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3-13 メイドの天使と第2ラウンド

 100mはあるだろう長いウォータースライダーのゴールでサミーリアが手を振っている。向こうは準備ができたようだ。


「向こうは準備できたようだな。それでは始めるとしよう」


 お互いに位置につき、ミクリアの合図に合わせて俺もスライダーを滑り出す。


 競走と言っても体を動かすわけでもなくて、ただ、流れに身を任せるだけ。そんな勝負だがこれでいいのだろうか。俺が出来る事といったら力を抜いて抵抗を減らすくらい。


 スライダーはチューブ式で1度滑り出すと隣のレーンを滑っているミクリアの様子は見ることが出来ない。つまり現在どちらが勝っているかは分からないということだ。


 100mと言ってもあっという間で、俺はスライダーからプールにザブん。つまりゴールした。


「遅かったな」


 は?

 俺がプールサイドに視線を向けるとミクリアは既にゴールしており、それどころかプールサイドのパラソルの下でくつろいでいる。

 負けたなぁ。そう思えば終わりであるが、何かがおかしい。


「いくらなんでもおかしいだろ。なんでこんなに差がつく?」

「我の方がお前なんかよりも優れているということだ。思い知ったか?」

「まぁ、コースの長さが違うもんね」


 ドヤァと胸を張るミクリアの横でサミーリアが補足した。ずるじゃん。


「おっと、ずるいと思っているようだが長い方のコースを選んだのはお前だぞ?」

「は?」


 今度は口に出して疑問に思う。


「我はお前に好きなコースを選べと言ったはずだが?」


 そこで俺はその時の事を思い出す。



 遡ること10分前。

 俺とミクリアはスライダーの階段を登りながらこんな会話をしていた。


「レーンは2つあるがどっちにする?」

「ん、いいのか?俺が選んで」

「構わないとも。どちらを選ぼうが勝つのは我だからな」


 俺は階段を登りながら2つのレーンを観察する。どう見ても右の方が短く見える。左のコースはカーブも急で抵抗も大きそうだ。一方、右は多少緩やかではあるが最初の急降下による勢いが残れば確実にこちらの方が早いだろう。距離も短いしね。


「じゃあ右で」



 俺はそれを思い出してもう一度スライダーのコースを見る。するとあら不思議、どう見ても左の方が短い。なんなら右は長い上に緩やかじゃないですか。


「ミクリア、お前何か仕組んだな?」

「言いがかりはよしてくれ、我はただスライダーを滑っただけだぞ?」


 いや、絶対なんかした。ミクリアは自信がありげだが、これには必ず裏がある。俺はそう確信した。


「まぁ、いい。どうせ天界人お得意の能力でも使ったんだろ?お前に聞いても教えてくれなさそうだしアイリスに直接聞くよ」

「あ、アイリス様に?」

「ん、なんか問題でも?」

「アイリス様にはここにいるの内緒だから……」


 強がりな態度は一変してあわあわとするミクリア、これは勝ったな。


「内緒にしといてやるからタネ明かししてくれよ」

「う、こ、これで勝ったと思うなよ?」


 こいつマジでめんどくさい。


 ミクリアの能力は錯覚。相手に錯覚を見せるというもの。ラスフェルの能力と似ているが、ミクリアのは比較するものに対して大小などの錯覚を見せるだけ。その代わりラスフェルのように初見にしか対応しない、というわけでは無いようだ。

 つまりは俺に錯覚を見せてスライダーの長さを錯覚させて見せたということだな。


「もう、いいかげんにしてくれないかな?俺はちゃんとアイリスに招待されてここに来てるんだ。俺の事嫌いなのかもしれないけど3日くらいで帰るからさ」

「ならば3日以内にお前を倒すまでだ。覚えてろよ」

「それはそうと、アイリスにここにいるのがバレるとまずいのか?」

「ふん、お前に教える義理は……あ、はい。休日に職場にいるとしっかり休まないとダメと言われるので少し嫌だなと思いましたすみません。だからパスをしまってください」


 やっぱりこのパス強いな。

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