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第57話 癒える事のない傷


「これは一体どういう事だ?」


俺とメティスは凄惨な部屋の状況に立ち尽くしていた。


テッサはピュラの頭を撫でる。


「ホドロスに戻りましょう。そこで話します」


テッサはピュラの手を引き部屋を出ていった。


俺とメティスは顔を見合わせテッサについていった―――。



ホドロスの宿屋―――。


「私はこのホドロス出身です。といっても、孤児だったので両親の顔は知りませんし物心ついた時にはこの村にいたので勝手にそう思っているだけ、ですが」


テッサはベッドに腰かける。軋む音が部屋に響いた。


ピュラはテッサの膝の上に飛び乗る。


「当時まだ幼かった私は、食料を手に入れるために必死で毎日盗みを繰り返し生活していた。日々を生き抜く事に精いっぱいだった」


「この村の治安は見ての通りです。無法地帯ゆえに窃盗や殺人などの罪は日常茶飯事。そこに性別年齢は関係ありません」


「ある日私が路地裏を歩いていると、突然背後から何者かに布を当てられ眠らされました。そして、目が覚めると周りに見知らぬ男が三人。息遣いが荒く、どこか落ち着かない様子で私の身体を舐めるように凝視してくる男たちに、とてつもない恐怖に襲われました。」


「そして・・・・」


テッサは唇を固く結ぶ。


テッサは膝に乗るピュラを抱きしめる。


「そして・・・彼らに犯されました。子供だった私は何をされているのか分かりませんでした。ただひたすら怖かったという事だけを覚えています」


俺の頬に一筋の汗が伝う。


「事が済んだ後・・・幸い命まで奪われる事はなかった私は、汗とむせ返るような匂いの中ただ茫然としていました。そこへ、偶然にも近くを通りかかった一人の青年に救出されました。それが、鍛冶神へパイストスです」


俺は、うつむくテッサに何て声をかけたらいいのか分からなかった。


メティスはただ目を閉じている。


「だから、タルタロスに来てからずっと思いつめたような顔をしていたのか」


テッサは頷く。


「この村に入ってからもずっと警戒していました。私達が男たちに目を付けられている事は気づいていました。彼らにとって弱者を襲うのは当たり前。ましてや幼い少女なら尚更・・・標的がピュラさんであろうことも予測していました」


「なるほどな。道理でピュラが連れ去られた時も行動が早かったわけだ」


「はい。男たちの顔ははっきりと覚えていましたし、あの家屋を見て確信しました」


テッサはピュラの頭を撫でる。


ピュラは指をくわえテッサを見上げている。


「へパイストスか。久方ぶりにその名を聞いた。奴は今どうしている? 相変わらず武器創作に勤しんでいるのか?」


テッサのピュラを撫でる手が止まる。


「それは・・・・」


メティスの眉が上がる。


「とにかく、今回はお前に助けられた。礼を言う」


「いえ。私はただ、同じ悲劇を繰り返したくなかっただけですよ」


「それでも、ピュラが救われた事に変わりはない」


「・・・そろそろここを出るか。あまり長居するとまた襲われかねない」


4人は宿屋を出た。


「メティス。ここからまた案内を頼む」


「もちろんです。ここからそう遠くはありません。今日中に辿り着けるでしょう」


ピュラは勢いよく俺の背中に抱き着く。


「にけ!! はやく!!」


「お前、俺を乗り物か何かと勘違いしていないか?」


元気に笑うピュラを見てテッサは優しく微笑む。


「テッサ」


「何でしょう?」


きょとんとするテッサに真剣な眼差しを向ける。


「これからは俺が。いや、俺達がいる。一人で抱え込むな」


「急にどうしました? 私は大丈夫ですよ。彼らに裁きを与える事ができましたし・・・」


俺は首を振る。


「例え復讐ができたとしても、お前の中に残るその記憶は消す事は出来ないはずだ。その深い傷は、お前が一生背負っていかなければいけない事。その痛みが消える事がないのは分かっている。それでも・・・」


「誰かに話を聞いてほしい時や、吐き出したいことがあればいつでも俺達を頼れ。俺達ではその傷を癒すには足りないかもしれない。だが、寄り添う事くらいはできるはずだ。過去は変えられない。そんな事に意味はないかもしれない。だが、俺は・・・」


俺は頭を掻く。


「ダメだな。やはりこういうのは苦手だ。とにかく、行動を共にする以上俺達は仲間だ。仲間である以上、守れるものは守りたい。肉体的も、精神的にも」


「俺が言っても説得力がないかも知れないが・・・」


テッサはニケの言葉に立ち尽くす。


「それに、俺に断界七刀の回収を手伝わせるのだろう? それくらいしてもバチは当たらないんじゃないか?」


「本当に・・・おせっかいな人ですね」


「悪いな。こういう性格なんだ。嫌ならいつでも離れてくれて構わない」


俺は目を逸らした。


「・・・・いいえ」


「ありがとうございます。ニケさん・・・」


微笑むテッサの瞳には涙が滲んでいた。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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