3-6 女神様と天界
ラスフェルの出す魔法陣に3人で入る。
目を開けると、明らかにさっきまでいた俺の部屋とは違う空間に転送されていた。
「ここは?」
「ここは私の家の近くだ。つまりは魔界だな」
へぇ、ここが。なんかパッと見は地球とそんなに差がないような……
「今更だけど俺ってここに来ちゃって大丈夫なのか?」
「問題ないですよ。その代わりそれぞれの世界の人同伴が条件ですけど」
つまり、魔界ではラスフェル、天界ではアイリスがいないといけないから常に3人で行動というわけだな?了解!
「で、ここからどうするんだ?」
「ここならアイリスの転移も使えるであろう。それで移動する」
例によって1分後……
「ここは天界と魔界の境界です。ここで手続きをしてそれぞれの世界を行き来します」
と、俺に説明をして受付のカウンターへ向かったアイリス。ものの2、3分で戻ってきた。
「このパスを首からかけてください。これで私が同伴しなくても大丈夫です」
「ありがと。でもここ初めてだし基本的にはアイリスと一緒にいると思うけど」
「そうですね。それでは私の家まで転移します」
アイリスの家ってどんなところなんだろうな……
「んんーっ、久しぶりに帰ってきました」
伸びーをして思いっきり天界の空気を吸い込むアイリス。とても嬉しそうにしている。
「そういえば、アイリスのママさんはまだ……」
「あ、はい……そうなんですよね。半年は地球にいましたけど多分……」
「え、なに?なんか訳あり?」
「私の母は、私にお見合いのお話をやたらと持ち込む人で、女神になって寮生活をしていた時も仕送りと一緒に……」
「そこでだ、アイリス。いい話がある。少年と恋人という体でママさんに会ってみてはどうだ?」
「ひ、陽向さんと?!恋人ですか?」
プシュッと発火したアイリス。文化祭以来か?
「無理です。地球の人だなんて母が認めるはず……」
「その点は心配ない。少年、天界にいる間はこれを持っておくといい」
「これは……天使の輪?」
「それさえあればお主は立派な天界人。その代わり首からさげているそのパスは預からせてもらおう」
パスをラスフェルに取られた代わりに輪っかを押し付けられた。
「まぁ、俺はいいけどアイリスは……」
「いえ、大丈夫です。それでいきましょう」
アイリスは実家のインターホンを鳴らす。鍵は天界の寮に置いてきたそうだ。
「はーい、あら、アイリス?どうしたの?」
「こちらの方がしばらく泊めてくれないかって、だから私の家に招いたんだけど」
「って、ラスフェル様じゃないの……それとそちらは?」
しまった……名前でバレるんじゃね?
「こちらはヒナント・ターシャさんです」
ナイス、アイリス。とっさの判断さすがです。
「どうも、みんなからはヒナタと呼ばれていますので、そうお呼びください」
「ヒナタさんね。さ、立ち話もなんだから、みんなあがってちょうだい」
俺たちは客間に通された。それよりも天界にこんな和なテイストの御屋敷があることに驚いている。
「アイリス。仕送りでお見合い写真送ったけど、ちゃんと見てる?」
「あの、その事なんだけど」
「ん、どうしたの?」
「じ、実はヒナタさんとお付き合いさせてもらってて……だからもう心配いらないから。お見合いの話もいらないから」
「ふーん、なるほど……」
アイリスのお母さんは俺の顔をじっと見つめる。大丈夫だよな?バレないよな?
「えっと……その……」
「ヒナタさん……」
「は、ひゃい」
噛んだ。
「アイリスとはいつから?」
ここは正直に答えていいだろう。
と言っても出会った日のことだが……
「半年ほど前からお付き合いさせていただいています」
今度は噛まなかった。
「そうなの、まぁ、アイリスが選んだ人なら大丈夫でしょう。あ、それと私のことはエレナでいいわ」
とりあえずは大丈夫のようだ。
「それで、ラスフェル様ですよね?どうしてこんな所に?」
「現在、メンテナンス期間なのでアイリスの仕事を手伝いに来たんですよ。いやー、しかし不便ですねぇ。堕天すると天界に入るのも一苦労で。しばらくお世話になりますね」
いつもの口調はどこへやら……ラスフェルは調子よく挨拶を済ませた。
「そうでしたか。それじゃあ、すぐにお部屋を用意しますから。しばらくここで待っていてくださいね」
と、エレナは客間をあとにした。
「さて、ヒナタさん。段取りの確認です。今日のところは一晩休みましょう。明日は仕事場に行って一日中、ひたすら缶詰です。勤務時間は9時間、この間にできるだけ進めて最終的に3日を目標に終わらせます。その後は、ここで一晩休んでください」
随分とハードなスケジュールを3日間。俺にやれることはアイリスたちの身の回りの世話くらいか。いつもの恩返しのつもりで頑張りますか!




