3-15 メイドの天使と第3ラウンド
「それで?何すんの?」
俺はキリがないのでとりあえず勝負を受けることにした。
「そうだな……」
ミクリアは考えるようにしてひとり呟く。
「武術は勝てないし、競走もダメ……あと、勝てそうなのは……」
この子、本当にずるい。自分に有利な対決を、探してる。
「そうだ、昨日お前が一緒にいた……えーと、サミー?あいつとは連絡取れんのか?」
「一応、連絡先はもらってるよ。なんかあったらここに連絡してって」
俺はアドレスっぽいものが書かれた紙切れをミクリアに手渡す。
ミクリアは天使の輪を頭の上に乗せる。背中から翼を広げ、輪は神々しく輝いている。
気のせいだろうか、輪から電波のようなものが飛んだように見えた。
「お、繋がった。聞こえるか?ミクリアだ。大至急神の間の前まで来てくれないか?」
要件を伝え終わったミクリアは輪を外す。
「今ので連絡取れたのか?」
「あぁ、一方的に連絡するだけなら今ので大丈夫だ。話すとなると向こうも輪をつけないといけないがな」
しばらくしてサミーがやってきた。
「とりあえず来たけどなんの用かしら?ヒナタくんまでいるし」
「悪いなサミー」
「よし、勝負の内容を伝えよう。料理対決だ。サミーには判定をしてもらう」
こいつ、俺が料理できないのを見抜きやがった。
「んで、その料理はどこでやるんだ」
「あ……」
ダメだこりゃ。
「くっ、地球人を家に招くのは癪だが我の家に来るといい。一応、2人が作業できるぐらいの広さはあるぞ」
そういうことならとミクリアの家に向かった。
「あれ、一人暮らしか?」
「あぁ、だからってあまり勝手なことするなよ?」
へいへい、それでは早速始めますかね。
公平を期すためにサミーには席を外してもらい、どっちが作った料理か分からないようにする。
っていってもなぁ。俺ができるのは焼くとか炒めるとか単純なことだけだから……
何を作るかなと迷っていた俺は目の前のひき肉を目につける。
ハンバーグなら焼くだけだからいけるか?
玉ねぎを刻んでひき肉と混ぜる。つなぎにパン粉と牛乳を入れて捏ねていく。
あとはフライパンに乗せて焼くだけ。
勝てるかどうかはともかく勝負にはなるだろう。
「なぁ、ミクリア……一応聞くけど味には錯覚を使えないだろうな?」
「そうだな。使えたら使ってやったとも。でも我の能力は視覚にしか作用しない。だから、せいぜい我の料理の方が美味しそうに見えるってところだろうな」
「そっか、まあいいや。はい、完成っと」
「こっちも完成だ。さて、勝負といこうか」
その時、ミクリアの後ろの戸棚の食器がミクリアの頭上目掛けて落下しそうになっていた。
危ないっ、と思いミクリアをその場から突き飛ばすようにして押し倒した。
パリーンと後ろで食器が割れる音がする。
「大丈夫か?」
「え、あぁ……大丈……夫」
不慮な事故とはいえ俺はミクリアの事を押し倒す形になってしまった。
「わ、悪いすぐどくから」
そう言ってどこうとした時。
「なんかすごい音したけど大丈夫かしら?」
サミーリアが台所へとやってきたのだ。
俺たちは咄嗟に近くの空の収納棚の中へ入り、身を隠した。
よくよく考えれば隠れる必要は無かったのだが……
「あれー、2人ともいない?あ、お皿割れちゃってるわね」
おそらく割れた皿を片付けているのだろうか、外でそんな感じの音がする。
どうしよう、隠れてしまったから出るに出られない。
すると、ミクリアは小声で俺に言う。
「ちょっ、どこを触っている。やめろ」
気づくと俺はミクリアの腰の辺りに手を触れていたようだ。悪いとは思ったのだが……
「仕方ないだろ狭いんだから。そんなことよりなんで隠れたんだよ」
俺も小声で反論した。
「な、何となく」
そうか、そうだよな……
そこで、外のサミーに動きがあった。
「よし、これで片付いたわね。あ、これかな?料理って。2人ともいないけど食べちゃっていいよね?」
よし、そのままそれを向こうの部屋に持って行ってくれ。そう思ったのだが……
「うん、このハンバーグ美味しい」
は?こいつここで食べてるの?
まだそこには気配がある上に台所で食事をしてやがる。これは長くなりそうだぞ?
そんなことよりも、この対決は俺の勝ちってことかな?
5分後、まだ外ではサミーがゆっくりと食事をとっていた。
俺はなるべくミクリアに触れないように手を戸棚の壁に突っ張って離れるようにしている。
「お前、その体勢しんどくないか?」
「いや、でも、お前が嫌がるかと思って」
辛そうにしているのがバレたのかミクリアが心配して気遣ってくれる。
ミクリアは戸棚の中で仰向けに寝ている姿勢だから楽そうだ。
「辛いなら、別に無理しなくてもいいぞ?」
「でも、それだと……」
それだと、俺がミクリアに覆い被さるかたちになってしまう。まぁ、俺は構わないけどミクリアはいいのだろうか。
そんなことを考えているとミクリアは……
「あぁもういい。いいから楽にしてろ」
俺の事を抱き寄せるようにして体を密着させる。
胸の鼓動がドクドクとしているのが分かる。だが、自分がドキドキしているのか、この鼓動がミクリアのものなのかどうかは分からない。あるいはその両方かもしれない。
無駄に抵抗するとサミーに気づかれてしまいそうなので大人しくすることにした。この状態で見つかるのは非常によろしくない。
頼むからサミー、早く食べてくれ。
ミクリア「どうしてこんなことに」
作「自分から隠れたんじゃん」
ミクリア「そ、そうじゃなくて……」
作「え、どうしたの?」
ミクリア「ば、バカぁ」




