強度が増していく。


「『風波(かざなみ)』!!」


槍から発せられた凄まじい風量の嵐が氷の壁を押し返す。


力負けしたアシーナのかざした手が弾かれた。


同時に氷の壁は粉々に粉砕され吹き飛んだ。


アレスが地面に槍を突き刺すと、アシーナの足元から緑の嵐が噴き上げた。


「っ!!!」


アシーナは咄嗟に身を翻し何とか躱す。


視線を向けると、そこにアレスの姿はなかった。


視界の端で死角から迫るアレスを捉える。


「オラァ!!!」


アシーナは氷柱(つらら)の盾を呼び戻し迎撃する。


槍と盾が激しくぶつかり合う。


「ちっ!!」


アレスは反発する力を利用し後方へ飛び距離を取った。


「これでも最速の槍なんだがな。難なく順応する動体視力、それに加えて俺と力比べしても遜色ない腕力。全く、相変わらずふざけた身体能力だ」


「しかし何故だろうな。自分でも驚くほど落ち着いている。今のお前には微塵も負ける気がしねぇ」


「安い挑発ね。そんな事に動揺するとでも思っているの?」


実際アシーナは戸惑っていた。今目の前に立ちはだかっている男は、以前とは明らかに違っている事に。


確かに以前手合わせした時よりも神術は遥かに強化されており、より質が向上している事は紛れもない事実だろう。


それはエーテルの流れを読めばすぐに分かる。


しかし、そういう物理的なものではなく。例えば、仮にアレスを打ち負かしたとしても、それは本当に勝ったと言えるのか・・・


どこか納得できないような、すっきりしないような・・・


そんな言葉にできない違和感がアシーナの心にモヤをかけていた。


「『モード・灼熱(プラーミア)』。」


急激な温度上昇に陽炎が発生し大気が揺らぎ始める。


緑色の装飾を施された円形の赤い盾が六つ背中に出現した。


「これ以上邪魔されても目障りよ。これで終わりにしてあげる」


アシーナが手を天に掲げると盾は回転し空へ昇っていく。


「『大炎裁(エクリクスィ)』。」


アレスの頭上で回転する円形の盾は円筒形の燃え盛る極炎となり急降下する。


「灰となるがいいわ」


アレスは目を閉じゆっくりと深呼吸する。


軍神の双槍(パランクス)


「『ランク8』。」


アレスが呟くと両手にほのかに淡く青色に輝く二対の長く真っ白な長槍バルディッシュが握られた。


「『静寂(せいじゃく)』。」


アレスはバルディッシュを掲げ大火柱を迎え撃つ。


火柱がバルディッシュに触れた瞬間、火柱は弾けるようにエーテルの粒子に変わり霧散した。


「『天の怒り(ヴァリア・スィエラ)』。」


アシーナのかざす手に巨大な超高温の炎の塊が形成され、アレスに向かい勢いよく放出される。


アレスは真っすぐバルディッシュを構え巨大な炎の塊を突き刺した。


その瞬間、やはり炎の塊はエーテルとなり消えていった。


「な、何なのよ・・・それ」


アシーナの頬に冷や汗が伝う。


「この白き槍はエーテルを強制的に封じ込める。この槍の前では全ての神術は無に帰す」


アレスは淡く光る真っ白のバルディッシュをアシーナに向ける。


「言ったはずだ。お前がどれだけ強力な術を使おうが、今のお前には負ける気はしねぇ」


アシーナはたじろぎ、本能的にその足を半歩後退させた。



ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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