第45話 対立する光闇
「何だ?!」
アレス達は大きなエネルギーを察知し神殿の最上階を見上げる。
神殿は崩壊を始めそれぞれ衝撃を回避し神殿から距離を取った。
「アシーナ様!!」
アルテミスは上空に投げ出されたアシーナの姿を捉える。
アシーナは無数の盾で瓦礫を弾きながら回転し地面に着地する。
華やかな神殿は埃を巻き上げる瓦礫となり、もはや原型を留めていなかった。
アシーナはすぐに上空を見上げ警戒する。
アルテミスはアシーナに釣られ同じ方向を見上げた。
遅れてゼウスが地面に着地する。
上空に浮遊しゆっくりと下降する三人の人影を捉えた。
ゼウスと対峙する女性のエーテルを感じ取りアルテミスは息を呑む。
「なんて膨大なエーテル・・・・」
メティスは自身とニケ、ピュラを捻じ曲げた重力の空間で包み込み衝撃から守りながらゆっくりと地面に着地した。
「わざわざそんな事をしなくても俺とピュラは問題ない。」
「そのようです。これは余計なお世話でしたね。」
メティスは空間を解く。そしてゼウスの方へ向き直った。
「ほう。これは中々壮観だな」
アシーナをはじめとするエポヒの五人はメティスの強烈なエーテルに緊張した面持ちだ。
「お母様・・・」
重圧に耐えきれないデイモスとエリスは腰が抜け、その場に座り込んでしまった。
「・・・化け物が」
アレスは舌打ちする。
「まさか、本当にメティス様だったとは・・・あなたのような聡明な女神が、一体どうしてオリンピアを襲うのですか?」
アポロンはメティスに問いかける。
その頬に冷たい汗が伝う。
「あのお方がメティス様・・・」
アルテミスは不安な様子でアシーナを見る。
「アポロンか。天空域ユピテリアにも少しは頭の回る奴がいるようだな」
メティスはアポロンを見て口角を上げる。
「そこをどけ」
俺はメティスの前に立ちゼウスを睨む。
「随分と生意気な目をするようになったものだ。神でも人間でもない中途半端な生ゴミが、誰に歯向かっているのか未だに分かっていないようだな」
ゼウスは俺を睨む。
俺は下半身に力を入れ右腕を黒霧の炎で包む。
目にもとまらぬ速さでゼウスの間合いに飛び込んだ。
周囲に激しい金属音が鳴り響く。
純白の縦長の盾が俺の右腕を止めていた。
盾がギシギシと音を立てる。
ゼウスを守るようにアシーナが俺の前に立ちはだかっていた。その表情には不安と悲しみが滲んでいる。
「・・・・アシーナ」
「・・・・ごめんなさいニケ。私、やっぱりただ黙って見ているなんてできない」
「そうするだろうとは思っていた」
俺は後方へ飛び纏った炎を消す。
「覚悟はとうに決まっている」
「立ちはだかるなら、今この瞬間から敵同士だ」
アシーナは胸の奥底で重く疼いた心に息苦しさを覚える。
ニケの言葉は、まるで研ぎ澄まされた鋭利な刃物で刺し込むようにアシーナの心を抉った。
俺は全身を黒霧に包み戦闘態勢に入る。
「・・・ニケ」
アシーナはニケの強大な闇の力の前に息を呑む。
アシーナに攻撃を仕掛けようとした時、メティスが俺の前に立ち腕で制した。
「ここは一度引いておくべきかと」
「・・・何だと?」
メティスはアシーナの横で身構える四人を見る。
「私の部下が全員エポヒにより倒されました。元々期待はしていなかったとはいえ、それなりに腕の立つ者どもだった。彼らは瀕死とはいえ、それらを打ち負かした。それに・・・」
「私が施していた重力場の歪みが何者かによって解消されたようです。ゼウスとアシーナ、それに他のエポヒ。これらを一度に相手にするのは流石のあなた様にも荷が重いでしょう。長引けば援軍が到着する可能性も高い」
「今は引くことが最善だと判断します」
メティスは力を開放する。
「あなた様はこの世界の唯一の希望。死なせるわけにはいきません。それでも戦うと仰るならば、私がこの身を賭して道を切り開きましょう」
「・・・待て。お前にはまだ聞かなければいけない事がある。勝手に死なれては困る。いいだろう。この場は従っておく」
俺は一度だけ頷いた。
ゼウスは眉間にシワを寄せ鋭い視線でメティスを睨む。
「誰が生かして帰すと言った。貴様らはこの私を完全に怒らせた。私のテリトリーで好き勝手しておいてただで済む筈がなかろう」
「殺す。今ここで」
ゼウスが一歩踏み出した時、凄まじい破裂音と共にメティス達の後ろに巨大な黒いゲートが開いた。
「潮時だ。ゼウスよ、お前の屍を拝めないのは残念だがそれはまた別の機会に取っておく」
「させぬと言っている!!」
『雷雨』
上空に形成した巨大な雷の塊がメティス達に襲い掛かる。
『澗』
極限まで捻じ曲げられた重力空間の膜がメティス達の周りを覆う。
大雨のようにとめどなく降り注ぐ雷撃は全て三人を避け地面に突き刺さる。
「メティス、貴様ぁ・・・」
ゼウスは歯を食いしばる。
「それではお二人とも、こちらへ」
メティスが滑らかな所作で俺とピュラをゲートへ誘う。
「お前はどうする?」
俺はアレスの方を見て投げかける。
アレスは背中に感じていた重みが消え、体が軽くなったのを感じた。
テッサは瞬時に俺の横に付く。
「私は人間ですからここにいても仕方がありません。それに、あなたには断界七刀の回収を手伝って頂かないといけませんので」
「それと、お前ではありません」
俺はため息をつく。
「短い間でしたがお世話になりました。アレスさん」
「別に何もしちゃいねえ。次に会う時は戦場だ」
アレスはニヤリと笑う。
「そうですね」
テッサは微笑む。
アレスの横で名残惜しそうに涙ぐむエリスに目をやる。
「いつかまた。エリスさん」
俺、ピュラ、テッサはメティスに誘われるまま黒きゲートにその身を投じた
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