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第107話 新たな恒星の形


しばらく歩いていると、『GUILD HOUSE』の看板が目に入った。


北エリアのテーマに合わせているのだろう。外観は植物が飾り付けられ、いかにも植物園と言った雰囲気の建物だった。


老舗感も漂っており、どことなく味がある。


飾り付けられた装飾と、落ち着いた土色の建物がより豪華な雰囲気を醸し出している。


何より建物の大きさがサングラッセンのギルドとはえらい違いだ。


「アルカディアは街中に四カ所もギルドの支部がある珍しい町なの。その装飾も東西南北で全然違うのよ」


「ちなみに、ここ北エリアのギルドハウスが浮島に点在するギルドハウスの本部なの」


「いちいち派手な外観だな」


ギルドハウスの前で大きな扉を見上げる。


「さ、入りましょう」


アシーナに促されるまま俺達は中へ入った。


中は全て木造で開けた作りになっている。


真正面の広い通路の先に受付らしき場所があり、とても解放的な空間だ。


正面の通路を境に左右にいくつものテーブルが置かれ、冒険者や旅人達で賑わっている。


「ここまで来ておいて何だが、本当にいいのか? テッサはまだしも、お前はこれから王になる立場だ。そんな奴がギルドに入るのはどうかと思うぞ」


「いいじゃない。固い事は言わないの。主神がギルドに入ってはいけない、なんて決まりはないわ。それに、実際のギルドがどのようなものか知っておけば今後に役に立つ事もあるはずでしょ?」


アシーナはギルド内を見渡し目を輝かせている。


「まあ、お前がそれでいいならいいのだが」


俺達は受付へ向かった。


「こんにちは! 本日はどのようなご用件でしょうか?」


受付嬢はまじまじとアシーナを見る。


「う~ん? どこかで見た事あるような・・・あなた、お名前は?」


「ア、アシーナです」


「ええーーーっ?!!」


その名を聞いた瞬間、受付嬢は突然大声で叫び出した。


「ア、アシーナ王女?!! ゼウス様のご息女様がどうしてこんなところに?! うち、何もやましい事はしていませんよ?! 閉店だけはご勘弁を!!」


「ち、違いますよっ! ギルドに加入する為に来ただけですから!」


アシーナは慌てて両手を振る。


「さすが有名人ですね」


「もう! からかわないでよテッサ!」


受付嬢は更に驚きを露わにする。


「テ、テッサ?! あの集剣狂(ソードコレクター)のテッサ?!」


「言われてみれば、トレードマークとされている白銀の剣・長刀エレクトラを携えていますね。これは凄い顔ぶれです・・・」


「私自身、そう名乗った事は一度もありませんけどね」


アシーナは悪戯な笑みを浮かべる。


「あなただって有名人じゃない」


「この二人を俺のギルドに加えたいのだが」


俺はいじり合う二人を尻目に受付嬢に尋ねる。


「そ、それはもちろん構いませんよ! ギルド証見せて頂けますか?」


俺は左手首にしていた純白の鎖のブレスレットを手渡した。


「とても珍しい色ですね。綺麗です」


受付嬢はしばらく見惚れる。


「す、すみません! つい夢中になってしまいました!」


「これは別の支店のギルド証になりますので、ブレスレットにこのギルドも登録しないとですね。こちらへ来ていただけますか?」


俺はアシーナとテッサを待たせ、ピュラの手を引き奥の部屋に入った。


ニケを待つ間、二人はクエストの張り紙を眺めていた。


「へえ~。色々なクエストがあるのね」


「この『SS』と書かれているものが、一番報酬が多いようですね。下へ行くにつれ報酬が下がっています」


「お嬢ちゃんたち、クエストを受けるつもりかい?」


2メートルはある筋肉質の男が長い顎髭を撫でながら、アシーナ達に近づいてきた。


背中には自身の身長ほどの戦斧が担がれている。


男の後ろには片手剣を腰につけた男と、背中に大弓を担ぐ男が二人付いている。


「ええ。そのつもりよ。どれが面白そうか探していたの」


「へぇ~! こいつは珍しいな!! お嬢ちゃんたちのような美女がこんなむさくるしい所に来るなんてな!!」


大男は豪快に笑う。


「俺達も手伝ってやるよ。見たところ、お嬢ちゃんたちはビギナーだろ? 女子だけじゃ色々と不安だろうし、初心者でもこなし易いクエストを教えてやれるぜ」


「ほんと?! それは助かるわ!!」


アシーナの返答にテッサは目を丸くする。


「ア、アシーナさん、本気ですか? どう見ても下心がありますよ・・・」


テッサはアシーナに耳打ちする。


「そうなの? とても親切そうな人たちじゃない?」


信用しきった様子のアシーナを見て、テッサは額に手を当てる。


「そうだぜ銀髪のお嬢ちゃん。俺達はこれでもこのギルドは長ぇんだ。満足させられると思うぜ。へへ」


大男の口角が不気味に上がる。


「お嬢ちゃんたちにはこれがいいと思うぜ!」


大男は一番上の張り紙をむしり取り、アシーナの腕を強引に掴む。


「え? ちょっと?!」


黒ずくめの腕が連れ去ろうとする大男の腕を止める。


「何をしている?」


「あぁ?! 何だてめぇ!! 邪魔すん・・・」


大男は顎が落ちるほど口をあんぐりさせる。


「人から報酬を奪おうとした次はナンパか?」


「な、何でてめぇがここに?!」


「おじさんひさしぶり!!」


俺に肩車してきたピュラは元気に挨拶する。


「ひぃっ?!!」


あからさまに動揺する男の反応に、ピュラは首を傾げる。


「い、行くぞ! お前ら!!」


大男は俺の腕を振り払い手下の二人を連れそそくさとギルドを出て行った。


一番隅のテーブルに腰かける、古風な着物を着た女性がニケ達一行の行動をじっと見つめていた。


「やれやれ。まさかこんな所で出くわすとはな・・・」


「あの人たち、一体どうしたの? 二人を見てかなり怯えていたけど」


俺は頭を掻く。


「さあな。腹でも下したんじゃないのか?」


「それよりなぜ、その誰かも知らない奴らについて行こうとしたんだ? どう見ても怪しいだろう」


アシーナは首を傾げる。


「だって、親切にしてくれたんだもの。いい人なのかなって」


俺は深くため息をついた。


「どうやらお前は勝手に歩き回るピュラ以上に目が離せんようだな・・・」


「箱入り過ぎるのも問題という事ですね・・・」


テッサと顔を見合わせ二人は更に深く息を吐いた。


「それより、受付嬢が待ってる。さっさと登録を済ませてこい」


俺は顎で受付嬢の待つ部屋を指した。


「そうね! 行きましょテッサ!」


アシーナはテッサの手を引き部屋へ入っていった。


しばらくピュラと窓の外を眺めていると、アシーナとテッサが部屋から出てきた。


「これでアシーナとテッサの名前もブレスレットに登録されました。これで、『恒星(アストラス)』のメンバーは現在4名となります。早速何かクエスト受けますか?」


「そうだな・・・」


ニケ達がクエストの張り紙を見ていると、アシーナは床に落ちたくしゃくしゃになった張り紙に気が付いた。


「ねぇ! これにしてみない?」


アシーナは三人にくしゃくしゃの紙を見せる。


『レルネ湿原にて怪竜ヒュドラの討伐(複数参加推奨) 報酬 2,000,000(ガルド)


その左上には赤文字で『S』と書かれている。


「いくらアシーナ王女様や集剣狂とはいえ、いきなりSランクは危険すぎますって!! クエスト上級者でも命を落とすランクですよ!!」


受付嬢は声を張り上げる。


「それに、このクエストは基本的に複数のギルドチームが参加する事を推奨されています! 単独ギルドでは参加できませんよ!」


「そんな?! これだ!って思ったんだけどなぁ・・・」


アシーナは肩を落とす。


「ヒュドラならコロシアムにもいるだろう?」


受付嬢は思い切り首を横に振る。


「とんでもない! コロシアムのヒュドラは言わば飼い慣らされたペットのようなもの。このクエストのヒュドラは原生種。獰猛性・凶暴性がまるで違います」


「そのクエスト、ぼくも参加するよ」


真っ赤な牡丹の花が咲き誇る黒地の着物を着た、桜色の長髪を後ろで束ねた女性がアシーナの持っていた張り紙をひらひらさせていた。


腰には朱色の柄に、着物と同化する漆黒の鞘に納められた刀。


素人目でも分かる見事な刀だ。


こいつ、()()()()()()()()()


まるで気配がなかった。


「あれ?」


アシーナも不思議そうに女性の持つ張り紙を眺める。


「あははっ! そんな怖い目で見ないでよ。大丈夫、何も企んでないから」


「特に君は」


「・・・何者ですか?」


テッサは腰のアルシオーネに手を掛け警戒している。


「パンドラ。鍛冶神へパイストスの娘だよ」


その言葉を聞いたテッサは目を疑った。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


また、評価・ブックマークもありがとうございます!


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