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第46話 集まり始める運命の欠片


「こちらへ」


メティスに導かれるまま俺達三人は後に続いた。


辺りは薄暗く、空は分厚い暗雲が立ち込めており遠くで雷鳴が響いている。


メティスは大きな廃墟の前で立ち止まった。


目の前には今にも崩れ落ちそうな神殿らしき名残が残る建物が静かにそびえている。


「決してもてなせるような所ではないので、そこはお許しください。」


「求めていない。気にするな」


中へ入ろうとすると、ピュラは建物に興味を持ったのか指をくわえて一人別方向へ歩き出した。


「ピュラ、こっちだぞ」


俺とテッサはメティスの後に続き廃墟の中へ入っていく。


ピュラも小走りでニケ達の後を追った。


しばらく歩くと松明に灯された円形の広場についた。中央には長い階段が伸び、その上には巨大な玉座が佇んでいる。


「ここならば、ゼウスの手も伸びることはありません。」


「ここがお前ら『奈落の闇(エレボス)』のアジトなのか?」


「ええ。正確に言えば()()()()()()()()、ですね」


ピュラは玉座に釘付けになり近くで見ようと走っていく。


「答えろ。お前達は一体何なんだ? 俺のこの力は何だと言うんだ?」


俺は玉座の周りを走り回るピュラを一瞥し、メティスに尋ねる。


メティスは軽く深呼吸しゆっくりと俺の前に立つ。


「先程は失礼いたしました。いち早く事実をお伝えする必要があったとはいえ、順序を間違えてしまいましたね」


「先程もお伝えしましたが、あなたのその闇の力は世界に選ばれし救世の力。全ての闇の力はやがてあなたへと戻ります」


俺は眉を上げる。


「それはオリンポス神殿で体験した。アトラスを始めその他4人のエーテルが俺に集まり、俺はその力を取り込んだ。お前の部下のモノだろう」


「俺が聞きたいのはその先だ。仮にお前の言う通りだとして、俺に闇の力が集まる事で何が起きると言うんだ?」


メティスは真っすぐ俺を見据える。


「あなた様やアシーナが生まれる少し前に、私はアテナイ村の神木にて神託(オラクル)を受けました」


「今、この世界は・・・いいえ。この星はエーテルが枯渇しています。このまま放っておけば近い将来、星の命は燃え尽き神を含むこの星に生息する全ての生物の歴史は終わりを迎える事になるでしょう」


「なんだと・・・・?」


俺とテッサは言葉を失った。


「・・・つまり、この世界は何気なく消費しているエーテルをエネルギーとして成り立ち、その消費を加速させているのが神術。そして、その神術のせいでエーテルが間もなく底をつくと。そう言う事ですか?」


「ほう。人間にしては頭が切れるな。そういう事だ」


「待て。そうは言っても世界は広い。そんな簡単に枯渇するものなのか?」


俺はメティスに疑いの目を向ける。


「これはここ数年の話ではなく、ウラヌスの時代から既に始まっており何千年と積み重ねられた結果。そして、『銀の時代』ゼウスまで受け継がれてしまった」


「・・・・・どういうことだ?」


「神術の基礎を築いたのはウラヌス神です。そして長い時間をかけ神術は神々に代々受け継がれている」


「その地盤を固め神々に神術を覚醒させ広げているのがウラヌスの血を引くゼウス、という事です」


「ゼウスは己の束ねる神族のみがエーテルを享受できるようシステムを構築し、神術と名付けた超常的な力をもって人間を従える事にしたのです。人間に反乱を起こさせないために」


「少し話が逸れましたが、ともかくゼウスの一族がエーテル消費を加速させた事で星の寿命を縮める事になった。そしてその寿命は間もなく潰えようとしている」


「私が神託(オラクル)を受けたのはここまでです」


「まるでゼウスに反発するかのように、タイミングを合わせるように世界中で発生し始めた我々『奈落の闇(エレボス)』の闇の力。そして時代に逆らうように、紋章を持たず神の血が流れながら神術を使用出来ない身体で生まれたあなた様。これらが偶然とは思えません」


俺は顎に手を当て思考を巡らせる。


「つまり、この闇の力は星自身が生み出した防衛本能・・・・?」


メティスは頷く。


「実際に、闇の力は生物のエーテルを吸収する力。そして、あなた様はそれだけに留まらず吸収した能力をそのまま自身の力として蓄積する事が出来る」


「正直な話、闇の力に関しては未だ推測の域を出ません。しかし、そう考えれば辻褄が合います。闇の力も、この『銅の時代』に紋章を持たぬあなた様が生まれた事も」


「という事は、『奈落の闇(エレボス)』という組織はお前が作ったものではなく、文字通り星がランダムに選出した者達・・・」


「その通りです。事実として、『奈落の闇(エレボス)』は天空域ユピテリアだけでなく、地上領域ガイアや冥界領域タルタロスにも発生し存在していますし、私を含め後天的に目覚めた者しかいません」


「いずれはそれらの力は全てあなた様に返り、あなた様を通して星にエーテルを返還する。その役割を与えられた者があなた様」


「これが、ニケ様が救世主たる所以ではないかと、そう思う理由です」


ふと目をやると、ピュラはいつの間にか玉座に座り眠っていた。


「なるほどな。大体は理解した。だが正直、世界や星がどうだと言われても到底信じられない。まして、神の欠陥であるこの俺にそんな特別な力が宿っているなど」


メティスは苦笑いする。


「本来ならば、ニケ様を察知した時点でコンタクトを取るべきでしたが・・・ゼウス討伐の計画を遅らせるわけにもいかず、無礼を承知であなた方の動向を監視しておりました」


「あなた様はゼウスを恨んでいた。そして我々は初めからゼウスの首が狙いで、かつ早期に暗殺を実行したかったが故に、そこで眠る巨神族の少女を利用させてもらいあなた様の注意を神殿に向けさせる事にしたのです」


「結果的に、あなた様をだます事になってしまい申し訳ありませんでした」


メティスは深々と頭を下げた。


「気にするな。元々私怨でゼウスを殺すつもりでいたが、話を聞いてむしろ殺す大義名分ができて動きやすくなった」


「今回、オリンピアにおいてゲートを使用させないために細工をしましたが、まさかあそこまで早く解除されるとは思いもしませんでした。それに加えて部下は全滅。ある程度予測していましたが、あの状況下では計画続行は不可能と判断しました。」


「しかし、次は必ず成功させます。ゼウスは生かしておいてはいけない。このまま生かしておくのはこの世界の死期を早めるだけです」


メティスは天井を見上げる。


「次がいつになるかは分からんが、その時は俺達がいる。今回のようにはなるまい。ゼウスは俺にとっても必ず殺さなければならない相手だ」


俺は拳を強く握る。


「それはそうと、これからどうするのですか? 今ユピテリアに戻るわけにもいかないでしょうし、こんな陰湿な所で生活するのも抵抗があります」


テッサは広場を見渡す。


「案ずるな。向かう場所は決めてある」


「差支えなければ聞いても?」


「タルタロスだ」


広場にひと際明るい閃光が光り、重く響き渡った雷鳴が壁や割れたステンドグラスを揺らしていた。


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