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十代自選作品集「琥珀」

三十六歳、スマホ捨てました。

作者: 星野紗奈

どうも、星野紗奈です!


昨年、第29回可児市文芸祭にて短編小説部門に応募したところ、入選したそうなんです。

ずーっと落選続きだったこともあって、お手紙をいただいたときは本当に驚きました……!

著作権的に問題なさそうなので、誤字や表現を一部修正したうえで、こちらに投稿します。

最後までお楽しみいただければ幸いです。


それでは、どうぞ↓

 三十六歳、スマホを捨てることを決めました。いえ、捨てるというのはちょっと言い過ぎかもしれません。スマホを、そう、物理的に手放すことにしたのです。きっかけは、あの女性でした。もう三十代も残り半分をきったというのに恋人の影も見えない僕は、このまま一生一人で生きていくのだろうかと、これでは亡き姉に心配されてしまうのではないだろうかと、そういう不安を持っていないわけではありませんでした。それで、知り合いの飲みの場によく顔を出していたら、偶然にも一人の女性に好意を抱かれたのです。初めは、はっきり言ってしまえば好みのタイプではありませんでしたが、純粋に好意を伝えてもらえることの幸を知り、とてもよい感情が僕を満たしました。ただ、その人の質がよろしくなかったようで、付き合ってすらいないのに束縛しようとする態度が徐々に見え始め、知らぬ間に毎日スマホが休まず通知を告げるようになりました。加えて、僕が無数のメッセージを無視していると、彼女は情報や機械を扱うのにとても長けているようで、友人伝いに聞いた話では、今まさに僕の住んでいる場所の特定を試みている最中らしいというのです。追われる恋の恐怖を通り越して、正直僕はうんざりしていたのでした。

 それで、僕はふと、スマホを手放すという手段を思いついたのです。そして、運が良いことに、ちょうど休暇がやってくる頃合いだったもので、僕はスマホを捨てて少し旅に出てみようと決めたのです。さて、どこに行こうかと考えた時、僕に寄り添ってくれたのは姉の面影でした。スマホには姉から貰った写真がいくつか残してありましたから、その場所を訪れてみようと、姉がかつて見たものを感じに行こうと、僕はそう思い立ちました。それからの行動は自分でも驚くほど早くて、すぐにコンビニへ行って数枚の写真を印刷してきました。アパートへ戻ると小さめのスーツケースに数日分の着替えやタオル、スマホ以外の貴重品などを詰め込みました。手持ちの鞄には、そこそこの金額が蓄えられた財布と、熱中症にならないための必需品たち、そして印刷してきた姉の思い出の写真をそっとしまい込みました。荷物をまとめ終えると、僕はスマホの電源を切り、一応、箪笥の中に伏せて隠しました。休暇中にどれくらい長く旅を続けるかはわからなかったので、泥棒に入られたり、スマホが埃などに埋もれてしまったりすることを心配しての行動でした。つまり、僕はスマホを捨てると言いながら、その場で打ち砕くとか、海に投げ込むとか、完全に手元から排除する勇気はなかったのです。準備が整うと、僕は外へ出て行きました。手元の腕時計が航海士のコンパスのようにきらりと反射して、新しい旅の始まりに確かな胸の高鳴りを感じながら、僕は颯爽と歩き出しました。

 姉との記憶を頼りに僕が向かったのは、そこから電車で二時間ほどの場所でした。あまり遠くはないので、これを旅と呼んでいいのかはわかりませんでしたが、僕が感じているこの高揚感は、普通のやり方じゃ到底感じることのできなかったものだと思われます。それにしても、スマホを持たずに長時間電車に乗っていると、こんなにも感じるものが違うのかと、僕は非常に驚きました。スマホで漫画や動画を見ていると、時間の流れを感じずついつい乗り過ごしてしまうようなことがありますが、スマホを手放すと、違う意味で時間の流れを感じないということに、僕は初めて気がつきました。電車は非常に速いスピードで走っていて、窓に映る景色もびゅんびゅんと変わっていくように思えますが、実際には、意外とゆったりと景色が流れていくのです。電車の窓枠が少しずつ景色の写り込む角度を変えていくその様子は、何だか船の上から海を眺めている感覚にも似ているような気がします。そのちょっとした変化の連鎖に気を引かれてしまうようなところも、既に海上の旅を通して知っている感覚と同じものだったような気がしてきてしまいます。

 ようやく目的の駅に停車すると、僕は人混みに危うく埋もれそうになりながらも、改札を出ました。僕が覚えている限りでは、姉が来たのは確かにこの土地だったような気がするのですが、僕が足を踏み入れた駅のまわりはいかにも新しくできたといった感じの建造物に囲まれていて、写真に残る景色が本当にこの土地にあるのだろうかと、少々疑わしくなりました。

 しかし、バスに乗ると、その不安はすぐにぬぐわれました。新しすぎるのは駅の近辺だけらしく、バスに乗って数分も経てば、その華やかさは徐々に落ち着きへと変化していきました。僕が降り立ったバス停の付近は、色彩は鮮やかでしたが、その雰囲気は伝統の趣を醸し出しており、非常に興味深いと、第一に思いました。それから、姉も新しさに埋もれつつあるこのような深い味わいを求めてこの土地にやって来たのだろうかと、僕は姉の跡を巡る旅の実感をようやく覚え始めました。さて、ここまで来れたは良かったものの、その先は行きあたりばったりでした。当てもなしに、とりあえず表参道らしき場所を直進してみることにしました。日陰を作る屋根の下を歩いて、あたりをきょろきょろと見回していると、和菓子が売っていたり、定食屋らしきものがあったり、お守りが売っていたりと、やはり古き良き文化が強く残っているように思われました。一方で、ところどころに見られる鮮やかな赤の配色は、観光客が少ないことは見て取れるものの、その根気強く廃れない熱気を感じさせてくれました。しばらく歩いていると、どこかからチリンという可愛らしい呼び声が聞こえてきました。ふとそちらへ顔を向けると、より賑やかな道が開かれていて、その先に姉も訪れたであろう寺の影が見えました。鞄から写真を取り出して確認すると、姉は確かにこの通りで笑っていたのでした。涼やかな音に誘われるがまま進んでいくと、店に並ぶだるま、くずもち、饅頭、とんとこ飴など興味深い売り物たちに目移りせずにはいられませんでした。姉はどんなものに心惹かれたのだろうか、どれか一つ買ってみようか、と迷っているうちに、その通りの突当りにある寺へ僕はたどり着きました。門を境に活発な文化は一気に神聖な空間へと変貌を遂げているように思われます。僕は思わず息をのみ込んで、さっきまでのささやかな興奮を忘れ、寺の方へ踏み込んでいきました。その寺は、何ともいえない厳粛な雰囲気をまとっていました。けれどもそれは厳しく追い立てて人々の気を縮こまらせるようなものではなく、全てを包み込んで受け入れてくれるような、簡単な言葉に直すならば、頼りがいに近いものでした。僕が参拝を済ませると、またどこかでチリンと透き通った音が聞こえてきました。僕はそこでようやく、近くで風鈴市が開催されていることに気がつきました。本殿の横にそれていくと、小さな風鈴たちがまるで妖精のように舞い踊っていて、突然不思議な森に迷い込んだような気分になりました。そこだけは古いとも新しいとも言い表せない、不思議な空間でした。もしかしたら姉も、そのような雰囲気を機敏に感じ取って、あの通りを抜けてから写真を撮るのをやめてしまったのかもしれません。

 しばらく風鈴たちの集落で涼んだ後、僕はひとまず宿を探すことにしました。来た時とは別の道を通りながら、バス停に向かって歩いていくと、一軒の宿を見つけました。恐る恐る中に入って声をかけてみると、その主人はとても気さくな方で、快く宿泊の手配を進めてくれました。そのついでに、この付近にあるであろう、姉の写真に写るもう一つの場所を訪ねてみると、あそこは今日は閉まっているよと、主人はすぐにその場所のことを教えてくれました。僕が腕時計を確認してみると、時間はまだ四時になる少し前でした。庭園は閉まるのがこんなに早いのかと驚いていると、それを察した主人は、確かに普段も午後四時と早い時間に閉まるけれど、その庭園の休園日が月曜日なのだと丁寧に説明してくれました。なるほどと納得した僕は、主人に感謝を述べると、明日その庭園を訪れてからこの地域を離れようと頭の中で計画したのでした。

 翌日、主人に改めて開園時間を訪ねたうえで、僕は写真の場所に向かって歩いていきました。主人には、今時スマホで調べれば何でもわかるのにね、と少し不思議な顔をされました。それで、僕がスマホを持たずに来たのだと伝えると、物好きもいるものだと言いながら、それならばと、道順を丁寧に教えてくれました。無事にたどり着いた庭園は、写真越しの風景より随分と古臭く感じられました。姉が切り取った絵は色使いが表参道で感じたように鮮やかで、はっと息をのむような美しさがあるのかと思っていたのですが、年月が経ったからでしょうか、その予想は大きく外れていました。人の気配はありません。管理も、隅まで行き届いているというよりかは、安全確保の最低限のラインを満たしているというふうに見えます。期待外れ、という言葉がぴったりかもしれません。同じように写真を撮ってみればよかったのかもしれませんが、今までスマホに頼っていたせいで、あいにくカメラは持っていませんでした。

 微妙な気持ちで庭園を出ると、またバスに乗って、今度はとある商店街を目指しました。姉は、その商店街で毎年開かれる祭りが好きだったとよく言っていました。様々な文化が入り乱れる瞬間が、なんとも輝かしかったのだそうです。車窓から漏れる光を受けて、屋台を巡って両手に食べ物の入ったビニール袋を抱える写真の中の姉は、自分より幼く見えるほどはしゃいでいました。

 バスを降りると、僕はレンガ模様の赤い道を踏みしめました。写真の中で印象深かったあの赤の上に立てたことが、少し感慨深くもあります。と、考えていると、どこからか香ばしい臭いが漂ってきて、僕の腹の虫が鳴き出しました。腕時計を確認すると、その針は既にてっぺんを過ぎています。僕は食欲をそそる香りに導かれて、昼食をとることに決めました。僕が見つけたその店では、たこ焼きやお弁当が売られていました。どうやら、臭いの正体は焼き立てのたこ焼きだったようです。注文口でたこ焼きを一パック頼むと、店主はまたもや気さくな人柄で、店先にある椅子に座って待っていてくれと、冷たい麦茶まで出してくれました。ありがたくそれをいただいていると、お待ちかねのたこ焼きが運ばれてきます。灼熱の生地の上で踊り狂う鰹節を見てしまっては、もう止まることはできません。勢いよく口に放り込んで、その熱さと格闘しながらも、僕はあっという間に容器を空にしてしまいました。店主が再び差し出してくれた麦茶を受け取ると、店主は僕に地元の住人かと尋ねてきました。僕が旅の経緯を説明すると、こっちまで来るなんて珍しいと、面白がって話を聞いてくれました。そこで、姉の写真を見せて、この商店街のことを聞いてみると、今はもうこの道は改装されてしまい随分と雰囲気が変わってしまったのだと、少し寂しそうに教えてくれました。僕は、姉が見たものとそっくり同じものは見ることができないということを、このときやっと理解できたような気がします。その心情を察したのか、店主は姉の話に方針を転換しました。そこで僕は、大雑把ではありますが、改めて姉の存在と向き合ってみることにしました。

 僕と姉とは、血のつながった兄妹ではありません。姉は、父が再婚した相手の娘でした。母が死んでから、僕はずっと父と仲が悪くて、父が再婚した女性ともうまくやっていけませんでした。戸籍上の両親と疎遠になっていく中、姉だけは僕のそばに来てくれました。それがどうしようもなく嬉しかったことを、今でもはっきりと覚えています。ちなみに、大学に入学する際に様々な援助をしてくれたのも、姉でした。しかし、姉は津波にのまれて死にました。さらに、僕は姉が死んだことを知らないまま、十年も時を貪っていたのです。大学を卒業すると同時に、ちょっぴり残念そうな顔をする姉の支援を断って、僕はようやく独り立ちをしました。それから連絡をとる頻度が激減して、震災があって、気づいたときには僕はもう三十歳を超えていました。三十路と呼ばれる年になったころ、僕はひどく憂鬱な気分になり、高校生の頃に命を思い出させてくれた人物にお礼だけ述べてから死んでしまおうと、そう考えていたのでした。その人物を探している過程で、とある人物から姉が死んだことを聞かされたのでした。遺体は見つかっていないけれど、最後に姉を見かけた知り合いの話を聞くに、その場所は津波で何もかも飲み込まれてしまったといいます。僕はその時まで、そんなことは全く知りませんでした。両親との仲が険悪になった結果、僕は葬式にすら呼んでもらえなかったのです。

 そういう経緯もあって、姉の思い出の地を今になって巡っているのだと、僕は答えました。店主は、なんだか複雑そうな、安心したような、不思議な表情を浮かべていました。僕は何か話をしなければとぎこちなくなって、こんな弟はうざがられてしまうだろかと呟くと、店主はそれも愛の形だろうと、優しく微笑みながら麦茶を注いでくれました。しばらく蝉の音を聞いていると、自転車を止める音がして、店に一人の女性がやってきました。店主との会話から察するに、バイトか居候のようです。随分と長い時間居座ってしまったなと少し反省して、僕は店主に別れを告げました。あとからやって来た女性は僕を興味深そうにじっと見つめて、それから行ってらっしゃいと、小さく手を振ってくれました。

 写真に残されていた赤いレンガの道は、まん中の部分が黒くコンクリートで埋められていました。ちょうどその色の境目を綱渡りのように歩きながら、僕は別のバス停へ向かいます。姉が見たかったものは、もうここにはないと知りましたし、店主みたいな人とのつながりの方が、姉はよっぽど好きそうだと思ったからです。バスに揺られて二十分ほど経った頃でしょうか、工場地帯を抜けたところに海が広がっているのが目に入ってきました。

 青く茂る公園の芝生は、靴の底を通って僕の身体を温めてくれているようでした。姉の写真に残されていたこの海を、僕はずっと自分の目で見てみたかったのです。姉は、海が好きでした。泳ぐのは苦手だったけれど、あの光が反射して、交わって、様々な色を描き出すのが好きなのだと、いつも絵本を読んで目を輝かせる子どもみたいに語ってくれました。そんな姉が一度は来るべきだと豪語していたのがこの海だったのですが、あの庭園と同じように、やはり僕にとっては予想の枠から外れたものでした。特に観光地らしいものもなく、芝生の公園と、クラゲが打ち上げられている砂浜と、人の少ないバーベキュー場があるくらいで、やはりここも時の流れをおもむろに感じさせるようです。しかし、ふと髪を攫う風に包み込まれて、僕は思わずはっとしました。何にもないこの場所で、きっと姉は潮騒に耳をすませていたのでしょう。遠く響く船の声に心をゆだねていたのでしょう。そして、瞼の裏で海の光を見ていたのでしょう。僕にはなんとなく、そのように思われました。

 本当は、もっと寄り道をするつもりでした。自分が気になったところは全部回ってやろうと、そう意気込んでいたのですが、実際に来てみると、なかなかそういう気分にはなれませんでした。まさか、こんなに早く帰ろうと思い始めるなんて、考えもしませんでした。でも、姉が訪れた地を自分の目で見て、姉と違う形を見ながらも、同じことを考えられたなら、僕にとってはそれでもう十分満足だったのです。しょっぱい臭いが染みついた身体で、僕はその土地を離れました。僕を見送るのは追い風だけで、引き留めるものは何もありませんでした。

 終電に飛び乗って、僕がアパートに着いたのは深夜一時のことでした。たった数日しか離れていなかったはずのに、僕はなんだか長い航海を終えて帰ってきたような、不思議な感覚に満たされていました。細く伸びる月明かりに照らされて無事住処に帰ってくると、おかしなことに、鍵が開いていました。いえ、開いていたというよりは、その歪んだ形を見るに、壊されていたと言った方が正しいでしょう。慎重に玄関の扉を開けてみると、中は静まり返っており、そこに人の気配はありませんでした。警戒しつつ中へ入っていくと、部屋の中はめちゃめちゃに荒らされていました。棚にしまわれていた食器の多くは粉々になっており、星屑のように月夜の下で輝いています。本棚にあった本も、乱雑に置き散らかされており、まるで波を形作っているようです。さらに奥の部屋へ向かってみると、服だったらしき布の切れ端が床を埋め尽くして、暗闇を滑稽なほどカラフルに彩っていました。箪笥が開け放たれているので、中にあった服を怒り任せに破かれたのかもしれません。箪笥を見て思い出したのですが、これだけの惨状が広がっている中で、僕がひっそりと隠しておいたあのスマホはどうなったのでしょうか。箪笥の中を整理しながら探しましたが、見つかりません。布の切れ端をゴミ袋に詰め込みながら探しましたが、床にも落ちていないようです。さて、どこにいったものか、と考えながら気分転換しようとベランダに出たところ、それはあっけなくその姿を晒しました。液晶画面は、まるでハイヒールに貫かれたかのように、ガラスの破片を散りばめながら歪な線を描き、そこへ月光が流れ込んでいます。躊躇なくスマホを壊すだけの怒りに振り回されていたと思われる中、部屋の窓ガラスは乱暴に開閉されただけで、割られずに済んだことは奇跡的かもしれないとすら僕は思いました。しかし、こんな惨状を目の前にしても、僕はちっとも悲観的にはなりませんでした。むしろ、旅から帰ってきたらこんな混沌が繰り広げられていたなんて、まるで出来すぎた口承の物語みたいで、笑いすら込み上げてきそうです。姉ならきっとそう語って、怯えなんて微塵も感じさせずに、全てを笑い飛ばしてしまうことでしょう。それに、僕自身は今までと何ら変わりはありませんが、僕が積み上げてきた僕は、旅を通して少し大きくなったのだと思います。だから、なんだかんだ言って、自分の身体さえあれば生きていかれるものなんだろうなあ、と暢気にとらえられたのでしょう。僕はそんなことを考えながら、二度と目覚めないであろうスマホをひょいと拾い上げ、手近にあったごみ袋の中に投げ込みました。旅に出る前と違って、スマホを捨てることに戸惑いはありませんでした。何せ、僕にとって一番頼りになるのは、僕自身の身体なのですから。いっぱいになったゴミ袋の口を縛ると、月光の川を失ったスマホは、不透明なビニールの奥でぐちゃぐちゃに混ざり合う色の中へ、音もなく沈んでいきました。ベランダに立って月を見上げてみると、細めた目を縁どる睫毛を風が優しく撫でてゆきました。そうして息を吸い込めば、なんだか懐かしくも新しい臭いが僕の鼻孔をくすぐるような気がしてくるのです。

 三十六歳、スマホ捨てました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^^*)

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