第11話 古の邂逅
この星の誕生は、約1000万年前まで遡る。
この時代を『創星の時代』と呼ぶ。
その後、歴史は象徴的な4つの出来事により分類されるようになる。
古い順に、『星の時代』、『黄金の時代』、『銀の時代』、そしてニケたちの生きる現代である『銅の時代』。
この4つの時代は、それぞれおおよそ2000年の間隔が空いている。
つまり、『星の時代』から数えて現代である『銅の時代』は約8000年の月日が流れているということになる。
元々この星にはエーテルに満ち溢れ、神術の使用も現代ほど制限がなく自由に使用していた。神々や人間を含む生物は生活に困ることはなかった。
ところが時代が進むにつれエーテルが徐々に減少し、特に現代である『銅の時代』ではかつての面影はなく、生物だけでなく神々の生活にも影響が出始めている。
現代では、神々は限られた資源の中で神術を使用しなければならないため、長時間の展開・維持が困難となっている。
時は『星の時代』に遡る―――――。
夜空に輝く星々。
それぞれが存在を主張するように煌々と輝くそれらは、大小、色合い様々な表情で真黒な夜空を彩っている。
その幻想的な星空は平時であれば見る人全てを魅了しその壮大さに言葉を失わせるには十分だろう。
そんな神秘性とはかけ離れ、金属音や喧騒が響き渡り夜空に散りばめられた宝石を塗りつぶすように黒煙が所々に立ち上っている。
「やはり反乱を起こすのはお前だったか。」
純白のマントに身を包み、美しい緑髪の誠実さがあらわれた整った顔立ちの男が燃えるような真紅の眼差しを向ける先には一人の男と黒いドレスを着た女性の姿がある。
全てを飲み込むような深い黒色の長髪、使い古されたボロボロのマントがスラッと伸びる手足を隠している。
マントから覗く手足には肌を隠すように布が巻かれている。
黒髪の男は金色の装飾が施された黒い大鎌を視線の先にかざす。
「世界を正しい方向へ導くためのものだ。反乱ではない。」
純白の衣服に身を包む男は思わず笑みを浮かべる。すでに何人か手に掛けたのか、返り血を浴びその純白の服を真っ赤に染め上げている。
「フッ。よく言う。反乱を起こすのに大義名分が欲しかったのだろう?」
純白の男は真剣な面持ちで漆黒の男を見つめる。
「そこを退くのだ。クロノス。その女はあまりにも危険だ。世界を破滅に導く。」
クロノスは大鎌を握り直す。
「断る。お前は間違った判断をしている事に気づいていない。このままでは取り返しのつかない事になるぞ。ウラヌス。」
ウラヌスは剣に滴る血を払う。
「お前の行動は理解しかねる。間違っているのはお前だよ。」
「その女は世界を滅ぼしかねない力を宿している。生かしておけば星の存続に関わる。」
「それほど危険な存在なのだ。」
ウラヌスはクロノスに剣を向ける。
「さあ、そこを退くのだ。最後の忠告だ。」
会話は止まり、戦火の中にいるのか疑わしくなるほどの静けさが二人を包む。
後方でぶつかり合う戦火の大群の真ん中に、神術による爆撃が放たれる。
大きな爆音と共に大量の断末魔が奏でられ、人々が細かい砂粒のように軽く吹き飛んだ。
「どうしても考えを改める気にはならないのか?」
クロノスは問いかける。
「愚問だ。星の命と人間一人の命。どちらを選ぶべきであるかは明白だ。」
「何を言われようが答えは決まっている。この世界を統べる者として。」
ウラヌスは祈るように剣を胸の前で掲げ目を閉じる。
「譲る気はないのだな・・・」
クロノスはドレスの女性に離れるように促し、巨大な大鎌を構える。
「もはや言葉は不要。分かりあえないのなら、不本意ではあるが力に頼るしかない。」
ウラヌスはゆっくりと目を開く。
掲げた剣を振り下ろすと同時に巨大な魔法陣が浮かび上がり、背後に弧を描くように無数の光り輝く剣が出現した。
その堂々と君臨する様はまさに神。圧倒的な威圧感。
「久しぶりだな。お前と本気でやりあうというのは。」
「あの頃のじゃれあいとは違う。これは命のやり取りだ。」
クロノスの体が黒色に包まれていく。同時に体を囲うように黒い霧が発生した。
「唯一の友であるお前の命を取りたくはなかったのだが、致し方あるまい。」
緊迫した空気の中二人は睨み合う。
「ウラヌス様・・・クロノス様・・・」
女性は固く握った手を額に当て祈るように強く瞳を閉じる。
二人にもはや響く喧騒は一切聞こえない。
二人の間には、いかなる生物も入り込む余地がない程空気が張り詰めている。
まるで周囲の時間が停止したように。
互いが発する殺気に、乾いた音と共に雑草が弾け飛び宙を舞う。
それが合図となり光と影は激しく衝突した。
6000年程前の星の覇権を巡る大戦、アステルマキアである。
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