第54話 親愛の証
「そうねぇ。どこから話そうかしら・・・」
ガイアは頬に人差し指を当て目線を上げる。
「まずその前に、あなた達の知るティタノマキアについて話してくれないかしら? ユピテリアでは、ティタノマキアについてどう伝承されているの?」
アポロンは頷く。
「ティタノマキアは、この世界の覇権を握ろうとした人間に巨神族が加勢し、それを鎮圧するためにゼウス様が軍を起こし巨神族および人間を滅ぼした大戦と。そう学びました」
ガイアはため息をついた。
「あ~。やっぱりゼウスの都合のいいように伝わっちゃっているのね~。まあ、大体予想通りだけど」
「個人的には、どこか違和感がある気がしてならないというのが正直なところです。ゼウス様のやり方に心から賛同できない自分がいます。女神メティスの話を聞くまでは半信半疑でしたが・・・」
ガイアは真剣な眼差しを向ける。
「先に言っておきます。女神メティスの言った事はほぼ正しい。アッフィーから聞いていると思いますが、私は『千里眼』によって女神メティスのオリンポス襲撃は既に視ています。故に、女神メティスが何を語ったのかも把握しています」
「ゼウス。この星のエーテルの枯渇が加速したのは彼のせいだと言っても過言ではありません。彼の行う『開花の儀』は、エーテルを燃料に超常的な力を使う技術の覚醒を他者へ贈るだけでなく、その力を本来神個人が持つそれよりも何倍にも増幅させる。強制的に」
「もちろん、アースやタルタロスに住む神々もエーテルを燃料とした超常的な力を扱います。私を含め、稀に生まれつきエーテル保有量が多く桁違いの神術を身に付ける者もいる。ただ、必要以上にその力を求めなかった我らと違い、ゼウスは自身だけにとどまらず自国の強化を図るため、この世界を牛耳る為、私欲のために神術を確立させ意図的に神々に次々とその力を与えていった。その異様なまでの権力に対する執着は、もはや狂気的とすらいえるでしょう」
アポロンは顎に手を当てる。
「つまり俺達はゼウス様によりユピテリアを、自国を強固にするために星の命を削るにも関わらず『開花の儀』によって神術を開花させられ、意図的に強化されていた?」
ガイアは頷く。
「残念ながら、そういう事になります。神術はその特性上、強大で強力であるほどエーテルの消費が激しくなる傾向にあります」
「現在、アースそしてタルタロスでは『銅の時代』に生まれた者で実戦的な強力な神術を扱える者は、先天的に素質のあるもの以外ほぼいません。まして、生まれた神にわざわざ神術を与え強化するような、星の死期を早める行為など一切行っていないのです」
「そもそも、三国が争うのもゼウスが武力に頼り侵略しようとするからです。アースもタルタロスも争いなど望んでいない。私達は、自分たちの領域を防衛するために抵抗しているに過ぎません」
「そして元をたどれば、神術の基礎を築いたのはウラヌス神。彼の血を引く者は誰に覚醒されることもなく神術を扱える一族。ウラヌス神はその力を用いてこの世界を統治しようとしていた背景があります。そして、ゼウスはウラヌス神の血族。彼もまた、かつてウラヌス神がそうしたようにこの世界の覇権を手にしたいのでしょう」
「また厄介な事に、彼らは長い年月を重ねてもエーテルの消費がこの星の寿命を縮めている事に気づく事なく今に至ります」
「なるほど・・・・・」
「ニケ。女神メティスは、彼をこの世界の救世主と呼んでいました。それも本当の事なのでしょうか?」
ガイアはため息をつく。
「ニッキーの存在は知っているわ。けれど、残念ながら彼については一切不明なのよね。この世界にとって重要な存在なのでしょうね。私の千里眼で視えないという事は、彼の運命はまだ先の未来にあるという事になる」
「更に言えば、まるで何かが彼を保護するかのように情報が読み取れない。果たしてそれが吉と出るか、凶と出るか。こればかりは正直何とも言えないわ。私の『千里眼』は遠い未来は見通せない」
ガイアはしばらく沈黙する。
「・・・ガイア様?」
「二人に伝えなければならない事があります」
「何でしょう?」
「ほどなくして、このアースとユピテリアの戦争が始まります」
「なっ?! 急に何をおっしゃるのですか女神ガイア!!」
ガイアの突然の発言にアポロンは動揺する。
「動揺するのも無理はありません。しかし、これは事実です。どうやらゼウスは奈落の闇の討伐を名目に、アースを統合するつもりのようですね」
「そ、そんな・・・・」
「奈落の闇の発生は特定できない。先手を打つために私の『千里眼』が必要と考えているようです」
「そんな・・・もしそれが本当だとしたら悠長な事言っている場合では!!」
アポロンは声を荒げる。
ガイアの話を黙って聞いていたアフロディーテが口を開いた。
「正直な話、あんたがアースに来たいと言ってくれて助かったわ」
「・・・どういうことだ?」
「あのままユピテリアにいれば『エポヒ』として、戦力として徴兵されていた。さすがに私一人で他のエポヒを相手にするのは現実的ではないもの」
「そうは言っても、アシーナが侵略行為に黙って従うとは思えんが・・・」
「アッシーも頑張ってゼウスの説得に試みたようだけれど、どうやら失敗に終わったようね。」
「ガイア様、このような時にニッキー、アッシーって・・・ふざけている場合ではないでしょう?」
アフロディーテは呆れたように深くため息をつく。
「ぶー! いいじゃない!! 仲良くなれそうな子にはニックネームを付けるのが私のささやかな楽しみなの!!」
「はぁ・・・それ、一方通行ですから」
「ひっどーい!! アッフィーのいじわる!!」
「はいはい。わかりましたから」
アフロディーテはむくれるガイアを軽くあしらう。
「こほん! と、とにかく!! アッシーは今、とても心が不安定だわ。何とかしないと取り返しがつかない事になる。彼女の力はとてつもなく強大よ。恐らく、私やハデスを相手にしても引けを取らないと思うわ。そんな彼女が落ちてしまったら大変な事になる。そうなる前に救済してあげないと」
「アッシーもニッキー同様、本来なら特別な星の下に生まれている。ただ、その運命に蓋をするようにゼウスの存在がそれを邪魔している。むしろ、彼女を解放してあげる事が一番の近道かもしれないわ」
「お、お言葉ですが女神ガイア。俺とアフロディーテ、そしてあなた。いくらあなたがいるとはいえ、三人ではユピテリアの戦力には到底敵わないと思うのですが・・・」
「もう! 私を見くびらないでよねアッピー!! 私だってやる時はやるんだから! 伊達に二国と拮抗を保っていないってところ、見せてあげる♪」
ガイアは微笑みウインクする。
調子を狂わされっぱなしのアポロンは、開いた口が塞がらなかった。
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