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第50話 千里眼


「これは『奈落の闇(エレボス)』を討伐し闇の浸食を食い止める話ではないのですか?! 今は戦争なんて仕掛けている場合ではないはずです!!」


アシーナは声を荒げる。


「ガイアという女神を知っているか?」


「それは当然知っています。それが何だと言うのです」


当たり前過ぎる質問にアシーナは一瞬戸惑った。


「名を問うているのではない。奴が持つ力を知っているのか、という意味だ」


「言われてみれば確かに、ガイアもそうですがハデスの事も素性を知りませんね」


デメテルは顎に手を当てる。


「ゼウス様や女神ガイア、そして冥王ハデスは一つ前の『銀の時代』を知る数少ない神。僕達は既に世界が分割されたこの『銅の時代』しか知らない。女神ガイアとは、一体どのような神なのですか?」


ミノス王はゼウスに問いかける。


「ガイアは自身の持つ神術も底が知れぬが、何より厄介なのは奴の持つもう一つの力である『千里眼(プロフィティア)』だ」


千里眼(プロフィティア)・・・」


「この千里眼は、神託と似ているが性質が違う。神託が世界に確実に起こる事象を大まかに伝えるのに対し、千里眼はより細かく細分化された未来を鮮明に見通す」


「神託はその過程は分からないが確定した未来が分かり、千里眼は過程がはっきりしているが結末は分からない。そういう意味では、神託と千里眼は対極にいると言っていい」


「加えて、神託はアテネ島に生えるオリーブの神木の前でないと聞くことができないのに対し、千里眼はガイア自身の能力だ。当たり前だが時と場所を選ばない」


「なるほど」


ミノス王は閃く。


「つまり、その千里眼があれば奈落の闇(エレボス)の動向が手に取るように分かるだけでなく、こちらから先手を打つことも可能になる。更に、場所を選ばない事で時間的猶予も生まれる。そういう事ですか?」


ゼウスの口角が上がる。


「そういう事だ。奈落の闇(エレボス)はどこから現れるか予測ができん。だが、現れる場所や存在さえ分かれば後はその芽を摘むだけだ」


「しかし、仮に侵攻したとしてうまくいくのか? そのように正確な未来予知をするガイアには、当然今起こっている事、直近で起こりうる事は視えているのだろう?」


ヘラは両手を組む。


「ガイアは。アースは国土だけは三領域で最大だが、国力だけで見れば我らに比べ遥かに劣る。ほぼガイアの力に頼っていると言っていい。戦力を投じ、圧倒的な力でねじ伏せる。」


「いつ再戦となってもいいように長い年月をかけてユピテリアの国力を養ってきたのだ。」


「それに、今年のエポヒは歴史を振り返っても例がない程優秀な者が五人。ねじ伏せることは容易い十分な戦力だ」


ゼウスはアシーナに期待の眼差しを向ける。


「・・・・・」


アシーナは唇を固く結び目を逸らした。


その様子を見ていたミノス王の表情が曇る。


「・・・・・私は。」


「私は反対です。たとえ奈落の闇(エレボス)の討伐という大義名分があったとしても、侵略行為は許されるものではありません。戦争など仕掛けなくても、他に方法はあるはずです」


ゼウスはため息をつく。


「元々三国間の争いは終わっていない。休戦しているに過ぎん。それに、闇の力に世界を汚染されるとなれば、どの道アースもタルタロスも辿る結末は同じ。であるなら、国を一つに統合した方が世界を管理しやすくなるというものだ」


「他の方法があるなら聞かせよ」


「それは・・・・・」


「話にならんな。筋を通したくば相応の答えを用意してから発言せよ」


「・・・・・」


アシーナは反論する事が出来ず黙ってしまった。


「私は賛成だ。遅かれ早かれ、奈落の闇(エレボス)がいようがいまいが、いずれは戦う事になるのだ。ならば、とっとと制圧して問題を解決した方が楽だ」


「私もヘラに同意ですね。今回は私達が侵攻するという立場かもしれませんが、当然我々もその逆が起こりうるリスクを抱えていた。戦争に善も悪もない。侵略されるか、されないか。勝利か、敗北か。あるのはその事実のみです」


「若神のアシーナにはまだ分からないでしょうが、これは許す、許さない、の話ではないのです」


二人の意見を聞いていたミノス王が口を開く。


「ご無礼を承知の上で。交渉の余地はないのでしょうか? 奈落の闇(エレボス)がいつ襲ってくるか分からないのは他国も同じ。であるなら、ここは互いの因果関係をひとまず置いて、共通の敵に当たるというのも一つの選択肢になり得るかと。敵の敵は味方とも言えますし」


「それができれば国を三分割していない。互いに譲れないからこそ現状が続いているのだ。こうしている今も、それぞれが虎視眈々と領土拡大を狙っている」


「むしろこの混乱に乗じてユピテリアに攻め入る事を考えている可能性すらある。一度攻め入られれば、先刻の襲撃の二の舞となる。ポセイドンをはじめ無視できない大きな損害があったのだ。それは絶対に避けなければならん」


ミノス王もそれ以上は何も言えなかった。


「決まりだ。それぞれ島の戦力を集め軍を編成し、いつでも進軍できるようにしておけ。良いな?」


皆が頷く中、アシーナだけはうつむいていた。


「アシーナ。汝に言っている。もう一度だけ言う。良いな?」


アシーナの煮え切らない態度にゼウスは語気を強めた。


「・・・・・はい」


「これにて会議は終了する。詳細は後日通達する。各々準備は怠るな」


それぞれ退室していく中、ミノス王はアシーナを気にかけ振り返る。


肩を落とすその姿は差し込む夕日と相まって小さく見えた。


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


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