『二次元ポルノ撲滅隊の奮闘』
「あああ、二次元ポルノ、二次元ポルノ気持ち悪いよ、あんな物が存在するなんて絶対許せないよ、規制されるべきだよ、消えるべきだよ、制作者も消費者も地上から滅して消えるべきだよ。ポルノを思わせる描写ももっての他だよ、二次元の画なのに女の形をしている事が犯罪だよ、キモイよ気持ち悪いよ! あああ、トールのハンマーは振り下ろされないのかよ! 外患誘致をどんなにしても潰れないよぅ!」
「お困りのようですね」
「な、なんだ貴様は!?」
「私、悪魔のヘッテルギウスと申します」
「あ、悪魔!? 二次元ポルノ撲滅という崇高にして嗜好にして品行な正義に燃える私の前に、何というものが現れたのだ! ああ、立ち去れ! 今すぐに! この超次元ポルノめ!」
「あなたの願いを、それに見合った魂でかなえて差し上げましょう」
「え? それを早く言いなさい。だったらそこいらにいる通行人共をくれてやるから、いくらでも持って行けば良い。崇高な目的の為の必須の対価だ」
「あなたの所有物でないものは受け取る訳にはいきません。合意の元で魂を差し出させるか、強引に奪うかは問いませんが」
「だったら、私の魂を少しやるから、銃をよこしなさい。何百人いれば良い?」
「あなたのご希望であれば、あなたの魂半分程度で大丈夫です」
「何!? たったそれだけで、二次元ポルノが消えるというのか!?」
「規制はされます」
「よし、乗った!」
「でしたら、こちらをどうぞ」
「ん? なになに? 『二次元ポルノの形状は、○○の奥地に住む民族××の生物的欠点を誇張したものと酷似しており、差別的表現である』」
「この論説を広めるだけで、二次元ポルノは差別表現として規制対象になります」
「おおおおお! 素晴らしい! これならば!」
「では、お支払いを」
「OK! 魂の半分ぐらい持って行け!」
「分かりました。もう半分を、頂きます」
「え?」
「おや、お忘れですか?」
「なにを」
「あなた、前世で同じような取引で、ユダヤ人を減らす方法を、あんなに喜んで実践していたではありませんか」
「そ、そんなもの、デタラメだ! そんな事知らない!」
「デタラメであれば、私に天罰が下り、あなたは助かりますよ。それ故に、悪魔の取引はとことん誠実なのです――ほら、これで丸ごと一つ。少々やせているけれど、まあ、良しとしましょう」
【完】