3-16 メイドの天使と戸棚の中
「ふぅー美味しかったー。さて、お次は」
サミーはハンバーグを完食したご様子。多分、次はミクリアの料理を食べるのだろう。
「えっと……これは何かしら?これもハンバーグかしら?」
俺はそれを聞いてミクリアに尋ねる。
「お前何作ったの?」
「ハンバーグに決まっているだろう。お前こそ何を作ったのだ?」
これ、どっちが作ったハンバーグかわからなくなるやつでは……いやいや、俺の作ったやつは確実にどう見てもハンバーグだろ。
「それよりも、あまり動かないでくれ。狭いんだから。それにどさくさに紛れて変なとこ触られても困る」
「気をつけてるよ。それよりも重くない?大丈夫?」
俺は完全に体重をミクリアの体に預けてしまっている。
「それに関しては、我がそうしろと言ったわけだし大丈夫だ。だけど……」
「だけど?」
「いや、なんでもない」
「それ、なんでもないわけないだろ。いいから言えって」
「…………れ」
「ん、なんだって?」
「と、トイレ行きたい……」
ものすごく恥ずかしそうにいうミクリア。薄暗くて顔はよく見えないが、かなり赤そうだ。
それよりも緊急事態ではないですか。
「もしかして、さっきからむやみに動くなって言ってたのは……」
下手に刺激して漏らさないようにってことか?
と、聞こうとした時、それを察したのか、ミクリアは俺の口を塞ぐ。
「うるさい!そんなはっきり言うな」
「ご、ごめんなさい。どれくらい持ちそう?」
「わ、割ともう限界」
こんな所で漏らされでもしたら大変だ。俺にも被害はあるし、サミーに確実にバレるし、その時言い訳できなくなるし。
俺はサミーが食べ終わらないかと外の様子に意識を寄せる。
「んー、こっちのはイマイチかしらね。さて、ごちそうさまでした。2人ともー?どこにいるのかしらー?」
どうやら俺たちを探しにどこかへ行ってしまったようだ。なぜ、家の外まで言ってしまったのかは分からないけど。
「よし、もう大丈夫だ」
戸棚を開けて無事に脱出。
ミクリアはものすごい勢いでトイレに駆け込んだ。
俺は食べ終えた皿を片そうとして、最初は無かった1枚の紙が置かれているのに気づく。サミーの書置きのようだ。
『ミクリアと密着して仲良くなれたかしら?邪魔しちゃ悪いから私は帰るわね。料理対決だけど肉団子の方はイマイチだったわ。ハンバーグを作ってくれた方の勝ちってことで』
バレてやがったか……
その後、ミクリアとどっちがハンバーグを作ったかで揉めたことは言うまでもない。
帰宅後、恒例となりつつある入浴時間。
「ってことがあったんだけど」
「ミクちゃんって……料理苦手だったと思うんだけど」
「えっ!そうなの?」
俺は驚き、アイリスのいる方へ振り向く。
「ちょっ?!ヒナタさん!?」
すぐに我に返り、再び背を向ける。
「ご、ごめん。でも、ミクリアの方から料理対決をって言ってきたんだけど」
「もしかしたらヒナタさんに勝たせるつもりなんじゃないですか?素直に和解するのが恥ずかしいんですかね」
なるほど?うーむ、乙女心は難しい。
作「トイレ間に合った?」
ミクリア「それ、聞くのか?」
作「いや、気になっちゃって」
ミクリア「ちょっとだけ間に合ってなかったかも」
作「え……」
ミクリア「聞いといて引くのはやめろ。我も死ぬほど恥ずかしい」




