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2-29 女神様と緊急事態

 アイリス、今持ってるスマホは奏多のか?」

「えーっと……あった。はい、私のでは無いので」

「それじゃ、今、奏多がアイリスのスマホを持ってるのか」


 電話してここに呼び戻すのが1番楽そうだ。


「あ、でもスマホにロックかけてるのでもしかしたら開けられないかもしれません」

「ダメかぁ」


 と、思ったその時、俺のスマホが鳴った。知らない番号だな……


「もしもし」

『助けて』


 この声は奏多だ。助けてということは何かトラブルに巻き込まれたということか。


「奏多か?どうした?今どこに?」

『えっと……かくかくしかじかで』


 どうやら奏多はアイリスの姿で歩いていたらモデルスカウトされたらしい。断ったらしいがお試しということで撮影スタジオに連れ去られたそうな。


「で、今どこにいるんだよ」

『とりあえずスタジオの近くの駅にいるんだけど。ここにいるとめちゃくちゃナンパされるから早く迎えに来て』


 さらに話を聞くと、スタジオの人は忙しいということを聞いた奏多は悪いなと思って自力で帰ると言ったは言いものの交通費を持っていないことに気づき、駅で通りかかった人を捕まえて電話を借りて俺のところにかけてきたらしい。

 とりあえず、可哀想なのでアイリスを迎えに行かせること1分。


「うぅ、大人の人怖い……」

「アイリスって普段、そんなにナンパされてるの?」

「いえ、そんなことは……」


 見た目はアイリスなのだが中身が奏多だとオーラが違うのだろうか。

 とにかく、この一件で奏多の記憶にトラウマが1つ埋め込まれたのは間違いないだろう。


 それでは、2人に機械に入ってもらってー、スイッチオン。


「よし、これで元通りだな」

「あれ、戻ってない」


 と、アイリス(の姿の人)が言った。


「いや、そういうのいらないから」

「いや、本当に」


 え…………


「おい、カドル起きろ」

「…………」


 なんで、起きねぇんだよ。


「起きないとこの部屋をお化け屋敷にするぞー?」

「…………」


 寝たフリでもないか。


「と、とりあえず今日はもう遅いっスから、みんな帰って休むっス。カドルちゃんが起きたら連絡するっスから」

「悪いな、そうさせてもらう」



「というわけでごめん、とりあえず今日はアイリスと過ごしてもらえる?」


 約束通り本物の奏多を返却することが出来なかった上に、明日には親が帰ってくるとの事なので奏多の見た目をしたアイリスを奏多の家に泊まらせることにした。


「わかりました。あの、陽向兄さん。ひとついいですか?」

「ん、何?」


 鈴音がひょいひょいと手招きをするので近づく。


「アイリスさんの見た目をしてるからってお姉ちゃんに変なことしないでくださいね?」

「ば、バカっ。しねぇよ」


 てか、そもそもアイリス本人にすらしたことないわ。


 さて、これからどうしようか。

 家に戻ってきてみると作りかけの料理がそのまま放置されていた。


「あの、陽向さえ良ければなんだけど。私に作らせてもらえないかな?」

「奏多が?」

「ダメかな?」

「いいよ、どうせ俺がやっても同じだし。それに練習したんだろ?なら大丈夫だって」


 すると、今まで不安げだった表情も少し和らぎ、奏多は台所へと向かっていった。


 奏多の作った料理は作りかけだったものを仕上げただけとはいえ、奏多が手を入れたとは思えないほどに美味しかった。その感想を奏多に言うととても喜んでいた。これで不安が少しでも無くなればいいなと思う。


 結局、その後もイオからの連絡が来ることはなかった。

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