第48話 アポロンの提案
レトは小さな祠の前に立っていた。
「ここって確か・・・」
レトはアマルティアの僅かなエーテルを感じ取り祠へたどり着いた。
恐る恐る中へ入っていく。
しばらく進むと淡い青色の光が漏れるエーテルの泉が見えた。
その傍らに、一人の女性が傷だらけで倒れているのを発見する。
「アマルティア学院長!!!」
レトは急いで駆け寄り声をかける。しかし返事はない。
身体中傷だらけではあるが、息をしている事は確認できた。
「良かった・・・」
「早く助けを呼ばないと」
レトはアマルティアを寝かせ、目を閉じた。
レトの周りにエーテルで創造した小鳥が数体顕現する。
「お願い」
レトは鳥たちに語りかけ、祠の外へ飛ばした。
「もう少しの辛抱です。何とか耐えてください」
レトは祈るようにアマルティアの手を握った―――――。
一か月後―――――。
アレスを除いたエポヒの四人は一旦アテネ島のパルテノン神殿に身を寄せていた。
アシーナは、皆んなが散り散りになるのは危険と判断し当面は彼らがアテネ神殿で過ごせるように手配した。
アシーナはメティス襲撃のすぐ後に正式にアテネ島の領主に任命され、アテナイ村をはじめとするアテネ島の政やオリンピア上級学院復興の仕事に追われていた。
現在はアテナイ村を拠点とし尽力している。
何者かがアシーナの作業する領主室のドアをノックした。
「どうぞ」
アシーナは作業しながら返事をする。
「アシーナ。少しいいか?」
「もちろんよ。どうしたの? アポロン」
アポロンは机に山積みにされた書類を眺める。
「領主に任命されてからずっと忙しそうだな。身体は大丈夫なのか?」
「ええ。まだ領主の仕事に慣れ始めたばかりで、分からない事も多いけどね。何とかやれているわ」
アシーナは苦笑いする。
「あまり無茶はするなよ。助けが必要ならいつでも言ってくれ」
「ありがとう」
奥の扉が開き両手に書類を抱えたアルテミスが慌ただしく入ってきた。
「お兄様?! どうされたのですか? 顔を出してくださるなら、言ってくれれば良かったのに」
アポロンはアルテミスの肩を軽く叩く。
「緊急と言うわけではないが、早めにアシーナに伝えようと思った事があってな」
「そういえば聞きそびれちゃったわね。どうしたの?」
「アシーナ。いつでも助けると言った手前申し訳ないのだが、俺はアフロディーテと共にアースへ向かおうと思う」
「そう。アースへ・・・アポロンの事だから、きっと何か理由があるんでしょ?」
「ああ」
「宴の席でティタノマキアについて学びたいという話はしたな。メティス様の話も踏まえ歴史を解き明かす事が、奈落の闇や世界の事を知る近道になるはずだ」
「俺の推測が正しければ、これはユピテリアだけの問題ではない。アースもタルタロスも関係しているように思えてならない」
「本当なら先にタルタロスに向かいたかったが、俺は冥界領域タルタロスに渡る術は持たない。そこでまずは地上領域アースに向かい、アースを統べる地母神・ガイアにコンタクトを取ることにした」
アシーナはしばらく熟考する。
「そうね。現状、私達には情報が無さすぎる。知らない事があまりに多い。お父様にも掛け合ってはいるけど、あの襲撃以来まともに会話をしてくれない・・・私達で解明していくしかないわ」
「だけど大丈夫? アースもタルタロスもかなり勝手が違うはず。それに、今はお父様の力でそれぞれの領域へのアクセス手段は限定されている。各領域に点在する、三領域を分断する時にできた溝、激しくエーテルの流動する『テュラー』を通らなければならない。かなり危険よ」
「お兄様は昔から一度気になりだしたら止まれませんから」
アルテミスはアシーナに微笑みかける。
アポロンは頬を掻き頷く。
「その通りだ。だから・・・」
「だから私に泣きついてきたのよね。モヤシさん?」
いつの間にか現れたアフロディーテは皮肉を言う。
「・・・・・」
アポロンは額に手を当て大きく息を吐いた。
「そっか。アフロディーテはアース出身だったものね。それなら勝手も分かるし、移動手段も問題ないわね。それにしても・・・」
「何だ。やっぱりそういう事なんじゃない。変に隠そうとしなくても二人はお似合いよ」
アシーナは急に目をキラキラさせた。
「アシーナ、早まるな。違う。これはそういうんじゃない」
「説明は省くが、少し事情があるんだ。」
(・・・あれ?)
その場に居合わせたアルテミスだけがある違和感に気付いた。
「なになに? 聞かせてよ」
アシーナはワクワクして顔を近づける。
「せっかくの妄想をぶち壊すようで申し訳ないが、単に弱みを握られているだけだ」
アポロンは深くため息をついた。
「とにかくそういう事だから、私とアポロンはユピテリアを離れるわ。あなた達二人になっちゃうけど・・・まあ、何とかしなさい。生徒会長と副会長でしょ」
「あはは。元ですよ。アフロディーテ様」
アフロディーテはアルテミスに微笑みかけ踵を返す。
「じゃ、そういう事だから後の事はよろしくね~♪」
背中越しに手を振りアフロディーテは部屋を出ていった。
「やれやれ・・・この先ずっとこんな思いをしなければならないのか?」
「あはは。アフロディーテのような女の子が彼女じゃアポロンも大変そうね」
「アシーナ・・・お前、見かけによらず頑固だな。いや、筋金入りの天然か?」
「何の話?」
その返答でアポロンは全てを悟った。
そして諦めたように肩を落とす。
「・・・アルテミス。アシーナの事、頼んだぞ。色んな意味で」
苦笑いするアルテミスに別れを告げアポロンもアフロディーテの後を追った。
「ねぇアルテミス。アポロンは何の事言っていたの? よく分からなかったのだけど・・・」
「アシーナ様は気にしなくていいんです!! そのままでいいんです!!」
アルテミスはアシーナの手を握り激しく揺さぶった。
されるがまま、アシーナは揺さぶられながらただ首を傾げていた。
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