1-12 女神様と真相
「もう、女の子に暴力はいけませんよ」
どうにか聖水を飲ませようと試みるアイリスだが、俺からの攻撃を避け続けるのが精一杯だった。
「これでは、まともに近づくことも出来ないじゃないですか」
どうにか逃げ続けていたアイリスだがついに袋小路へと追い込まれてしまった。
(ここからじゃ、転移が間に合わない)
アイリスは逃げられないとわかると逃げるのをやめ、ゆっくりと俺の方へと近づく。
またも、手の届くところまで近づくと俺はアイリスに拳をふりかぶる。
そのタイミングを見計らってアイリスは俺の懐へと飛び込んでそのまま押し倒した。
「少し我慢してくださいね」
アイリスはそのまま抵抗する俺に聖水を飲ませる。
「残り23秒。ギリギリでしたね」
「……っうん」
「あら、気づいたみたいですね」
「俺はいったい……」
俺は状況をアイリスから聞く。
「はぁ、なるほど……」
「まったく、陽向さんが暴れるから大変でしたよ」
「なんかごめん」
ちょうど状況を確認したところで再びあの堕天使が目の前に現れた。
「いやいや、お見事。さすがはアイリスだな」
「ラスフェルさん。約束通り町をもとに戻してください」
「うむ、その前にと言ってはなんだが一度お前の部屋に戻らせてはくれぬか?ここでは都合が悪いのでな」
ということで奏多たちの合流を待った後に俺の家へと戻ってきた。
「ほれ、これで元通りだ」
「ラスフェルさん。どうして私をテストしたんですか?」
「テスト?」
これはテストだったのか?と奏多が突っ込む。
「ただ、単純に悪さをしているだけならもとに戻す条件なんて提示しませんよね?」
「ふむ、バレていたか。いやいや、すまなかったな。陽向といったか?」
「はい」
「実はお前のところにアイリスがついて行ったあと上の者に頼まれてなこの世界からでも仕事が出来るか試させてもらったという訳だ」
「と言いますと?」
「まぁ、合格と言ったところだな。アイリスには今後も陽向の面倒を見てやってくれとの事だ」
「それじゃあアイリスはまだ帰らなくていいってこと?」
「そうなるな」
そう聞いた奏多はやったーと喜ぶ。
「まあ、良かったです。ラスフェルさんが堕天したというのが嘘で」
「あぁ、それなら本当だぞ」
「え?」
「いやぁ、なに。神様に飽きたのでな辞めようかなぁって思ってたところに、辞めるならついでにと上の者に頼まれてな」
本当に神様にもいろいろですね。
アイリスは衝撃の事実に呆然としている。
「ハッハッハッ、それでは帰るとしようか」
と、ラスフェルは大声で笑いながら魔法陣の中へと消えてしまった
「なんか、騒がしい人でしたね」
「ラスフェルさん昔からこういうの好きでしたから。まさかノリで堕天するとまでは……」
「それより、お腹すいちゃったな」
「まぁ、5時間も無駄に振り回されちゃったからな……もう8時か」
「今から買い物に行くと遅くなっちゃいますね。そうだ、クルちゃんの山荘に食材余ってない?」
「はい、ありますけど」
「良かったら分けて貰えないかな?その代わりご馳走するから」
「え、いいんですか?」
アイリスのお誘いに目をキラキラさせるクルはアイリスの手を引っ張って早く食材を取りに行こうと急かす。
「あ、そういえばさ」
「どうしたの?カナちゃん」
「あの時、どうして陽向が本物だってわかったの?」
「うーん、何となくあの陽向さんは本物だって思ったの。今思えばどうしてだったんだろう」
「そんなことよりも早く行きましょう先輩」
結局、その理由は誰にもわからなかった。
アイリスとクルはそのまま姿を消す。
さて、明日からはどんな一日になるのかな。
※ラ=ラスフェル
ラ「どうだい、私の計画は素晴らしかったであろう?」
作「まぁ、あなたの幻夢術は素晴らしいと思いますよ。でも強力すぎません?確か戦闘能力は持たないはずでは?」
ラ「私の能力は初見でないと効果がないのだよ」
作「へー」