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1-2 女神様と後輩

「さて、到着です」

「おお、本当に一瞬だったな」


 何気に転移してもらったのは初めてだった。


「見て見て、陽向。綺麗な川だよ川」


 喜んでもらえたようで何より。アイリスも嬉しそうな顔をしている。


「危ないから気をつけろよ」


 と、言う俺の言葉なんて聞きもせず奏多ははしゃぎ回る。


「アイリスも今日はのんびり……ってなんじゃこりゃ」


 目の前にはバーベキューセット一式。屋根付きのテントまで用意されている。


「せっかくですし、バーベキューでもと思ったのですが」

「いや、それはいいんだが仕事が速すぎるだろ」

「何度でも言いますが速さがウリなので」


 それこそまさに神業と言ったところだろうか。


「バーベキューもいいけどせっかく奏多が選んだ水着なんだし着てみなよ」

「はい。えーと……それではあちらで着替えてきますね。奏多さーん。水着に着替えましょう」


 物陰を見つけたアイリスはそこを指さして奏多にも声をかける。

 それに対して向こうでは、奏多がOKと返事する。


「それでは行ってきますね。覗きはダメですよ?」

「神様の覗きはバチが当たりそうだからやめとく」

「……神様じゃなかったら覗いちゃってますね、それ」


 1週間、同じ部屋で生活していて何も起きなかったんだからそこは信頼して欲しいのだが。

 さて、俺も適当に着替えますかね。


 数分後。


「じゃーん。どう?私の水着」

「去年と同じで似合ってるんじゃないの?」

「一言多いなぁ。今年はアイリスの水着買ってるんだから気を使ってよ」

「なんか、すみません。もしかして奏多さん、新しい水着欲しかったりしました?」

「あー、いいのいいの気にしないで。もともとこれ気に入ってて新しいの買うつもりは無かったし」

「そうですか」

「それよりも。陽向、他に言うことないの?具体的にはアイリスの水着について」

「んー、なんというか、後光が見える?」

「えっ?!」


 実際には見えないけどそれくらい美しいというのが正しいだろうか。

 アイリスはそれを聞いて頬を赤らめる。


「さすが私。アイリスにはこの水着だと思ったんだよね」


 誰もお前のことは褒めてねぇよ。

 水着がいいんじゃない。水着姿のアイリスを褒めてるんだから。


 しばらく、水辺で水をかけあったりして楽しむ奏多とアイリスとそれを眺めてのんびりしている俺。

 そこで、俺は1人の少女が接近していることに気づく。


(ん、誰だ?)


 その少女は俺達にはまだ気づいていないようだ。しかし、確実にこの川に向かっている。

 その少女が、茂みを抜けてこの川にたどり着いた時、ようやく俺の存在に気づいた。


「あれ?珍しいですね。こんな所に人がいるなんて」

「あ、こんにちは。まあ、人が少ないところに来たかったからな。君は?1人かな?お母さんとかは一緒じゃないの?」

「あ……えっと、その」


 ん、どうしたんだ?

 と、そこに、アイリス達が戻ってきた。


「どうしました?」

「いや、女の子が茂みから出てきたから迷子かなって思って」

「あれ、クルちゃん?」

「え?……アイリス先輩?なんでここに?」


 え、何事?

 俺と奏多は同じことを思ったであろう。お互いに顔を見合わせる。


「アイリス、説明してもらえる?」

「アイリス先輩を呼び捨てにするなんて。あなたは何様のつもりですか」

「あー、クルちゃん大丈夫。この人たちは」

「え、どういうことですか?」


 双方から説明を求められ混乱しているアイリス。でも、この状況を理解しているのはあなただけなんだから頑張って。


「えっと……こちらは陽向さん。例の件で私が担当している人なんだけど訳あって一緒に行動することになっちゃって……」


 と、簡潔に俺たちの関係を説明する。

 ちなみに例の件とは死者の異世界転生サービスのこと。奏多がそれを知らないのであえて濁して言ってくれたのだろう。

 そして、今度はクルちゃんと呼ばれる彼女を俺たちに紹介する。


「そして、こちらは……」


 途中までアイリスが言ったところで少女は自ら名乗りをあげた。


「スクリュード・コルニー・スカイ。えっと、アイリスさんの後輩の女神候補生ってところですかね」


 新事実。女神に候補生がいました。


「はぁ、で、なんでこんな所に?」

「私はよくここに来るんですよ。今、天界学校は夏休みですからね。といっても私はもう既に卒業できる程度の資格は持っているのでそもそも休みでしたけど」

「そうじゃなくて、どうやってここに来たの?クルちゃんって地球の管理権持ってたっけ?」

「いえ、さすがに世界管理権は貰えませんよ。卒業してませんし。ここへは専用の転送陣で来てます」

「転送陣?」

「えっ!先輩忘れちやったんですか?先代が各世界に残した転移手段のひとつですよ」

「あー、そんなのもあったかぁ」


 アイリスは本当に女神なのだろうか。ただのドジっ子にしか見えなくなってきた。


「よくわからんけどそれ使えばアイリスも帰れるんじゃね?」

「……帰れる……?……そうです。その手がありました」


 気づいてなかったのかよ。てか、もう一生ここで暮らすつもりだった人の発言じゃなかったか?今のは。


「とりあえず行ってみましょう。善は急げです」


 その時のアイリスは目をキラキラと輝かせていた。

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