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第24話 紅一点


「いいか、くれぐれも勝手な行動はするなよ。」


俺とピュラは控室で準備を整え待機していた。


物珍しさに辺りをきょろきょろしていたピュラは頷く。


何気なく室内を見渡す。


殺気立った血の気の多い連中ばかりが目立っていた。闘技場ではそれも当然か。


ピュラが俺の服の裾を引っ張り奥の方を指さした。


指さす方向を目で追う。するとベンチに一人腰かける女性が目に留まった。


「こんなところに女?」


暑苦しい男たちの中に一人、銀髪の綺麗な顔立ちの女性が目を閉じ静かに座っていた。


彼女の身の丈程の長さはありそうな刀が、青色の装飾が施された真っ白な鞘に納められ膝の上に置かれている。


控え室の中は彼女を除いて全員男だ。それだけで注目を集めるには十分だった。


どこか妖艶な雰囲気を持つ彼女に引き寄せられるように、剣を携えた一人の男が銀髪の女性に近寄る。


「お姉さんも参加するのかい? その美しい顔に傷が付いたらせっかくの美貌が台無しだ。やめておいた方がいいんじゃないのかい?」


男はまるで壁にでも話しかけているようだ。銀髪の女性は目を閉じたまま一切反応を示さない。


「刀を持っているってことは剣士かい? 女性でそんな長い刀を扱うなんて珍しいね。ちょっと見せてよ。」


男が純白の刀に触れようとした時だった。


俺は一瞬目を疑った。


動体視力は優れている方だと思っていたが、それでも理解するのに数秒かかった。


彼女の右手には鞘が握られている。


だが、左手の長刀は男の首元にその切っ先を向けていた。


彼女が抜刀していたことに気づかなかった。


純白の刀は確かに装飾の施された鞘に納められていたはずだ。


あの長さの刀を、気づかせぬ速度で抜刀するには相当な技量が必要なはずだ。


まして、あの速度を座ったままでやってのけるとは。


間違いなく、彼女はここにいる参加者の中でも群を抜いている。


「気安く触れないで頂けますか? 穢れてしまいます。」


女性は切っ先を男の喉に突き付けたまま平然と話す。


澄んだ紫水晶の瞳は微かだが殺気を帯びている。


男は何が起こったか分かっていない様子だったが、それが怒りに変わった。


「チッ!! 何ムキになってんだよ。冗談も通じねえのか。」


男は唾を吐き捨て、地面を蹴るように音を立て女性から離れていった。


銀髪の女性は流れるような所作で長刀を鞘に納め再び目を閉じた。


「にけ!! あいつからいいにおいがふたつもする!!」


「分かったから、人を指さして大声出すな。」


俺はピュラの腕を無理やり降ろした。


「お待たせ致しました! 準備が整いましたので、Bランク参加者はこちらにお集まりください!」


運営の進行役らしき男が声を張る。


別室に案内された俺達は黒板に書かれたトーナメント表に注目した。


計20名の名前が記されている。


俺は自分とピュラの名前を探す。


俺はAブロックの一番左、ピュラはBブロックの真ん中にその名があった。


勝ち進めばピュラとは決勝で当たることになる。とりあえずは安心だ。


「ランクごとに闘技場が異なります。今回の大会はシングル部門に限定して行われ、ランクA・B・Cで三つの闘技場で分け、それぞれ並行して進行します。」


「既にご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、シングル部門は一対一のトーナメント方式です。バトルは合図と同時に互いの門が開かれた瞬間に始まります。」


「神術をはじめ武器や防具といったあらゆる手段が許可されています。勝敗は、どちらかが負けを認めるか、バトル継続が不可能となった時点で決します。」


「次の試合の出場者の名前はコロシアムの掲示板にて表示されます。表示されたらこの部屋までお越しください。それまでは自由にお過ごしください。」


「簡易的ではありますが以上で説明は終わりです。何か質問はありますか?」


皆しばらく沈黙していたが、一人の男が手を挙げた。


「制限時間はないのか?」


「ございません。決着がつくまでバトルは継続されます。他にありますか?」


役員が見渡すと、一番後ろにいた頬に紋章が刻まれた大男が手をあげていた。


「バトル継続が不可能となった時点で決着という事は、殺しても構わないという事だな?」


「そうなってしまうケースもゼロではありません。」


それを聞いた大男はニヤリと笑った。


男の質問により場の空気が一気に緊張に包まれた。


「・・・・・あの男。」


俺は黒フードの男を一瞥する。


理由は分からないがどうも気になる。何事も起きなければ良いが。


「他に質問は・・・なさそうですね。それでは初戦はニケ選手とテセウス選手です。こちらで最終準備をお願いいたします。」


「いいか、あまりウロウロするなよ?」


俺はピュラがどこかに行ってしまわないように釘を刺した。


「だいじょーぶ!!」


ピュラは元気に手を上げる。


俺は役員に誘導され闘技場へ向かった。


コロシアムは扉を開けば選手同士が即対面するようなシンプルな構造だ。


固く閉ざされた鋼鉄製の扉の前で止まる。


「この扉の奥へ進むと、柵があります。柵が上がったらバトル開始です。バトルが終了するまでこの扉が開かれることはありませんのでご注意ください。」


俺は一度だけ頷き、如何にも重そうに開かれた扉をくぐる。


俺が入ったことを確認し、扉は大きな音を立てゆっくりと閉じられた。


控え室の中よりもはるかに声援がうるさく聞こえる。


俺は目を閉じ息を吐く。


「仕方ない。不本意ではあるが、やるからには優勝する。」


目を開くと同時にバトル開始の鐘が鳴り響き、戦いの幕が上がった。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


評価およびブックマークありがとうございます!


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