3-22 女神様とおかえり
失敗した……
雲雀をひとりで家に残して外出した俺だったがこれは失敗だった。
「佐多さん?起きてくださーい」
「ンム……」
ダメだこりゃ、起きる気配がない。
しょうがないか……
俺はキッチンに向かう。買ってきたものを冷蔵庫に入れるためだ。
冷蔵庫を開けるとオムライスがラップを被った状態で置かれていた。
出かける前は確かにこんなものはなかった。
雲雀は1度自宅に帰り、材料を持ってきて作っておいてくれた。そうなのだろうと思い、レンジでチンしていただいた。
そのオムライスを食べた俺は自然と涙がこぼれる。
食器をガンッと置いて立ち上がる。
「ん、どーしたの?」
ようやく起きた雲雀の問いかけを振り切るようにして俺は外へと駆け出した。
「あれ、オムライスだ……」
雲雀は食べかけのオムライスをひとくち口にする。
「ふーん……なるほどね」
俺の思っていることを理解した雲雀は再びコタツの中で寝るのだった。
オムライスをひとくち食べてすぐに気づいた。これを作ったのは雲雀じゃない。アイリスだ。アイリスがこの世界に戻ってきたのだ。
それに気づいた俺は咄嗟に体を動かしていた。どこを探せばいいのか、そんなこと知ったこっちゃない。それでも勝手に体が動いていた。
とはいえ、デタラメに探し回るほど馬鹿ではない。しっかりと考えた上で、俺はイオの家に向かった。
雲雀は知らないみたいだし、奏多の家は例によってダメみたい、それに鈴音も、特にそのような素振りを見せなかった。俺はイオに聞くのが1番情報が集まると判断したのだ。
「というわけなんだけど、なにか知らないか?」
「……知らないっスよ、それにその話はしないって約束じゃなかったスか?」
イオはそう答えたが、俺はそこであることを思い出す。
「そっか、ごめん。それはそうとさ、さっきスーパーのわんこそば大会で1000杯も食べたって子がいたみたいなんだけどあれってもしかして……」
「あー、それは自分っスよ」
ビンゴ!
「へぇ、そうなんだ。でも、あの大会、ペアで参加なんだけど、いったい誰と参加したのだろうな?」
「うぐっ……」
「イオ、もういいよ」
聞きなれた声が聞こえる。半年の間だったが、俺がこの声を聞き間違えるはずがない。
「カドル……なんだよな?」
「おいおい、もう忘れちまったのか?」
「どうやって……」
「天界ゲートまで行って地球と繋いでもらったけど」
「天界ゲート?」
「先代の神様が作った転移ゲートは楽に行き来するためのものだからなー、天界ゲートでしっかり手続きすればそんなのなくてもここに来れるぞ」
なんだよそれ。
「えっと、呼んでもらえたりは……」
バシッーーー
え?俺は今、殴られたのか?
頬に強烈な痛みを感じる。どうやらカドルにビンタされたようだ。
「おまっ、何を」
「いや、すまん。元はと言えばお前のせいだからちょっとイラッとした」
「……言い返せないのが辛い」
「で、アイリスたちなら呼び出しはできるけど……」
「皆様に謝罪がしたいので是非呼んでいただきたいです」
俺は誠心誠意で土下座をした。
しょうがねぇなとカドルはアイリスを呼び出した。
「もう、急に呼び出してなんのよう?」
「アイリス……」
「ひぇっ?!」
「すみません……バレちゃったっス」
俺はアイリスに土下座……ではなく、もっと効果のありそうな方法で謝る。
具体的に説明すると思い切りアイリスを抱きしめた。
「ごめん。アイリスの気持ち全然考えてなかった。これからは絶対、手離さない。だから戻ってきてくれ」
「ちょっと……陽向さん?!みんなの前で……も、もうわかりましたから」
プシュッと顔から湯気が出んばかりに発熱して顔を赤く染めたアイリスは俺を引き剥がす。
俺は改めてアイリスと向き合う。
「おかえり、アイリス」




