1-25 ドジっ子少女とクマさんパンツ
前パートと同じく新キャラ紹介パートです。
「とりあえずみんなを起こしてもらえない?」
「あ、その前に場所を変えましょう」
そう言ってアイリスは転移の準備を始める。この場には5人いるため時間は約100秒。
「そういえば、どうしてカドルの変装を?」
「カドルさん?誰ですか?」
まさかのそっくりさんでした。まあ、声は全然違うもんな。
しばらくして学校の屋上へ転移した俺たち。
「はい、みんなはしばらくしたら起きるんじゃないかな?」
「時間も元に戻しましたのでこのあとはそのまま授業になりますかね」
「それでは、私たちは彼を連行してきます。ご協力ありがとうございました」
ガブとラフィは目の前に魔法陣を出してその中に入る。
「あ、そうだ」
俺は、ふとあることを思い出した。
「カドルとクルなんだけど、帰りの転移陣がなくなって困ってるんだよ。本人たちが戻りたいようなら返してあげたいんだけど」
ガブとラフィはお互いに顔を見合せ、アイコンタクトでやり取りした後にラフィが口を開く。
「しょうがないですね。この、エリート警官である私が上に掛け合ってみます。1ヶ月後に迎えに来ますのでそれまでに答えを出しておいてください」
相変わらず自分のことをエリートと言い張るラフィに俺は一言。
「あぁ、待ってるぜ!エリート警官さん」
俺にエリートであることを突っ込まれるとばかり思っていたのか、ラフィは少し腑に落ちないような、あるいは少し照れたような、そんな顔をしながら魔法陣の光の中に消えていった。
「さて、私たちも教室に戻りましょう」
教室に戻ると、既に1限目の授業の先生が教室に来ていた。俺は急いで準備をする。
1限目は数学。奏多の苦手科目である。
チャイムがなり、先生が教科書を開く。この先生は毎回、授業の初めに、前回の復習として誰かを指名するのだ。
指名されたクルは黒板の前でチョークを動かし、答えを導く。さすがは天界での優等生。ミスのない完璧な回答だ。
授業は特に目立った出来事はなく進行して終わりのチャイムがなった。
すぐにクラスメイトの面々は荷物の準備をして、次々と教室を出ていく。
2限目が体育なので体操服を持って更衣室へと移動しているのである。
2限目の体育は隣のクラスと2組合同で行われる。
近々、行われる球技大会に向けての練習というのが授業内容。毎年、球技大会の役員が集まって競技を決めるそうだが、毎年恒例で男女共にドッジボールになるそうだ。もちろん、今年もドッジボールである。
運動はそんなに得意ってわけじゃないので、それとなく目立たず、ボールを避け続けた。
2限目が終わり、俺は先生にボールを片付けるように頼まれたので、倉庫までボールの入ったカゴを運んでいく。
倉庫の中へボールを戻し、出ようとしたところで俺は気づいた。
「ぅー……ないなぁ……」
入った時は跳び箱の影に隠れていて気づかなかったが、俺の他にもう1人倉庫の中に人がいた。
俺は、捜し物なら手伝おうと声をかけに行った。
「大丈夫?どうかし……た?」
語尾を詰まらせたのは彼女の姿が問題だったから。
彼女は制服姿で四つん這いになって棚の下を覗き込んでいた。
そして、問題なのはスカートがめくれてパンツが見えてしまっている。俺は咄嗟に目を逸らす。
「えっと、えっと。実は生徒手帳がこの棚の下に入っちゃって。さがしてるんだけど。なかなか見つからなくてね」
彼女は四つん這いのまま答える。頼むから体を起こしてほしい。じゃないと君のおしりのクマさんが風邪をひいてしまうじゃないか。
「えっと……俺が見てみようか?」
「えっ?!いいんですか?!!ーーっ痛ったーーー」
俺の声に思いっきり体を起こした彼女は他の棚に思いっきり頭をぶつけて痛がる。棚のものが崩れなかったのは不幸中の幸いだな。
「その、大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫」
俺は場所を代わり、棚の下を覗き込む。
しかし、暗くてよく見えない。手探りで探してみると手帳サイズのものがあるのを確認した。
俺はそれを引っ張り出した。
「あった、はい。えーと、和泉聖羅さん?」
俺は手帳に書かれた名前を呼び本人に返す。
「ありがとう!えっと……」
「俺は安井陽向。隣のクラスかな」
俺は彼女のことを知らないがここにいるってことは体育の授業を受けていた隣のクラスの生徒で、制服姿だったのは体育を見学していたからだと推測した。
「ありがとうね。陽向くん。それじゃあ私はこれで」
そう言って、倉庫の扉へ向かっていく。
しかし、扉を開けずに、その場で立ち止まった。
「どうした?」
「開かない」
「え、なんて?」
「どうしよ、閉じ込められちゃった」
ガブ「こんにちは、初めまして」
ラフ「こんにちは」
作「お、いらっしゃい。そういえばあの悪魔さんはどうしたの?」
ラフ「罪の意識は薄かったみたいだから反省文を原稿用紙10枚程度書かせたくらいですよ」
作「うわぁ、キツそう」
ガブ「そんなことないですよ。多い時は1000枚とかの時もありますし」
作「……………………………」
ガブ「あれ、作者さん?ちょ、えっ?どうしちゃったんですか?」
ラフ「ガブ姉……アマとはいえ、趣味とはいえ作家さんに原稿用紙の枚数は禁句だよ」