1-8 女神様と上空からの捜索
「なるほど、状況はわかりました」
「それで、闇雲に探してても、と思ったんだけど何かいい案はないかな?」
「ふふん、私の能力を舐めないでください」
「あれ?クルちゃんの透視ってたしか、1枚だけじゃ」
当然、建物は透視出来ないし、できたとしても壁が透けて中が見える程度である。
「はい、透視は1枚だけです」
「ふむ、それで?」
「たしか先輩の転移って自分以外のものだけを動かしたりもできるんでしたよね?」
「うん、あまりにも重いものや固定されてるもの、目に見えないものは無理だけどね」
「私の視界を転移することもできますよね?」
「えっと、さすがに概念までは……」
「これならどうですか?」
クルは自らの目を閉じて、代わりに空中にそこそこの大きさの目玉のようなものを浮かばせている。
「え、それどうしたの?」
「私の透視能力の仕組みは視界に入る障壁1枚の向こうに目を飛ばすイメージなんです。これはそれを実体化させたものです。目を塞ぐ必要があるので目は開けられませんけど。あ、それとこれ触っちゃダメですよ。一応私の目なので」
「今は私たちのこと見えてるの?」
「はい、奏多さんが先輩の頬をつねってイタズラしてるのだって見えてますよ。私の先輩をいじめないでくださいね」
本当に見えてるのかと確かめた奏多はアイリスから手を離す。
「実体化させたこの目なら転移で飛ばせますよね?」
「うーん、やってみるけど転移したあとはどうなるの?」
「ここから見える範囲の上空であればどこに飛ばしても浮かせたままで行けると思います。それはやってみないと分かりません」
「それじゃあいくよ」
アイリスは実体化した目玉を遠くに飛ばす。
1度飛ばすのに20秒かかるため、飛ばしたらすぐに準備を初めて準備中の20秒でその範囲を確認していく。
奏多はこの時、特にやることがないのでもう一度屋上から見える範囲にいないかどうかを確認していた。
まるでドローンのような働きをしているクルの目はこの町を片っ端から調べていく。
クルが、2回目の透視能力を使用したところで人影を発見する。
「カドルさんいました。市役所の屋上です」
アイリスの転移はキャンセル出来ないので20秒後別の場所に移ったクルの目をさらに20秒後に回収して、市役所屋上へ3人は転移した。
「カドルさんはこの上です。急ぎましょう」
3人は市役所の屋上を目指して階段を駆け上がる。
「もう、エレベーターは止まってるし……なんで屋上に転移してくれなかったの?」
「うっ、屋上の場所のイメージが無くて……」
「だったら私の記憶使ってよー」
「う〜、ごめんなさ〜い」
「あぁ、もうそんなこと言ってる場合じゃないですよ。速く行かないと時間がないんですよね?」
文句を言う奏多、すみませんと泣くアイリス、2人を仲裁するクルは屋上へと到着した。
残り時間はあと2時間。
奏「お、ここが陽向の言ってた雑談コーナーかぁ」
作「奏多ちゃんいらっしゃい」
奏「ひとつ相談いいかな?」
作「どーぞ」
奏「このパートが終わったら次は陽向との結婚をお願い」
作「それは無理」