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第63話 巨大遺跡都市・エトナ


「女神ガイア。本当に我々だけでユピテリアの軍勢を鎮圧できるのでしょうか? どう考えても戦力が足りないように思いますが」


アポロンとアフロディーテはガイアに導かれるまま後をついていく。


「アッピーったら心配性なんだから。戦力に関しては大丈夫よ。問題ないわ」


「もちろん簡単にいくとは思っていないし、できればゼウスとは戦いたくないのが本音よ。だって、彼の軍はみんな野蛮なんだもの。暑苦しいったらないわ」


「そ、そうですか・・・」


アポロンは周囲を見渡す。


(そういえば、やけに人の数が少ないな・・・人と会話をしたのは門番だけだ。だいぶ神殿内を歩いているが、誰ともすれ違っていない)


「さすがアッピー!! いいところに気が付いたわね!!」


「ま、まだ何も言っていませんが・・・」


「何を言うのか視えちゃったのよね~。あ、先に言われたら混乱しちゃうか。どうもこの感覚に慣れないのよねぇ~」


アフロディーテは頭を掻く。


「その先回りして会話する癖、何とかなりません? 尋問みたいですよ」


「ぶ~!! 私だって頑張って視ないように努力してるわよ。仕方ないじゃない、視えちゃうんだから」


「はいはい。大物アピールしなくていいですから」


「アッフィーひどい! たまにはいいじゃない、本当にアースを治めているんだから! 誰かさんが敬ってくれないから自分でアピールしていくしかないのよ!」


「ガイア様・・・ご自身で悲しい事言っているの、分かってます?」


ガイアは急にしおらしくその場に座り込んだ。


「わたし・・・本当に、誰からも敬われていなかったというの・・・?」


「ガ、ガイア様!! 立ってください!! 俺は尊敬しています! お一人でこの広大なアースを統治される手腕は誰にも真似できない事だと思います!」


「・・・・ほんと?」


「もちろんです。最初に拝見した時は身が引き締まる思いになりました」


「い、いえ! 今もですがっ!」


アポロンは恥ずかしそうにそっぽを向き、手を差し伸べる。


「アッピー優しいのね! ありがと♪」


ガイアはアポロンの手を取り軽やかに立ち上がった。


アフロディーテはやや乱暴に頭を掻く。


「全て知った上で試すような事するなんて、性格悪いですよ」


「あ~!! アッフィーもしかして嫉妬? いけませんよ? 人を妬むのは重罪ですっ!」


ガイアは得意げに指を立てる。


「このっ・・・!」


アフロディーテの本気の怒りを悟ったガイアは苦笑いする。


「わ、悪かったわよ。謝るからそんなに怒らないでちょうだい」


ガイアは深呼吸し気持ちを落ち着かせる。


「それにしても、まさかアッフィーがそこまでアッピーの事好きだなんてね! そこまでは視えなかったわ♪」


「はぁ?! 誰がこんなモヤシ!! それに、どうせ視えていたくせに下手な嘘は止めてください!」


アポロンは二人のやり取りに取り残され一人呆然としている。


「あ、外が見えてきたわよ!」


ガイアは日差しの指す方向を指さした。


「本当、無駄に広いですよね。この神殿」


「開放感があっていいじゃないの。この星のように器の広い私に相応しい、立派な神殿よね」


「たった今、演技してまで人を煽り弄んだ神のセリフとは思えませんね。どうやら都合の悪い事は頭から消えていく構造のようです。なるほど。確かに考え方によっては器が大きい・・・」


アフロディーテはしみじみと頷きながら腕を組む。


「もぅ!! それに関してはちゃんと謝ったでしょ! アッフィーのいじわる!!」


アポロンは足を止めた二人の横に立ち、目の前に広がる景色に感嘆する。


「こ、これは・・・」


眼下に広がる巨大な町はここからでは端を見渡せない程広がり、まるで森の中に形成された都市のように建物の隙間から様々な木々が空に向かい伸びている。


遺跡だろうか。建物のほとんどは古代文明の名残を残し、自然と遺跡が調和した何とも神秘的な空気が流れている。心なしか、空気もより一層おいしく感じる。


そして何よりも驚いたのは、その木々に負けず劣らず大型の魔物や動物が平然と闊歩している事だった。


人々の姿もあるが、どう見ても魔物の方が多い。


「何というか・・・独特な雰囲気を持つ大きな町ですね」


「ここが、私の自慢の町エトナよ」


「アースに町と呼べるものはここしかないわ。まあ、そのたった一つの町がとてつもなく広いのだけど」


「この広大な町をガイア様一人で管理されているのですか?」


「そうよ。少しは尊敬してくれるかしら?」


ガイアは自慢げに腰に手を当てる。


「私に見回りという雑用を押し付けておいて、よく言いますね。そのくせご自身は優雅に沐浴ですもの。その尊敬すべき立ち振る舞いには頭が上がりませんわ」


「もう!! 余計な事は言わなくていいの!! どうしてそんなに捻くれちゃったのかしら? 昔はあんなに可愛かったのに~! ほら、あの頃のようにこっちへいらっしゃい。頭ナデナデしてあげるから」


アフロディーテは青ざめた顔で一歩下がる。


「近寄らないでくれますか? 頭のお花畑が伝染してしまいます」


「ひどい!! そこまで言わなくたっていいでしょ! お母さん傷ついちゃう!」


「だから、いつから私の母親になったのですか・・・」


ガイアは優しく微笑む。


「あの時からずっとよ。少なくとも、私はそう思ってる」


「・・・・・」


アフロディーテは恥ずかしそうに目を逸らした。


「い、今はその話はいいでしょう? さっきからアポロンのヤツを置いてきぼりにしちゃっているじゃないですか」


「気にするな。二人がお互い揺るぎない信頼で結ばれているのがよく分かる。二人を見ていると、不思議と俺まで楽しくなってくるんだ」


ガイアはアフロディーテを見て悪戯な笑顔を浮かべる。


「いつでもお婿さんに来てくれていいからね♪ アッピーにお義母さんって呼ばれてみたいわ♪」


アフロディーテは顔を真っ赤にする。


「なっ!! 勝手に決めないでください!! 私は別にっ・・・!」


「はいはい、分かりました♪」


一人頬を膨らめるアフロディーテを尻目に、ガイアはアポロンに微笑みかける。


「この町を何としても守りたいの。頼りにさせてもらうからね、アッピー」


「もちろんです。無益な争いはすべきではない。もとより平和を願うガイア様に同意。ユピテリアの者ではありますが、此度の戦はガイア様に忠誠を誓います」


アポロンは膝をつき頭を垂れる。


「ありがと♪」


「ところでガイア様・・・結局、戦力というのは・・・」


「・・・あれ? そういう話だったっけ?」 


アポロンは呆然とガイアを見上げる。


「ごめんなさい!! すっかり忘れていたわ!!」


アフロディーテは額に手を当てている。


「まあ、それは当日までのお楽しみって事で♪」


ガイアはウインクする。


「は、はぁ・・・」


「ユピテリアは7日後の早朝に進軍開始するんですってー。全く、ゼウスもせっかちねぇ・・・」


「そ、そんな他人事のように・・・」


アポロンの口は開きっぱなしだ。


「ま、今考えても仕方ないわ! 今は戦いの事は忘れてエトナを楽しんでちょうだい」


「・・・そんなに緩くて本当にアースを守り切れるのですか?」


「大丈夫よ。ちゃんと手は打ってあるから。まだ()()()の準備が整っていないのよ。7日後かぁ。結構ギリギリかな・・・まあ、何とかなるでしょう」


「さ、それより早くご飯を食べに行きましょ! エトナで食事なんて久しぶりだから楽しみだわ♪」


ガイアはリズミカルに跳ねながら鼻歌を歌う。


「全く・・・流石にそれが目的だったとは言わないですよね?」


アフロディーテはため息交じりに髪を掻き上げた。


「え・・・・・?」


ガイアはビクッと固まった。


「・・・・・・え?」


アポロンとアフロディーテは目を丸くする。


「や、やあねぇアッフィーったら!! そんなはずないじゃない! 私は地上領域アースを統べる、誇り高き地母神ガイアなのよ? そんな低俗な・・・」


その瞬間、タイミングを見計らったかのように腹の虫が鳴り響いた。


「・・・どこの?・・・誰が?・・・・・誇り高いですって?」


ガイアは口笛を吹いて空を見上げる。


「・・・・ふ」


危険を察知したガイアは逃げるようにそっと走り出す。


「ふざけんなぁ!! このロリババァがぁーーー!!!」


「いや~ん! こわ~い! 助けてアッピー!!」


ガイアは激昂し襲い掛かるアフロディーテを軽くあしらいながらアポロンに助けを求める。


言葉とは裏腹に、心から楽しんでいるようだ。


アポロンはその様子をただ口を開け見ている事しかできなかった。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


とても励みになっています!

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