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第49話 領主会議


ユピテリアに浮かぶ五つの浮島であるオリンポス、アテネ、ミュケナイ、デロス、クレタ。


ゼウスはそれぞれの領主をオリンポス神殿に招き定期的に会議を行っている。


現在、オリンポス神殿は復興中で使用できない為アテネ神殿にて行われているが、今回の会議は緊急という事もあり普段とは違い重々しい空気だ。


ミュケナイ島領主ヘラ、デロス島領主デメテル、クレタ島領主ミノス、そして新アテネ島領主アシーナ。


「汝らを招集した理由はただ一つ」


「あの災厄どもを・・・ニケと奈落の闇(エレボス)を殲滅するためである」


ミノス王は手を挙げる。


「結果的にオリンポス神殿を壊滅させてしまったのは僕の責任と言っても過言ではありません。女神メティスの狙いがニケ少年であった事に気づけず、少年をオリンポスに招く手助けをしてしまった。いかなる処分でも受け入れます」


「人間の分際で余計な事をするからこのような事になったのだ」


桜色の髪をなびかせヘラはミノス王を睨む。


「お待ちください。ミノス王も悪気があったわけではありません。そうでしょう? いくら人間が()()()()()()()()()()()()()()()()


「たかが人間が、そのような愚行に及ぶほどの度胸があるとも思えません。例え判断を誤ったとしても、寛大な心でそれを許してやるのが私達神々の務め」


デメテルは皮肉交じりに微笑んだ。


「・・・・・」


話を黙って聞いていたアシーナだけが不満気な表情をしていた。


「そもそも、なぜあなたはこのような人間を王に据えた? 人間は同じ過ちを繰り返す生き物。我が夫の判断にしてはいささか問題があると言わざるを得ない」


「そう言うな。人間が愚かな存在である事に変わりはないが、こやつだけは特別だ」


「何百年かに一度、人でありながら神々に匹敵する膨大なエーテルを宿し生まれる者がいる。その者達は『英雄』と呼ばれ、ヘラクレスを筆頭に人間とは思えぬ潜在能力を有した者達だ」


「ミノスはそれらの中でも特に異質。であれば、捨て置くよりも迎え入れた方がよほど国の為であろう」


ゼウスの話に対し、明確な答えを持ち合わせていなかったヘラはただ沈黙した。


「敬うべき神々に議論する時間を作らせてしまった事、謝罪いたします」


ミノス王は王冠を取り深く頭を下げた。


「ミノス王! やめてください!! 王の判断は間違っていなかった!! 取れる最善の行動だったと思います!!」


アシーナは勢いで立ち上がった。


「誰も動けなかった中、ミノス王だけが迅速に対応してくださいました。それに、未来の事は誰にも予測不可能です。ミノス王が謝る事ではありません。人間であるという理由だけで一人に罪を着せるのは筋違いかと」


アシーナはヘラ達を一瞥する。


「アシーナ。たとえゼウス様の愛娘であろうと、人間を擁護する行為は見過ごせぬ」


「確かに、ミノスは人間にしてはやる方だ。しかし、我々神が人間を擁護するなどあってはならぬ。調子に乗った人間が、またも歴史を繰り返す事になる」


「アテネ島の領主になったばかりの新参者が、安易に口を挟むものではない」


ヘラは釘を刺す。


「それもそうですね。アシーナにあのメティスの変わりが務まるとは到底思えませんし」


デメテルは頷きヘラに便乗した。


「私が神としての品格も、領主としての手腕もメティス様に遠く及ばない事は百も承知。それは受け入れます。」


「しかし、その新参者よりも行動が遅かった崇高な領主様方はどこのどなたでしょう? ミュケナイ島とデロス島から援護が来たのは神殿が壊滅した後です。空間の歪みのせいでゲートが使用できなかったとはいえ、やれることはあったはず。とても最善の行動を取ったとは思えないのですが」


「まさか、経験豊富なあなた方に限って()()()()()()()()()という事はないでしょう?」


アシーナは二人を見下ろす。


「・・・・アシーナ」


「ここ最近の若神にしてはそこそこ腕は立つようだが、あまり調子に乗るな」


ヘラとデメテルは怒りを露わにする。


「ア、アシーナちゃん落ち着いて! 僕は何とも思ってないから!」


ミノス王はヘラ達の顔色を伺い、小声でアシーナをなだめる。


「アシーナ。座れ」


ゼウスは圧をかける。 


「・・・申し訳ございません」


納得のいかない顔をしたままアシーナは席に着いた。


ゼウスは小さく息を吐く。


「今議論すべきはそこではない。あの厄災どもをどう粛清するか、だ」


「見つけ次第殺せば済む話だろう? 今回は計画的に攻められ主導権を握られたが故に後れを取ったが、こちらから仕掛ければ問題ないのでは?」


「それができれば苦労はない。メティスが厄介なのは今更語る事もないが、あの厄災ニケも思っている以上に力をつけていた。何より、奴の能力が非常に厄介なのだ。認めたくはないがな」


「ただ生命力、エーテルを吸収する奈落の闇(エレボス)の闇の力と違い、ニケは吸収した力を全て自身の能力として蓄積していく。その性質上、時間を掛ければ掛けるほど奴の力は増大していく事になる。我々でも手を付けられない存在になりかねない」


「ではどうするのですか? 迅速に処理せねばならないにも関わらず、下手に相手にすれば取り込まれ相手の力が増すだけとなると打つ手がないように思えますが」


ゼウスは頬杖をつく。


「地上領域アースを我が領地にする」


「・・・・え?」


アシーナはその言葉を聞いて凍り付いた。


他の領主たちも言葉を失っていた。

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