肉じゃがだって!?
「んあああ...」
ちょっと前の記憶を遡るに、たしかに幼馴染はそんなことを口走ったな。
「取り敢えず!キッチン借りるわよ!
シンジは、ゲームするなり、テレビ見るなりして、ご飯ができるの、待ってればいいわ!!」
ヒナタはもう。
完全に泊まる気でいるらしい。
俺は、何だか落ち着かなくなってきた。
好きな女は目の前で料理をおっ始め、
手際良く冷蔵庫にあったもので、美味そうな料理を作ってみせた。
「どう?美味しい??」
肉じゃがだった。
俺の好きな家庭料理をちゃちゃっと
作ってしまうあたり、もう嫁みたいだった。
「美味いよ...」
ここだけの話。
母さんの料理より美味い。
「お味噌汁、しょっぱくない?」
「いや、ちょうどいい塩加減だよ...」
一汁三菜。肉じゃがの他に、
サラダや、ほうれん草の胡麻和えまで食卓に
並んでたから、非の打ち所がなかった。
「不味かったら、遠慮なく言っていいよ。
これから改善していくから...!!」
ずいと身を乗り出し、
俺の顔を心配そうに凝視するヒナタ。
「いや、もう。完璧だよ。
ご飯が進む。お代わり...」
「良かったぁ...!!」
ヒナタと共に。テレビを見ながら夕飯を食べた。一人だったら、カップラーメンで済ませるところだった。こんなに満足感を味わうことなどなかったろう。
「ご馳走様」
「有難うヒナタ...」
「どういたしまして。また、作ってあげるね」
「うん。頼むよ...」
毎日でも、食べたい料理だった。