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第27話 断界七刀


俺とピュラはそれぞれ順調に勝ち進み、いよいよ準決勝というところまで来た。


ピュラも、相手を殺さないという約束を守っている。


ただでさえ希少な存在だ。下手に恨みを買って狙われたりしたら危険が増す。


下げれるリスクは下げておいた方が無難だ。


「ピュラ。次を勝てば決勝で俺と当たる。いいか、わざわざ俺とお前が戦う必要はない。俺がわざと負けてお前に勝利を譲る。それでお前が優勝して終わりだ。」


「いいな?」


「うん!! だいじょうぶ!! はやく、ほうしゅう? ほしい!」


とはいえ、ピュラの対戦相手はあの黒フードの男だ。


あの男、間違いなく普通ではない。何も起きなければいいが・・・


黒フードの男は俺と反対のブロックのため、バトルの様子を見る事ができなかった。


どんな戦い方をするのかだけでも知っておくべきだったか。


とにかく、今は考えていても仕方がないな。


「そろそろ時間だな。行って来い」


「おーーー!!!」


俺は元気に出ていくピュラを見送り観客席へ移動した。


一番上段の端に腰を下ろしバトル開始を待つ。


「隣、よろしいですか?」


透明感のある美しい声が聞こえた。


白銀の女性は長刀を右手に、腰には綺麗な緑色の装飾が施された風、もしくは空気といったクリアなイメージを連想させる、美しい曲線を描く片手剣が光っていた。


俺は予想外の訪問者に疑問を抱いた。


「構わないが。お前、Aランクではなかったか? わざわざこんなところに何しに来た?」


「はぁ・・・やはりピュラさんの言葉遣いの原因はあなたにあるのですね。それに、お前ではありません。テッサです。」


テッサはため息を漏らしながら、一人分の間隔を空けて腰掛けた。


「不快な思いをさせたのなら悪かった。気を遣うのは苦手なんだ。」


「それで、何故ここに来た? Aランクのバトルの方はいいのか?」


「Aランクの方はすでに全てのバトルが終了しました。それに、ピュラさんのバトルに興味がありましたので。」


腰の剣に目をやる。


確か初めて会った時は持っていなかった。


なるほど。Aランクの優勝者はテッサというわけか。


Aランクは強者揃いのはずだ。普通ならハイレベルな者同士の戦いになるため、バトルは長期戦になる傾向がありBランクよりも時間が掛かる。


「随分早かったな。Aランクの方が弱い奴が多いのか?」


「どうでしょう? 元々参加者も少なかったみたいですし。それに、私は一刻も早く剣を回収したかっただけですので。」


テッサは腰の剣を愛でるように優しく撫でた。


「その腰の剣といい、手に持つ長刀といい、剣を集める事が趣味なのか? 対戦相手が集剣狂だとか何とか言っていたが。」


「それにその刀、まさか精霊が宿っていたとはな。実在するとは思わなかった。ピュラは精霊の匂いを嗅ぎ取っていたわけだ。」


テッサは目を閉じ軽く息を吐く。


「・・・趣味であればどれだけ楽でしょうか。」


「色々と噂されているようですが、私の目的は剣を集める事ではありません。」


「この世界に散らばる『断界七刀』。これらを全て回収することが私の使命。必ず果たさねばならない私の業。剣なら何でもいい、というわけではありません。私は、七本さえ回収できればそれでいいのです。」


「Aランクの報酬であるこの剣は、その『断界七刀』のうちの一振りアルシオーネです。」


断界七刀。


伝説の鍛冶神へパイストスが打ったと言われる七本の神剣。


その名の通り一振りで世界を割ると称されるほどの名剣。へパイストスが打った数多の刀剣の中でも最高傑作と言われる七本だ。


「そのアルシオーネにも精霊が宿っているのか?」


「ええ。七本全てに精霊が宿っています。」


「なるほどな。それならあの超常的な力も納得だ。それだけの実力があれば、そう遠くないうちに使命とやらは達成できるんじゃないのか?」


「そんな簡単な話ではありませんよ。私は神ではなく、ごく普通の一般人ですから。」


テッサは相変わらず表情を変えずに淡々と答える。


「なぜ断界七刀にだけ精霊が宿っているんだ? 確かに、特別な剣である事は素人でも分かる。だが、精霊は理想郷エリュシオンの住人。まさか、その七体しか精霊がいないわけではあるまい?」


「・・・・・それに答える義務はありません。」


「・・・そうか。無理に話す必要はない。ただの好奇心だ。忘れてくれ。」


俺は一瞬見せたテッサの悲し気な、追い詰められたような表情を見逃さなかった。


何となくだが、その事に触れてはいけない気がした。


「それはそうと、余計なお世話かもしれないが一応伝えておく。」


テッサは不思議そうに首を傾げる。


「何でしょう?」


「俺の勘違いかもしれないが、どこか焦っているように見えた。何があったのかは知らんが、そんな追い詰められたように生きていたらいつかその重圧に押し潰されるぞ。」


「それに、せっかくの美貌が台無しだ。自分の身体は労わってやれ。」


それを聞いたテッサの表情が一変する。


「なっ?!! いきなり何を言い出すのですか?!!」


全く予想外の事を言われ耳まで赤くなった。


「何か気に障るような事言ったか?」


「そ、そうではありませんが!! 突拍子もないにも程があります! 全く・・・あなたといいピュラさんといい、調子が狂いますね。」


テッサは咳払いして自分を落ち着かせる。


(ニケさんの言葉には嘘はない事は分かる。それにしても、ここまで裏表のない人は珍しいですね。それに・・・・・)


テッサは急に恥ずかしくなり首を振る。


目の端で捉えたニケは不思議そうに眉をしかめている。


「そ、そろそろピュラさんのバトルが始まりますよ。」


「そうだな。」


テッサは、まだ不可解な顔をするニケを尻目に気を紛らわすように闘技場を注視する。


二人が闘技場に注目した時、ちょうどバトル開始の鐘が鳴り響いた。


ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!


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