1-13 女神様と鍋パーティー
「ねぇー、いいじゃんいいじゃん」
「あー、わかったわかった。だから話してくれって」
何やら揉めているカドルも奏多を見て山荘から帰宅したアイリスたちが突っ込む。
「どうしたんですか?」
「俺もわからん。トイレから戻ってきたらこうなってた」
「陽向もいいよね?」
「だから何がだよ」
「今日くらいはみんなでお泊まり」
「俺様はあんまりみんなでワイワイっての好きじゃねぇんだが、奏多がうるさくてな」
「俺はいいけど部屋はどうするんだ?」
俺の家はマンションの部屋を借りていて、部屋は2つのなかなかの物件である。アイリスと俺がそれぞれ使っているので部屋は埋まっている。
「んー、確かにひとつの部屋に4人はさすがにきつそうですね」
「んじゃ、俺様が陽向の部屋行くか?俺様そういうの気にしないし陽向さえ良ければだけど」
あんたは一応、女神候補の女の子なんだから少しは気にしろよ。
「それとも私が行きましょうか?えと、その……いろいろ見ちゃってますしもう気にならないというか……」
え、何を見たの?クルを家にあげるのって今日が初めてだよね?
「じゃあ、クルちゃんとカドルちゃんに陽向さんの部屋に行ってもらいましょうか。さすがに2人いれば万が一にも大丈夫でしょうし」
「それじゃあ決まりね」
その後、アイリスがキッチンへむかって、クルも手伝いますとついて行った。
しばらくして鍋を持ったアイリスがリビングにやってきた。
「出来ましたよ。みんなで食べましょう」
今夜は鍋パーティーだ。
賑やかにみんなで鍋の具材をつついていく。
「天界のこととかもっと聞きたいな」
「それでは、先輩の卒業式の話でもしますか?」
「ちょっと、クルちゃんそれはやめて」
「えー、いいじゃん。クルちゃん続けて」
「卒業証書を貰う時、登壇する先輩が階段を踏み外しちゃったんですよ。しんみりした空気が一気に吹き飛びましたよ」
「へぇ、そんな面白いのが見れたんなら俺様も行けば良かったな」
「カドルさん、行事は基本的にパスしてますもんね」
「むぅ、あと陽向さんは笑いすぎです」
あ、バレてましたか。
そんなんこんなで俺たちは騒がしく一晩を過ごした。
夜が明けて、クルとカドルは天界に帰ることに、アイリスも一度戻るらしい。
「それでは、行ってきますね」
「こっちに戻ってくるのは明日だっけ?」
「はい、向こうでもやることがあるので」
そう言い残して3人は姿を消した。
一方、奏多はというと……
「お前はいつまでいるつもりだ?」
「いいじゃん、たまには2人きりっていうのも」
「にしては距離近くない?」
奏多は俺の腕にひっしりとくっついている。
「好きな人にくっついてなんの問題が?」
「あのなぁ……俺が告白断ったの忘れたのか?」
中学校の卒業式の時に奏多から告られたのだが、俺はそれを断っている。
理由は簡単で鬱陶しいから。
あと、こいつの告白を承諾したらなんか負けた気がするから嫌だった。
だから、こいつのことが嫌いなわけじゃないんだけどね。
「もちろん。でも、まだ諦めたわけじゃないよ」
あの時、やんわり断ったのが失敗だったか……
「まぁ、いいか。でも昼までには帰れよ?さすがにお前の分の飯を用意することは出来ん」
「あはは、陽向はアイリスが来るまではゴミ屋敷の住人だったもんね。いいよ、それなら私がお昼ご飯作るから」
俺は、まぁそれならと言おうとしたところであることを思い出す。
「まて、お前も料理出来ないだろ」
「やだなぁ、そんなわけないじゃん。前に作った時も陽向、美味しいって食べてくれたよね?」
確かにそんなこともあったが、それはお前の親の前だったからな、下手なこと言えなかっただけだよ。実際、お世辞にも美味しいと言えるものではなかった。
「とにかくダメなものはダメ」
「遠慮しなくていいって。私今から買い物してくるね」
と、玄関へ向かう奏多。まずい、それだけは阻止しないと。
俺は、奏多の腕を掴んで止めようとする。
「ひゃっ!!」
止めようとしただけなのだが力が強すぎたせいか奏多は俺の方へと引っばられ、そのまま俺の方へと倒れ込む。
「ごめん」
「いや、それはいいんだけど……」
倒れ込んだ奏多は俺を押し倒すかたちになってしまっている。
悔しいが少しドキドキしてしまったではないか。
「2人とも何してるんですか?」
「てか、逆じゃねぇの?普通」
「カナちゃん、大胆だね」
すんごい悪いタイミングでアイリスたちが戻ってきました。
堕天使降臨パートは終わりです。次回からは短編パートになります。