3-10 女神様とお仕事
結局、一睡もできなかった。おかしいな……下着姿のアイリスの時は大丈夫だったのに……奏多の真似をされた後だと寝れなかった。
「アイリス、朝だぞ?」
「んぅぅ……あと2分……」
これじゃあ、いつもと逆だな。オフモードのアイリスは意外と抜けているところがあるのかもしれん。
「おーい、起きないとイタズラするぞー」
もちろんそんなつもりはないのだが……
「むんん……別にヒナタさんにならいいですよー、今は恋人ですから」
いいんかい……
「こうやって会話してる時点で起きてるだろ」
「…………」
こやつ……
しょうがないので、この冷えた手をアイリスの首筋に当ててみる。
「ひゃっ!」
「目、覚めたか?」
「……はい」
朝食、着替えを済ませて家を出る。それで、これからどうするんだ?
「とりあえず神の間に行くのだが……アイリスの転移ですぐだろうな」
ラスフェルが言い終えると同時に転移は完了したようだ。あの時の不思議な空間に来ていた。
「それではヒナタさんはこの中で好きにしてていいですよ。多分退屈しないと思いますけど」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
アイリスとラスフェルはパソコンみたいなやつのモニターを使ってサクサクと作業を進めている。
さて、俺は……とりあえず寝よう。昨日は寝れなかったから。
と、いってもだな……どこで寝ればいいのかなっと……
俺は睡眠ができそうな所を探してふらふらと歩いていく。
すると1つの部屋の前で足を止めた。
仮眠室、ここでいいか。
中に入るとベッドがいくつか用意されていたのでそのうちの一つをお借りして眠りについた。
「おい、起きろ」
ん、終わったのかな?いや、早すぎるよな。まだ寝るか。
「おい、起きろって」
その声の主に布団をガバッと剥がされて目が覚めた。
「え、なに?」
「なに、じゃない。お前何ものだ?」
あ、そうそうことか、アイリスから受け取ったパスを見せればいいよね?
俺は目の前の女の子にパスを見せる。
「はい、これ」
「こ、これはアイリス様の?」
「それより人に誰かを聞いといて自分は何もなしか?」
「ぐっ、わ、我はミクリア。ここではアイリス様のお世話係といったところだ」
「そのお世話係がこんな所で何を?」
「アイリス様が久しぶりにお帰りになったから、この施設の掃除をして回ってたところだ。お前こそ、何をしてる?」
「ぐっすり寝てました」
部屋の時計を見ると、もう12時を過ぎている。ここに来たのが朝の8時だからもう4時間以上、寝ていたことになるのか。正直もう少し寝てたいけど。
「アイリスは今何を?」
「アイリス様ならまだ仕事をしているだろうよ」
「そっか、邪魔しちゃ悪いよなぁ。あの、どこか食事できるところはないですかね?」
「誰がお前みたいなやつに案内するか」
もう一度、アイリスから受け取ったパスを見せる。
「ぐぬぬ……」
このパス強いな……
「ここが食堂だ、本来は一般人は有料だが……お前の持ってるそのパスがあれば基本メニューは無料だ」
「あれ?ヒナタさん?……とミクちゃん?」
「あ、アイリス様。アイリス様もお食事ですか?」
「うん、ミクちゃんも?」
「いえ、私はこの人の案内を。なんでこんな人にパス渡しちゃったんですかぁ」
「な、なんでって言われても……この人、地球の人だから1人にしておけないし」
「え、お前、地球の人なのか?」
「あ、うん」
「ならば、今すぐここを出ていけ。この世界からすぐに」
ミクリアは機嫌の悪そうな顔をして言う。
「ミクちゃん、今地球のメンテ中なんだけどヒナタさんだけ動いたままになっちゃったから連れてきたの」
「だったらこの人は存在してはいけない存在。抹消しましょう」
「ミクちゃん……どーどー」
「で、でも」
「ヒナタさんは悪い人じゃないから。ね?」
「わ、わかりました」
納得してくれたミクリアは俺に向き直り言った。
「今回はアイリス様に免じて見逃してやるが、今度はそうはいかないからな?」
「えと、メンテ中はここにいると思うんだけど」
「そんなの認めるわけないだろ。ですよね?アイリス様」
「いや、そのつもりなんだけど」
アイリスには逆らえないようで、ミクリアもわかったと頷く。物分りのよろしいことで何より。
アイリスの提案でこの施設の案内をミクリアがすることになった。
「なんでお前の案内なんか……」
「まあまあ、メンテナンスが終わったらすぐに帰るから」
「まぁ、案内と言っても地球の環境とさほど差はないだろ。だから勝手に好きな所へ行ってくれ」
そう言われてもだな……
「そんなこと言わずにおすすめの場所にでも連れてってくれよ」
「やなこった。我はアイリス様に仕えているのだ。お前の世話をする義理はないね」
仕方ない……この子には少しばかりお仕置をする必要があるようだな。
「んー、それじゃあ道場とかない?そこで思う存分俺と闘えばいいよ。運が良ければ俺の事をここから出せるかもよ?」
「ほぅ?面白い。我に勝負を挑むとはな。こう見えても結構強いぞ?」
よし、のった。
「ここが道場だ、ちょうど今は誰もいないみたいだな」
「それじゃあ、早速やりますか?」
「ああ、いいだろう。手加減はしないぞ?」
バトルスタート!
俺も女の子相手に本気でいくのはどうかと思ったが相手は天使だ。何をしてくるか分からない。
「お先にどうぞ」
俺は様子見も兼ねて相手に先制攻撃を譲る。
「随分と余裕だな。それでは遠慮なくっ!」
言葉を発すると同時にミクリアは俺に向かってきた。すごい勢いだ。
ひょいっーーー
「っ?!」
スっと、かわしてみせるとミクリアは驚いた顔をしている。まあ、勢いは凄かったけどまっすぐだったからね……
「このーっ!」
諦めずにもう一度飛びかかって来る。
んー、今度は……
パシッっーーー
ミクリアの頭を片手で抑えてみた。俺の手よりも短いミクリアの手は俺には届かず空中で空振り。
さっきから動きが単純だが……この子、まさか口だけで大したことないのでは……
「な、なんかごめん。思ってたより弱かった」
「お前、我に言ってはいけないことを言ったな?もう、許さんぞ」
しょうがないから1発受けてみるか。
ポコッーーー
あれ?効果音がなんか可愛い……
ポコポコッーー
それに痛くない。
「……本当にごめん」
俺はこのままではキリがないと思い、勝負を決めようとミクリアの腕を掴んで投げようとした。
昔やってたのは空手だから、柔道の投げ技は分からないけど拳で殴るのは気が引けるし、多分できるだろうとこっちの案を採用した。
フニッーーー
俺はミクリアの腕をパシッと掴み………ん?フニッっていいました?
なんと俺が掴んだのは腕ではなくて……
「お、お前、ど、どこ触って……」
ミクリアの胸でした……ごめんなさい。
「あ、いやその。ごめんなさい……」
「ば、バカァァァー」
ボコッーーー
謝っても無駄だったようでミクリアの渾身の一撃が俺の顔面に直撃した。や、やればできるじゃねぇか。




