第83話 異常な愛
「そのガラクタが邪魔だな」
ゼウスが手を振り下ろすと、辺り一帯がまばゆい閃光に包まれた。
「きゃっ?!」
ガイアは激しい衝撃に体勢を崩す。
目を開けるとガイアの足元には底の見えない円形の縦穴ができていた。
「ゴーレム一体破壊するのにそこまでしますか。恐ろしいお方です」
ヘルメスは唾をのむ。
「おとなしく私の言う事を聞く気になったか? ガイアよ」
「全く。どうもあなたは女性の口説き方が分かっていないみたいね。そんな態度で頷くとでも思った? あなたに目を付けられた子も可哀想に。さぞ大変な思いをするのでしょうね」
「それに、ごめんなさいね? 私、あなたみたいな強引な人はタイプじゃないのよ。ニッキーみたいな寡黙で優しい子が好みかな~。 まだ会った事ないから勝手な想像だけど♪ あ、ニッキーってニケ君の事ね」
ゼウスの眉がピクリと動く。
「よりによってここであの災厄の名が出て来るとはな。相変わらず感情を逆なでる話術には長けているようだな」
「気が変わった。千里眼がなくとも奈落の闇などどうとでもなる」
ゼウスが再び手を天にかざすと雷鳴が大きく轟いた。
「ここで死ね」
まばゆい閃光がガイアに降り注ぐ。
「っ!!!!!」
ガイアは咄嗟に防御態勢に入る。
閃光が収まると、ガイアは両手を見て首を傾げる。
ふと目線を上げると、そこにはガイアを守るように立ちはだかる漆黒の髪の男が長く大きな大鎌を携えていた。
「済まない。遅くなった」
「クロッチ!! 遅いわよ!! さすがにちょっと焦っちゃった」
ゼウスはあり得ない光景を目の当たりにしていた。
「クロノス・・・なぜ貴様がここにいる」
「俺がここにいるのは星の意思。お前の蛮行を止めるまで、俺に安息はないらしい」
クロノスは大鎌を構える。
「くだらん。星の意思とはすなわち私の意思だ。おとなしくエーテルに帰すがいい」
「『裁きの天雷』。」
まばゆい閃光を放つ雷撃がクロノスに襲い掛かる。
クロノスは大鎌を一回転させ雷撃をいなす。
「うわっ!!」
雷撃はヘルメスへ向かい光速で迫る。
咄嗟に身を翻し雷撃を躱した。
「やってくれますね!!」
ヘルメスは杖を構えクロノスに飛び込む。
≪終焉をもたらす者≫
クロノスの全身が黒霧に包まれる。
手を地面に当て黒い腕が地面から発生すると、ヘルメスの足を掴み足の骨を砕いた。
「ぐ、ああああ!!!」
鈍い音と叫び声が響き渡る。
「ふむ。やはり取り込むまではいかないか・・・月日が経ち劣化してしまったか、それとも俺の役目はとうに終えているか」
「まだです!!」
ヘルメスは杖をかざす。
「済まないが既に詰んでいる」
クロノスがヘルメスに向かい手を開く。
同時にヘルメスの背後から液体のような球体の黒霧が発生し、彼を取り込んだ。
「『暗黒球』。」
クロノスが手を閉じると、黒い球体は鼓動するようにうねり、何かが砕かれる生々しい音が響き渡る。
黒い球体はそのまま時空の狭間に消えていった。
狙っていたかのように雷撃がクロノスに降り注ぐ。
ガイアは土のヴェールを生成しクロノスを覆い雷撃を防いだ。
「そう来ると思ったわ」
ゼウスは舌打ちする。
「仲間がやられたと言うのに顔色一つ変わらない。相変わらずだな」
クロノスは大鎌を構える。
「笑わせるな。仲間など群れる事でしか生きられぬ弱者の概念だ。本来であれば私一人で完結する。駒は多いに越した事はない。ただそれだけだ」
「娘ですら要らないと?」
「アシーナだけは例外だ。あやつは私の駒としてあまりに優秀。あやつの力があれば世界を統べる事も容易だ」
ガイアは呆れて首を振る。
「アッシーがそれを聞いたら一体どんな表情をするのかしらね」
「実の娘ですらモノとしてしか見られないお前がこの世界を導くなど、破滅へと進んで堕ちて行くようなものだ」
大鎌を握る手に力が入る。
ゼウスは鼻で笑う。
「愛しているとも。何せアシーナは可愛い私の最高傑作なのだからな」
「それは愛といえるのかしら? 愛というのは私のアッフィーへの想いの様に、例え目に入れても痛くない程無償に注ぐものなのよ?」
ガイアは自慢げに仁王立ちしている。
「お前の愛情表現もなかなか特殊だと思うが・・・」
クロノスはため息をつく。
対峙する三人はこちらへ向かってくる異様なほど大きいエーテルの流動を感知した。
「この波動は・・・」
「フハハハ!!! 漸くその気になったか!! 初めから素直に私に従っていればよかったものを!!」
ガイアの脳裏に石化した三人が破壊される光景が鮮明に刻まれる。
「やばっ・・・何か視えちゃった・・・」
「まずいわクロッチ!! 一旦この場から離れないと・・・!!」
ガイアは圧倒的な重圧に後ろを振り返る。
「見つけた」
アース神殿の屋上部に、獲物を探すようにうねる巨大な八首の大蛇を背負う赤い涙を流す紅蓮の瞳の少女が静かにこちらを見下ろしていた。
「漸く私の望む成長を遂げたかアシーナ!! 千里眼はもはや要らぬ! さあ二人を殺すのだ!! さすれば・・・!!」
「『傀儡彫刻』。」
アシーナが呟くと同時に大蛇の眼が怪しく光る。
三人は瞬く間に彫刻の様に綺麗な石と化した。
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